目覚めたイリアの才能
その後、タズとグレンがイリアに一通りの基本魔法を教えた結果、イリアはどの基本属性の魔法も使うことができ、取り分け火魔法と治癒魔法が得意であり、水魔法と風魔法が苦手であることがわかった。
一方、タズは火魔法と治癒魔法を不得意とし、水魔法と風魔法を得意としていたため、正反対であった。
マナバーン以前、魔法の属性は、大きく分けると、比較的誰でも扱えていた火、水、土、風の四大属性とも呼ばれる4属性に、一部の者しか扱えなかった木、金、日(光とも呼ばれていた)、月(闇とも呼ばれていた)の4属性の合計8属性であった。
これら8属性が基本属性と呼ばれている。
――なお、アルスでは、8属性にちなんで曜日が定められ、日曜日、風曜日、火曜日、水曜日、木曜日、金曜日、土曜日の7日が一週間であり、月の満ち欠けに応じて1か月が定められ、それが12月で1年間とカウントされている――
だが、魔法学の文献上では、8属性の他にも、古の勇者が使ったとされる聖属性と、大魔王が使ったという魔属性も存在したようである。
また、魔法には、8属性をそのまま使用するものと、8属性を組み合わせた合成属性(混合属性とも呼ばれる)魔法が存在する。
そして、8属性全てを均一に合成することで、属性の偏りを持たない魔法、別名、無属性魔法も存在する。
合成属性魔法、取り分け無属性魔法は、8属性全部使える者の中でもさらにごくごく一部の魔法の才能に富んだ者にしか使えなかったり、使えたとしても初級レベルの魔法しか使えないことがほとんどである。
たとえば、治癒魔法は合成属性魔法である。治癒魔法の中でも傷を癒す回復魔法は、人体の再生を促す魔法であり、血液を循環させ、細胞の再生を活性化させたり、鉄分を固めたりといった効果を出させるために火、水、木、金の4属性をうまく合成する必要がある。そのため、非常に難易度が高い。同じ治癒魔法でもただ血液を作成・補充するだけの血液再生魔法であれば、水と金を合成すれば足りる上、水属性に少し金属性を混ぜる程度であるため、だいぶ難易度が下がる。
タズが使える治癒魔法は、得意な水魔法を少し応用した程度の初級レベルである血液再生魔法が限界であったのに対し、イリアは、難易度の高い回復魔法を使うことが出来たのである。
そして、イリアは筋力も体力もなかったが、治癒魔法系統の一種である身体強化魔法と体力回復魔法を駆使することでタズに劣らない身体能力を発揮することができた。
属性による得意不得意はあるとはいえ、すぐに合成属性魔法を修得できたイリアもまた魔法の天才であった。イリスにあこがれ、イリスの自称ライバルを名乗り、魔法使いを目指していただけのことはあったのである。
もっとも、そんな天才魔法少女イリアにライバル視されていたというイリスの方はといえば、不得意な魔法がなく、天才中の天才のみが扱える無属性魔法をガンガン使っている。星の力に対抗することができる反重力魔法、音を遮断し、光を反射させて姿をも見えにくくし、自然と一体化させて気配を断たせる振動魔法、自分以外の全ての影響を無視して自分の存在を別の場所に召喚する転移魔法等は無属性魔法の典型例である。
その上、無属性魔法なのかどうかも不明な神秘の魔法(マナを譲渡する魔法、謎の魔石を生み出す魔法)をも使いこなしているようであるから、イリスは規格外の天才である。
マナの化身、いやマナの巫女と呼ぶのにふさわしい存在であった。
そういう人外をおいておけば、イリアが天才であることには疑いの余地がない。
イリアが実際に魔法を使う様子を見たことで納得したグレンは、「どうやらイリアは魔法に関しては天才のようだな」と言って褒めるとともに、その実力を認めてイリアも一緒に修行させることにした。
それを聞いたイリアの方はというと、タズの方を向いて
「イリスには負けないんだからっ!」
などと言って胸を張っていた。
イリスとの魔法の才の差は、知らぬが仏であろう・・・。




