ティルミちゃん大暴走
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よろしくお願いします!
ミノタンロースを使った、焼肉大パーティーから数日後の事。
「ふぇぇぇぇぇぇぇん、ベルゼさぁぁぁぁん」
私の目の前で、ティルミちