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#66「ここだけツンデレ地帯よ!」

20万文字突破感謝! 読んでくれた貴方のおかげです!


ツンドラ:本来、サーミ語・ウラル地方の言語で「木が無い土地」を意味する。

「よし、風呂でも入ってくるかな」

「それならまた、あたくしのバブルバス・スラ――入浴剤を!」


 シャフりんがいきりたつ。

 だがそこはキャンセルしなければ!


「あれはダメ。また風呂が破壊される」


 そうだ、計画を実行に移すためにもシャフりんを足止めしなくては。

 でないとまた俺の背中を流す、と言って乱入してくるに違いない。



 手はある。


 シャフりんはファルフナーズの妹。

 つまり甘いものには弱いのだ。

 昨日も2人でプリンを一緒に喜んで食べてたし。



「シャフりん。実は君にまだ教えていない、禁断のお菓子があるのだが」

「!! 食べたい! にーに! どこにあるのかしらっ!?」


 食いつき完璧。

 シャフりんが俺の腕にしがみついてグイグイ引っ張る。


「その名をアイスクリームと言う。コンビニで売っているのだが、買いに――」

「いこう!」


 よしよし。


 計画通り。


 ニヤリ



 シャフりんを襲う甘美な罠だぜ。



「……で、いつの間にファルフナーズが」


 玄関で靴を履こうとした時には既に俺の右後ろに居た。

 風呂場に居たはずなのに。


 って言うか、足遅いんじゃなかったっけ?


「マサト様とシャフリーンが甘味屋に向かうと聞きまして。ワン」

「犬耳の効果か……」


 玄関に風が吹いた。

 まだドア開けてないのに。


 パタパタパタ



 うん、ファルフナーズの尻尾だ。


「澄ました顔しても、尻尾が全てを物語っているぞ」  

「べ、別にお散歩とかプリンとか、そんな事は考えていないのですワン!」


「シャフりん、お前の姉はウソが下手だぞ」

「そこがファル姉様の素敵な所よ!」


 さいですか。


 うわ、ぞろぞろと神と悪魔の連合軍まで玄関に。


「ワシもアイスとやらを所望するのじゃー」とスクルド。

「ハーちゃんも食べてみたい、ですって!」とハーちゃん。

「妻であるワタシはマサトと同じ物を食す」とデスノ。


「待て待て、そんなに大勢でコンビニに押しかけるもんじゃない。みんなの分もちゃんと買ってくるから」



 渋るスクルド達をなだめすかして玄関を飛び出した。

 全員で街に繰り出したら、絶対パニックが起きる。


 パーティーメンバーは慎重に厳選せねば。

 ダンジョンに入る時より気を使うぜ。





「にーに! 巨大な鉄の馬の群れが!」

「それはもうやった」

「お、おほほほほ……ですワン」



 苦笑いをしていたファルフナーズが突然驚きの表情になった。

 何だ何だ?


 耳がピンと立ち、尻尾も真っ直ぐになる。


「こ、ここは危険なのですワン……」


 お姫様は俺の腕にすがりつくように背中に隠れた。


 その目線の先にあったのは――



 ペットショップ。


 店先のウィンドウ越しに犬と猫が見える。

 なるほど……


 み~ぃ、み~ぃ

 くぅ~ん……


「いや、待て待て。そこに居るの、全部子猫と子犬だぞ」

「怖いのですワン! 勝てる気がしませんのですワン……」


 子猫に負けるのか。

 むしろどうやって負けるのか。


 敗北を知りたい。



 流石にウィンドウ越しなら安全だと気付いたようで落ち着いてくれた。

 知能まで犬並みになったのかと思ったぜ。



 コンビニに辿り着くとシャフりんが黄色い声で叫んだ。


「何て素敵なの、にーに! これが全部甘い物だなんて!」

「全部じゃないぞ。雑貨とか普通の食品もあるぞ」


「こんなにたくさん食べきれないわ!」

「買うのは1つだけだぞー」



 シャフりんの表情が消えた。

 目の光も。

 魂も。



「これだから王族のお姫様は! 仕方無い、食べきれる分だけを選びなさい」



 シャフりんにとびきりの笑顔が戻った。

 涙をこぼしながら俺に抱きつきタックル。



「にーに! 大好きッ!」



 稼いだばかりの18万円が……

 ま、元からシャフりんの身の回りの品に使うつもりだったから良いか。


 この後のお楽しみタイムへの投資、と割り切れるし。



 キョロキョロと周囲の棚に目移りするシャフりんをアイスの冷凍ショーケースに誘導する。


「凄い! ここだけツンデレ地帯よ!」


 ツンドラね。ツンドラ。

 でも何でツンドラって言うんだろうな?

