表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者を継ぐ者  作者: 本城達也
オストルン大陸冒険へ
106/106

記念日の催し物

 タズとイリアが王都へと帰ってきてからしばらくした頃



「お姉ちゃん、ボク今日から2日くらい出掛けてこようと思ってる。そんなに遠くじゃないから心配しないでね」



「タズ、ダメよ。許さないわ」



「えっ…なんで?危なくないよ?」



「そういう問題じゃないわよ。

 というか私がわからないと思っているんだったら心外だわ。

 だってもうすぐ私とタズが出会って、家族になってからちょうど1年の記念日が来るのよ?

 私がタズが何しに出掛けるかわからないとでも思ってる?」


「お姉ちゃん…ごめん」


「タズ、私、二度とあなたに寂しい想いはさせたくないの。

 だからね、一人で行くことは許可できない。私が一緒に行くわ!」



「えっ…いいの?」



「もちろんよ!実はタズがそう言いだすんじゃないかと思って一応外泊道具も用意してし、ちゃんとお供え用の準備もしてたのよ?」



「そっか、お姉ちゃんにはお見通しだったんだね。

 けど外泊道具まではいらないよ。去年の僕は王都に車で1週間くらいかかっちゃったけど、今の僕らなら半日かからないだろうし、向こうには一応僕とイリスお姉ちゃんのお家があるからね。せっかくだからついでに掃除したり綺麗にしてそこに泊まるつもりだよ」



「そっか、じゃあ代わりに掃除道具も持って行かないとね!ちょっと待っててね」






 間もなくタズが王都に来てから1年が経過しようとしていた。言い換えれば、タズの村の人々が魔族の犠牲になってから1年が経過しようとしている頃、ということでもあった。



 タズは魔石へと姿を変えた村の皆と今も一緒にいる状態ではあるが、1年という節目にきちんとお参りに一人で出かけようとしていたところ、イリアに引き止められたというわけである。



 イリアの準備が終わったところで2人は王都を出てタズの村があった西へ西へと向かって飛んだ。





「変だね。去年はこの辺もオークとか魔族が結構いたのに全然姿もみえないし気配も感じないや」



「多分この前のドラゴン騒ぎが影響してるんだわ。西側ってどうしても竜族のテリトリーって感覚があるし、きっと今は普通の魔族はブリズバーンよりもさらに北東の方か、南東のマルボルンの方へと移動しているんだと思うわ」



「そっか。そういうことだったんだ。それなら村も魔族に占拠されてたりそういうことはなさそうかもしれないね」



「そうね。だといいわね。

 それにしても結構来たけど、まだなの?」



「いや、もうすぐだよ。

 あの丘のふもとのあたり。ちょっとくぼんだところが僕の村だったところだよ」




・・・・・・・・・・・・




 イリアはタズの村だった場所に着くと絶句した。死体やミイラなどは一切ないのだけれど、放置されたことですっかりと荒廃していて、誰も住んでいない廃墟と化していた。


 木を彫って作った家のようなものもあったけれど、あちこち焼け焦げているし、草も覆い茂っていた。



「ここがタズの村なの…?」



「そうだよ。やっぱり一年も放置しちゃうと大分草が生えてきちゃうね!

 魔法を使って大掃除しなきゃ!」



 イリアの心配を他所にタズの方はやる気満々といった様子で掃除を開始した。

 イリアとしてはこの様子なら今度の平和記念日、つまりはイリスの命日も大丈夫そうだ、そう思ってタズに追従して掃除を始める。



 結局その日はイリアとタズで魔法を駆使しながらあっという間に村中を綺麗に片づけてしまった。

 タズの家も魔力を注入して水を補給するとみるみるうちに元気に復活していった。掃除が終わった後に改めて眺めてみると神木の力が効いていたのかそこまで荒廃はしていない印象だった。



 タズとイリアの2人は、村をずっと長く綺麗に持たせるため、村の木々に水が行き渡るようにするために村の中央に大きな穴を掘って、綺麗な湖を作ることにした。

 湖の中心には大きな木の苗を植えて、魔力を込める。

 新たな神木の完成である。魔力を含んだ湖に神木、これらによって永遠に神木の加護が得られるようにしたというわけである。

 また、こうすることでもしかしたらこの森のどこかに住む別のエルフたちがこの場所に気づいて越してくるかもしれない、そう願いながらこの村を緑と水の豊かな場所へと変えた。




