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勇者を継ぐ者  作者: 本城達也
オストルン大陸冒険へ
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もう一つの戦い


 一方、ブリズがダークドラゴンを葬った少し前、オーク族の群れにマヤが襲い掛かっていた。



「いてーー!

 なんだお前は!殺してやろうかッ!」




「そんなちっこいのほっとけ。それより早く森を抜けて大人の人間を攫うぞ!」




「待ちなさい。あなたたちをこの森から出させる訳にはいかないの。

 だからここで死んでね♡」





「ぐあああああああああ!!」




「ボス!コイツ子供のくせに結構速いぞ」




「チッ、亜人種か。

 キサマ、なぜ軟弱な人間を庇う。お前らも人間に住処を追いやられてる立場だろ」


 


「確かに私は人間は嫌いだけど、あなたたち魔族はもっと嫌いなの。

 それに今日はたまたまちょっとだけ人間の手助けをしてあげようかなって思ってるわ。


 というわけでさよなら」




「ギャアアアアアアアアアアアアアア!!!」




「クソッ!なんでそんなちっこい身体でオレ達に勝てる!?」




「さぁ?私自身も良く分からないけれど、今日はたまたまそんな感じなのよ」




(自分でも不思議だわ。誰かのために戦うのも悪くないわね)



 マヤ自身も不思議に感じていたが、今のマヤはこれまでのマヤよりもずっと強くなっていた。その証拠としてこれまではダメージを与えることもままならなかったオークに対して有効打を与えられるようになっていた上、何匹か葬ることにも成功していた。


 それほどの成長を遂げた最も大きな要因は、今のマヤにはかつてのマヤにはなかった本当の勇気が備わったことであろう。これまでのマヤは復讐心で心を満たしてそれを原動力にして魔族に突っ込んでいっていたが、それでも1年前のトラウマから巨大な身体の魔族と相対した際に無意識に恐怖を覚えて踏み込みや剣の振りを甘くさせていた。


 しかし、今のマヤは懐深くまで飛び込んだ上で鋭い一撃を放つことができている。仮にその一撃をガードされたり躱されたりすればカウンターをもらって確実に死ぬという距離であるにもかかわらず、そこまで飛び込むことができているのである。まさしく肉を切らせて骨を断つという強い覚悟を持つ者のみが戦える距離だ。



 いざという時に逃げられるようなヒット&アウェイの姿勢では強力な一撃を放つことはできない。もちろん、仲間とパーティを組んで戦うときはそういった安全に削る戦い方も必要であるが、仲間に頼れないたった一人の今の状況では、そんな弱気な姿勢では敵を1匹も倒すことはできないのである。


 マヤは1対多数という普通なら危機的な状況でも怯むことなく、素早さを活かし、むしろオークたちの大きな身体を隠れ蓑にしたり、日も暮れた暗い森の中、黒い外套によって姿をくらませながら油断しているオークに切りかかっており、完全にオークの集団を手玉にとることができていた。



「せやッーーーーーーーーーーー!!」



「ぐあああああーーー!」



「ボス!」



「ここまでやるならしゃーない。多少できるようだけれども、この程度ならキングの敵じゃない。

 おい!街道で合流だ!散れ!」




 オークの隊長は現状のように集団で相手をするのは、この小さな冒険者相手では逆に不利であると悟ると仲間に号令をかけてバラバラに散開した。




「ちょっ!ちょっと待ちなさいよ!」




「ぎゃあああああああああああああ!」



 マヤは一番近くにいたオークを仕留めることに成功したが、倒したオークから核を取り出した頃には他のオークは逃げた後だった。



「まずいわね。もうすぐ街道に出ちゃうわ。

 それにアイツらこのままじゃ私に勝てないと踏んでオークキングのところに合流しに行ったみたい。

 迂闊に追えば危険ね。ここで撤退するべきかしら・・・」



 薄暗い森ではあるが、街道付近は人族によって灯りが一定間隔で木の上に設置されているため、その灯りとの距離でもうすぐ街道に出ることが把握できる。


 敵は散開し、より強いリーダーの下に集って態勢を立て直そうとしている。冒険者のセオリーとしては絶対に追うべきではないといえる状況だった。今のマヤではこの混乱に乗じてオークは倒せても、オークキングは倒せない。


 ただのオークとオークキングでは身体の大きさがまるで異なる。オークは一番大きいものでも2m50cm程度で、小さいものなら1m80cm台だが、オークキングは最低でも3mはある。


 1mとちょっとしかないマヤからすると、3m超の相手は攻撃するのにも一苦労だが、それよりも身体の大きさに比例して攻撃力と防御力が跳ねあがることの方が問題で、今のマヤの攻撃力ではオークキングに傷一つ付けることも難しい。、




 こうなった時点で危険なオークからより弱いゴブリン等に狙いを変えるのが妥当であった。




 けれども、そんなマヤの脳裏には先ほど森で出会った少年の言葉が離れなくなっていた。



 ――ボクの命だけでみんなが救えるならボクはそれで構わない――



 あまりにも力強い言葉だった。あんな覚悟を持って無謀な相手(ドラゴン)と戦っている少年が自分の背後にいるというのに、マヤがここで逃げ出すのは負けたような気分になり、どうしてもそれは選択できなかった。




「あの子たち大丈夫かしら・・・。

 ・・・・・・。」



 そして、マヤは窮地を救われたときのタズのぽかぽかと暖かい手を思い出していた。




「ふふふ。人間だってみんながみんな嫌な奴というわけじゃないわ。

 

 行くしかないわね・・・」



 マヤは決意を新たに強力な魔族が集う街道へと向かった。

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