 ツンツンしたドラゴンが意地悪で氷の吐息を吐いたとかの昔話とかかな。


 結局好きなだけアイスを選ばせてしまう。

 うーむ、俺は妹に甘いタイプだったのか……?


「あっ、にーに! これも食べたいわ! 小さいけど茶色くて高級そうなハー……」

「それはいけない」


 名前に不吉な言葉が含まれている。

 俺から遠ざけるべきだ。


 決して高いからでは無い。

 くわばらくわばら。



「……で、ファルフナーズさんの両手にあるものは?」

「プリンですワン!」


「今日はアイスの方をだな……」

「プ、プリンも欲しいのですワン」


 くそっ


 ヤツの別腹は底なしか!


 だが――この後の事を考えれば仕方無い。

 お詫びにプリンを振舞う事になりそうだからなー


 これも必要経費だ。



 くぅ~ん、と謎の鳴き声を漏らして上目遣いのファルフナーズ。


 ぐぬぬ……可愛いじゃないか。

 押し倒したいほどに。


 だが、まだだ。


「3セットも手に持って……この、いやしんぼめー」

「み、皆様の分も、なのですワン……きゅぅん」


 くうううっ!




 ピッ


「欲望まみれの代償プリン、3点ですねー」


 やかましい。

 軽くバグった店員のレジ打ちを軽くスルーだ。



 夕飯の弁当やら何やらで、結局コンビニ袋をいくつもパンパンに膨らませて店を出る。

 ファルフナーズにまともな料理を覚えてもらわないと食費も馬鹿にならないな。

 食材の買出し問題は残るものの……



 ん?


 ファルフナーズがさっきのペットショップの前で足を止めた。

 じっと見つめている目線の先にあるのは――


 店先のワゴンに積まれた、投売り品のドッグフードと……首輪。



 ……欲しいのか。


 欲しいとして、どっちだ!? 



 どっちを買ってやるべきなんだ。

 考えろ!

 正解はただひとつ――



 でもないか。

 両方買っちゃえ。



 でもドッグフードって人間が食べたらお腹下すんじゃなかったっけ。


 いや違う。 確かあれは――


 思い……出した!


 『ヒューマングレード』だ!


 人間と同じ安全基準で作られているという証、それがヒューマングレード。

 この記述があれば人間が食べても安全なはずだ!



 店内に入って、ウェットタイプの高級品を買った。

 そして首輪。



 首輪……



 お姫様にドッグフードとか首輪とか、大丈夫か?

 向こうの世界に着いてから罰せられたりしないかな。


 本人が欲しがっているのだから仕方なかった、と言い訳をして押し通そう。



 アイスを楽しみにはしゃぐシャフりん。

 それをよそに、俺とファルフナーズは何となく無言で帰宅した。





「た、ただいまーって、スクルド、ずっと玄関で待ってたのか」

「お帰りなさいなのじゃ。さ、早ようアイスを食してみようぞー」


 どんだけ楽しみだったんだ。


 テーブルを囲んでのアイス品評会が始まった。

 女性陣のきゃあきゃあと楽しげな声が家を包んだ。


 

 さてと……


 作戦スタート!


 わざとらしく大仰に席を立つ。



「あら? マサト様、召し上がらないのですか? ワン」

「ああ、先に風呂に入っちゃおうかと」


 かしこまりました、とファルフナーズも席を立つ。


 俺の服を脱がせるのはメイドとしてこの家にいるファルフナーズの役目だ。


 

 風呂場へと移動する。

 先ほど買った品も持ってだ。


「じゃあ、よろしく」


 と、いつものように狭い脱衣所に2人で入ると俺は両手を上げる。

 お姫様はやや顔を赤らめながら、俺のシャツのボタンに手を掛けた。


 流石に慣れてきたもので、すみやかに俺の服が脱がされていく。

 

 期待に胸が躍る。


 あっという間に俺は腰にタオル一枚巻いただけの姿になった。



「ファルフナーズは今日も色々頑張ってくれてるな」

「そ、そんな事ございませんワン」


 ピンクの髪の間から生えてる耳がピンと立って反応した。

 ご褒美を期待したのはバレバレだ。


 もちろんだ。


 いっぱいご褒美ナデナデをしてやるぜ!



 だが


 ナデナデが頭だけで終わるかな?

前回、次はお風呂回と言ったな。あれはウソだ。

まじごめん。長くなりそうなので区切ってしまいました。


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