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#4「投げやりステータス」

「それで、なんで攻撃魔法が使える事を黙ってたんだ」

「あっ 申し訳ありません。正確には使えるようになってました。ですわ」


「そう言う事か……今なったのか、今気付いたのかのどちらか、なんだな」

「はい……」


 ん?

 ファルフナーズが虚空を見つめている。

 フェレンゲルシュターデン現象かな?


 いや、パントマイムみたいに手も動かしている。


「何やってんの?」

「はい……何だか目の前に光る文字が浮かび上がって、そこに私が攻撃魔法を使える、と」


「ほほー、他に何が書いてあんの?」

「ええと、上にステータス画面という文字が」


 おお! 良いじゃん!


「そんで、そんで、どんな事が書いてあんの?」

「はい……私の名前と詳細な情報が」


「読んでくれ」

「えっ」


「ん?」

「いえ、その……」


「んん?」

「は、恥ずか……しい、です」


 ははあー、プライバシーか!

 あーもー、そりゃあ是非とも知りたいねえ。


「んん、ゴホン。ファルフナーズ君、私は君の主人だな」

「はい」


「君はこのダンジョン攻略の鍵なんだ」

「はい……」


「俺の国にはこんな格言がある」

「はい?」


「敵を知り、己を知れば百戦危うからず。情報こそが力だ、という意味だ」

「はいー……」


「分かったら、そのステータス画面に書いてある事を読み上げてくれたまえ。一字一句漏らさず、な」

「そ、そんなあー」


 ファルフナーズは羞恥のあまり両手で顔を覆ってしまう。


 …


 俺は腕を組んだまま微動だにせず、ファルフナーズを見つめてプレッシャーを与える。


 耳まで真っ赤になったファルフナーズは震える声で仕方なく読み上げ始めた。


「ふぁ、ファルフナーズ・トリピュロン……じゅ、16歳です」

「ふむ」


 ほう、16歳だったか。

 やはり絶世の美少女とは言え、ちょっと幼い顔立ちなんだな。


「し、身長143cm……た、たいじゅ……」

「ふむふむ」


「マサト様、お許しくださいませ……」

「んんー、そーれは困ったなー。詳しい情報が分からないとなー」


 とは言え、恥ずかしがるファルフナーズの可愛い姿も堪能したし。

 このあたりが潮時か。


 なあに、続きはいつでも楽しめる。


「ごめんごめん、冗談だよ。ちょっと意地悪過ぎたな。許してくれ」


 ほっと胸をなでおろすファルフナーズだった。



「じゃあ差し障りの無い情報、主に戦闘なんかに関する情報を頼むよ」

「了解しましたわ」


 可愛らしい咳払いをひとつ。

 耳に心地よい甘い声でステータス画面とやらを読みあげ始めた。


「ええと、特性【オブジェクト化】:モンスターに干渉出来ず、干渉される事も無い、とあります」

「やはりか」


「職業:【プリンセスメイド】:姫巫女になるための修行中の身分。主と定められた者に絶対服従」

「ほっほーう」


 絶対服従なのか。

 なんて素晴らしい響きなんだ!


 これは色々と捗るな!


「レベル1、見習いメイド」

「なるほど」


「スキル、攻撃魔法【炎の矢】1回/1日、絶対命中、矢の形になった炎が敵を貫く、だそうです」

「いいね。絶対命中とは有難い。1日1回だけとは言え、貴重な攻撃手段だ」


「今のところは以上です」

「分かった。ありがとう」


 ファルフナーズがステータス画面を片付けようとパントマイムで虚空を右にずらす。

 なんで俺には見えないんだ。


「あらっ?」

「どしたー?」


「マサト様の画面も出てきました」

「まじか! 読んでくれ!」


「え……よろしいのですか?」

「ん? いいよ?」


 別に俺の体重やらスリーサイズなんて恥ずかしくもない。

 まあお姫様育ちのファルフナーズには分からないだろうが。


「マサト・オコノギ 20歳 身長161cm 体重81kg」

「うんうん」


「特性【駄目人間】やる事成すこと全て駄目」

「やかましい」

「ひゃいっ! す、すみません……」

「あ、いや、ファルフナーズに言ったんじゃあ無いんだ」


 誰だ、このステータス画面を書いた奴、発明した奴は。

 出会ったら一発殴ってやらなきゃ気がすまねえ。


「職業:【ヒキニート】:うまくすればプロ趣味人になれるかもよ? 頑張ってみれば?」

「なんで語り口調で半疑問系なんだよ」


「レベル1、はじめてのダンジョン」

「はじダン。早くも死んだけどな」


「技量点1+1(金属バット):小学生並」

「金属バット込みで小学生並かよ!」


「体力点2:硬い豆腐程度」

「豆腐メンタルじゃなくて体が豆腐並みなのかよ……」


 ふざけてんなー、このステータス画面。

 くっそー、体力の衰えを認めざるを得ない。


「んで?」

「はい? 何でございましょう?」


「いや、続きを」

「以上ですわ」


「えっ、スキルとか攻撃技とか、何かそれっぽいのは無いの?」

「ええ、特に記入されておりませんが……」


 ファルフナーズがしきりに画面を右へ左へとスライドさせて確かめている。

 小首を傾げてるあたり、本当に何も追記されてないようだ。


「えっらいシンプル。むしろ手抜きみたいなステータスだな!」



 能力値が技量点と体力点の2種のみだなんて……どんなバランスしてんだ?

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