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#15「違います! サテュロスです!」

「よし! ファルフナーズ、お前のスカートをめくれ!」

「はい!?」


「サテュロスの弱点、好色さを利用するんだ」

「ななな、何をおっしゃるのですか、マサト様!」


「は、早く……音楽を止めないと、体に力が入らない」

「そんなはしたない事できませんわ!」


「頼む……無残な殺され方は嫌だ……」

「――~~……ッ!」


 へたり込む俺。


 ジワジワと迫り来るサテュロスと倒れる俺を交互に見やるファルフナーズ。

 ドレスのスカートの裾に震える手を添えた。


「こっ、これもマサト様のためーぇ!」


 ファサッ!

 ご開帳!


 今日のパンツは桜色!

 部分レースで少し透けている所もセクシー!

 白ニーソとガーターベルトのコーディネートも最高だ!


 元気でたあ!


 スカートの裾を捲り上げたポーズのまま、目を瞑り顔を右にそむけるファルフナーズ。

 ふるふると羞恥に震えながらも耐える姿もまたいじらしい。


「ど、どうですか、マサト様」

「素晴らしい。 最高に綺麗だ、ファルフナーズ」 


「ちっ、違います! サテュロスです!」

「そうだった」



 サテュロスのほうを振り返ると、ニヤニヤ笑いながらハープを引き続けている。


 あれ? 

 好色な生物がこのファルフナーズの神々しい姿を見て無反応とは……


 ……


 …


「あ、そっか」

「??」



「悪りぃ。 お前の姿、モンスターには見えないんだった」


「はッ!? あ、あ、あ、あぁ……ッ!」


 涙目のまま震え声のファルフナーズ。


「い、いやああーーッ!」



 【炎の矢】が全てを消し去った。




 見飽きた光景。

 6度目の復活。


「ぐすっ、マサト様のバカぁ~!」


 あ、はい。

 すんません。



 一時間、口をきいてくれなかった。



 ファルフナーズがぷりぷりと頬を膨らませて虚空を指差す。

 まだ怒ってるのかー

 だが、こちらをジト目でチラ見してくる。


 ははあ……


 恥ずかしい思いをさせた代わりに、ガチャを回せって言いたいんだな。

 う~ん……


 まあ、今回は仕方ないか。


「じゃあ、1回だけな?」


 ポチッ


 後頭部に電流が走るような痛み!

 あああ!

 さらば、マイ毛根(フレンズ)!


 ドゥルル、デン!


『コモン』


「うおっ、またドアか」


 扉が俺の真上に降り注ぐのを飛びのいて回避した。


「必ず俺の真上に落ちてくるのは、殺す気満々って事か!?」


 くっそー、ハズレアイテムにももっとバリエーション用意しておけよな。

 


 …


 あれ、まだムスッとした顔のまま人差し指を立ててるぞ。


「おいおい、1回で十分だろ」

「……」


 ぷくっと頬を膨らませる。

 こりゃ相当ご立腹ですなー

 ゴリっとガチャを回してぷくっとスネる。


 駄洒落か。


「あ、あと1回だけな?」

「とおー! ですわ」


 ドゥルルル、デン!


『アンコモン』


「ぐぬ、またハズレかあ」


 ぱらり、と紙切れ一枚だけ降って来た。


「なんだこれ?」

「魔法の巻物でございますわ」


「はい、アイテム説明文によりますと……武器エンチャントの巻物だそうで」

「エンチャント?」


「魔法を付与して強化する事ですわ」

「オーケー、捨てよう」


「何ゆえですので!?」

「金属バットさんがまた俺より強くなってしまう!」


 ……


 …


「ゴホン、じょ、冗談だよ」

「……」


 半信半疑、って目で見つめられた。


「で? どうやって使えばいいんだ?」

「巻物を強化したい装備に張りつける、のだそうですわ」


「ふうん、ほらよ」


 ぺちっ

 金属バットさんに向かってぞんざいに巻物を張りつけた。


 ボウッ! と音をあげながら巻物が青白く燃え上がる。


「うおっ、びびった!」


 指の先を火傷したじゃないか!


「まあ大変ですわ」

「水で冷やさない――と!?」



 ぱくっ



「ふぁ、ファルフナーズ!?」


 反射的にか、ファルフナーズが俺の手を握りその火傷した指を咥えた。

 自身の唾液を俺の火傷した指に塗るかのように唇で優しく包んでくる。


 その暖かく滑(ぬめ)る感触に陶然ととしつつ魅入ってしまう。


 俺の視線に気付いて唇を離すまで、どれくらいの時間だったか。

 ほんの3分も経ってないはずなのに。



 一生の思い出になった。



 自分の行為に急激に羞恥心を覚え、ファルフナーズが視線を外し手を離した。


「ま、まあっ、申し訳ありませんっ! 私ったら、はしたない事を――」

「あ、いや、なんだ。 ありがとう……」


 ……


 …


 妙な空気になった。

 天使が舞うような沈黙に包まれる。

 いかん、こう言うのは苦手だ。


「あー、その、済まなかったな。 悪気は無かったんだが」


 無かったんだが、スケベ心はあったな。


「もう気にしておりませんわ。 ガチャも2回まわして頂きましたし。 ふふっ」


 誤魔化すように笑って許してくれた。

 俺の毛根達よ、君たちの犠牲は正しく報われたのだ。



「あ、でもやっぱり後1回だけ……」

「勘弁してくれー!」


 甘酸っぱーい!


 胸がわさわさするっ。


 …


「そんで、金属バットさんはどうなった?」

「あ、はい、では今、ステータス画面を確認致しますわ」

 

 ファルフナーズが自分にだけ見えるステータス画面を操作する。

 俺から見たら虚空に向かってパントマイムをしているようにしか見えない。


「まあ、銘(めい)が付きましたわ」

「めい? 銘って何ぞ?」


「武器などの道具に刻まれる固有の名前、あるいは修飾語ですわ」

「ほほー、銘が刻まれるとどんな効果が?」


「その銘に相応(ふさわ)しい道具になりますわ」

「マジか、楽しみだ。 金属バットさんにどんな銘が付いた?」


「はい、【知的な】素晴らしい金属バット、命中点6、打撃点6となりました――」


 …


「バットが知的になっても意味が無ええええ!」

「ひいっ、す、すみませんっ」


「いや……ファルフナーズに言ったんじゃあ無い」

「よくよく見れば何とも知性あふれるお姿に……」


 んなバカな。


 銘なんて生意気な。

 しかも地味にまた強くなってるし


「ははは、バットなんて振り回してボールを叩くだけのモンさ。 知的なんてちゃんちゃら可笑しい」


『無礼な奴め。 私の力は使う者の能力次第だ』


 …


「ファルフナーズ、今何か言った?」

「いえ、私ではなくその――」


『私だよ。 バットだ。 全く、我が主ながら残念な頭脳だ』


 ……


 …


 ば、バットが……!


「しゃあああべったあああ!」

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