 タズのお家のすぐ近くには村の皆の分の木のお墓を作った。

 そうして作ったお墓に村の皆の魔石と共に、2人で祈りを捧げた。






 こうして2日間の短い里帰りを終わらせたタズたちは再び王都へと戻り、来るべき平和記念日に向けて王都の復興にも協力しながら準備を進めた。




・・・・・・・・・・・・・・・・・


 数日後



「ええーー!?僕らが演武ですか!?」



「頼めんかの?」



 いよいよ平和記念日の三日前に迫ったところ、タズたちは国王からプライベートな呼び出しを受け、王宮の会議室へと入ると、国王から急な頼みを受けることになった。

 それは、記念日当日にタズとイリアの二人に演武をして欲しいという内容だった。

 国王はその理由について話し始めた。



「知っての通り、毎年平和記念日はシドル王国中から強者を募って、王宮騎士の選抜のためのトーナメントをしていたんじゃが、王宮騎士は去年、その資格がある勇気ある者をこぞって採用して一気に増えてしまったからのう。


 しばらく新規の募集はしないつもりなのじゃ。


 かといってトーナメントのような催し物は王都の安全を国民に知ってもらうためにもやりたいというのが本当のところ。


 しかし、目ぼしいものは皆王宮騎士になってしもうたからトーナメントに出せる者もいない。となると、勇者に演武をしてもらうのが一番なのじゃ。

 いや、世界を守る勇者に見世物にするようなことをやらせるなんてとんでもないということは重々承知しておるのじゃが、王都民たちからはお前たち2人をしばらくブリズバーンに貸し出したことを大層不満な声が大量に寄せられていてな…。


 今は姿を見たいという者がたくさんいすぎてわしでも制御できん状態なんじゃ…。


 それに問題なのはお前たちのファンだけじゃない。ブリズバーンに長くいさせすぎたせいで、王都の冒険者の間じゃ、勇者の力を疑問視する者も現れておる。

 中にはただの壁の修理屋だの言いだす者といった、勇者の存在を認めん者もおるのじゃ。

 一度そやつらにお前たちの力の一部だけでも見せて、反対派閥を抑えてもらえると王都の治安上も良くなるのじゃ。

 どうか王都民のためにも引き受けてくれんかのう?」



「そういうことならボクは構わないです」


「私もタズが良いなら構わないです」


「引き受けてくれるか!ありがとう!」


「ですけど、ボクとお姉ちゃんが戦ってもやらせじゃないかって思う人は出てこないですかね…?

 魔法が使えることはわかってしまってるわけですから、魔法使って凄いというくらいじゃ誰も驚かないでしょうし…」



「ふーむ。確かにそれはあるのう。じゃが、かといってお前さんたちと戦わせられる者もなかなかおらん…。

 王宮騎士では相手にならない上、王宮騎士がお前さんたち相手に一方的に負ける様子を見せてはかえって王都民の不安が募るばかりじゃ…。どうしたもんかのう」



 ちょうどそのとき、会議室がコンコンとノックされ、一人の男が乱入してきた。



「陛下、話は聞かせてもらいました。俺がその役目を引き受けましょう」



「「「グレン様!?」」」


 会議室に乱入してきたのはちょうど国王との対談が終われば、2人に稽古をつけようと王宮にて待機していたグレンであった。



「王都民全員が疑う余地のないほどにこいつらの力を見せてやりましょう。

 俺が相手ならこいつらの本当の全力が見せられますから。

 俺もそれなりに力を出せますし、日頃のうっぷん晴らしにはなりそうです」



「なるほど!それは名案じゃ。

 グレン様、すまんが頼まれてくれるか」



「もちろんですとも。タズもイリアも問題ないよな?」



「「ヒィ」」



「はい、か、良い返事だ!決まりだな」




 グレンはぷるぷる震える2人が「はい」とは返事していないことを百も承知の上で、了承と解釈して話を進めた。

 そして、あれよあれよという間に、グレンvsタズ。イリアという演武の開催が決定し、その日のうちに王都中にその知らせが伝わることとなった。



 知らせに対してタズたちが間近で見られるということで歓喜する者もいれば、お手並み拝見といった様子で口角を上げる冒険者の姿もいた。



 こうして101回目の平和記念日を迎えることとなったのである。

お久しぶりです。2か月ぶりとなってしまいましたが、しばらく別の作品を完結に向けて注力したいと思っていますので、こちらはゆっくり更新していきたいと思っています。すみませんがよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