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#46「初乗り運賃730円」


「よし、ステータス確認だ」

「お任せくださいですわ」


 わずか2日で7レベル上昇。

 意外と頑張ってるなあ、俺。


「では、上から順に読み上げますね」

「よろしく頼む」


「マサト・オコノギ 20歳 慎重161cm 体重77kg 童貞。はて、この新しく追加された童貞というのは、どういう意味でございましょう?」

「よ、余計な項目追加しやがって……ッ!」

「ひゃっ! も、申し訳ありません」


「いや、ファルフナーズに言ったんじゃない」

「はい……続けても?」

「ああ、頼む」


「特性【主天使】一気に良いご身分でございますね。よござんした」

「なんで僻(ひが)みっぽいんだよ。たまには祝え」


「レベル12、ダンジョン荒らし」

「いいね。それらしくなってきたぜ。ちょっと悪者みたいだけど」


「命中点15+40(金属バット、詳細略):スワッシュバックラー級」

「スワッシュバックラーって何だろう?」


「剣士、ですわ。ただ……」

「ただ? 何?」


「あまり良くない意味でして……日本語に意訳すれば、剣を持った暴漢、くらいの意味に」

「酷い。もうちょっと上手い訳を頼む」


「暴れん坊剣客、と言った所でございましょうか」

「その辺で納得しよう。剣使ったこと無いけど」


「打撃点15+40(金属バット、詳細略):スワッシュバックラー級」

「まあ順調だな。しかしオリンピック級より暴れん坊剣客の方が上なのか。基準が分からないなー」


「回避点18+0:ネズミ級。これは新しい項目ですわ」

「今まで回避してなかったっけ……? しかしネズミ級って高いのか低いのか」


「防御点22+15(素敵なプロテクター)+7(素敵なマスクとレガース)+5(浮遊靴):トパーズ級」

「トパーズ? 宝石の?」


「はい。とても硬い宝石ですわ」

「おほー、流石にステータス評価もおふざけが少なくなってきたな。満足満足」


「体力点30:英雄的サンドバッグ並み」

「……前言撤回。何だよ、英雄的なサンドバッグって!」

「ひいっ!? 申し訳ありませんっ」


「あ、いや、毎度の事だがファルフナーズに言ったんじゃあ無い」

「さ、左様でございましたか……」


「幸運値:99(ハッピー人生)」

「ああ、ステータスの中でこの項目だけがオアシスのように輝いている」


「まあ! マサト様、更に新しい項目が追加されておりますわ」

「おおっ? 何だ何だ?」


「魔力点5、ですわ」

「きたああああ! 遂に俺も魔法使いだ!」


「おめでとうございます、マサト様」

「ありがとう、そしてありがとう! 魔法剣士デビューだぜ!」


 …


「……で?」

「……はい?」


「いや、どんな魔法の呪文が使えるようになったの?」

「そう言えば……どこにも……きゃっ」


「どしたどした?」

「魔力点の文字に触れたら、ええと呪文一覧という別のページが飛び出しましたわ」


「ポップアップ・ウィンドウだな。呪文は何個ある?」

「ええと、ひとつですわ。召還呪文と言う項目にあります」


「1つってのは少ないが、召還系! ははは! いいぞ、いいぞ! どんな召還魔法だ?」

「名前は載ってませんが……要スマホ、と書いてありますわ」


「スマホぉ? デジタルなモンスターでも召還するのかな。どれどれ、スマホがある自室に行こう」

「あ、はい」


 自室に戻って机の上にあるスマホを握る。

 スマホからモンスターが飛び出してくるのかな。


「どうしたんじゃ、マー君。ステータスの確認とやらは終わったのかの?」

「それが魔法を使えるようになったらしいんだが、このスマホを使わないと駄目らしくてな」


「変な魔法じゃのー どれ、使ってみせい」

「言われなくてもお披露目タイムだぜ」


 どんなモンスターが召還できるか分からないので、ダンジョンに入る事にした。

 スクルドはダンジョンに入ろうとせず、扉から顔を覗かせているだけだ。

 先日のスライムの中でお漏らししたのがトラウマなのか。


 幸い今回は周辺にモンスターは見当たらないみたいだ。

 居たら居たで、召還魔法の最初の犠牲者になってもらうだけだが。

 通路の先に向かってスマホを握り締め、体をくねらせるようなポーズを決めてみる。


「よし、ファルフナーズ。召還方法を教えてくれ」

「かしこまりました。魔力を手からスマホ? に伝えるようにして次の操作を行う……」


「魔力……こうか。おお! 何か体の内側から手に向かってグイグイ来るな! さあ、次はどんな操作だ!?」

「はい、ええと……0X0-9014-1094」


「……」

「……」


「電話番号じゃねーか!」

「ひぃん! 申し訳ありませんー」


「ま、まあ、ともかくやってみよう。ええと、0X0で……きゅーれーいち……待てよ、これは」

「な、何でございましょう?」


「くそ、また語呂合わせだ」

「まあ、ではその数字が召還キーワードなのですね?」


「そんな、良いモンじゃないけどな……せめて初回くらいは格好つけて召還してみよう」


 魔力を込めると、手の平の上でスマホがカードのようにくるくる回る。

 おお、勝手に魔法陣が出たぞ!


「速攻召還! 出でよ! クレイジータクシー!」


 パッパーーッ!


 クラクションの音と共にギャーギャーと激しいエンジン音。

 タイヤのスリップするキュルキュルという音がしたかと思うと――


 ガシャーン!


 まるでガラスのようにダンジョンの壁が割れ、そこからあのタクシーが飛び込んで来た!


「おらああ! 敵はどこだあああ!」


 キキーッ!


「……」

「……」


「兄ちゃん! 敵がいねえじゃねえか!」

「やっぱりこれ、敵を轢いてくれる魔法なのか……物騒な」


「普通に乗せてやってもいいぜ。便利だろぉ?」

「遠慮しておきます」


 ファンタジー風にバグった運転手は危険すぎた。


「おう兄ちゃん、通路が狭くてUターンできねえ。バック誘導よろしく!」

「あっ、はい。オーライ、オーライ」


「また、いつでも召還しな。魔力点は2使うぜ」

「タクシー運転手の口から魔力なんて言葉は聞きたくなかったなー」


「運転手なんてつれない言い方はもうするんじゃねえ。俺とお前の仲だ。暮井寺(くれいじ)か卓志(たくし)って呼んでくんな」

「ほぼ変わらないと思います。あと、どんな仲ですか」


 おっさんのタクシーはバックしながらガラスの様に割れた謎の空間へ引っ込んで……

 行かずに停車した。


「忘れてた、兄ちゃん」

「はい?」



「初乗り運賃730円だ」

「金も取るのかよ!」


「カード払いもOKだぜ!」



 ご利用は計画的に。

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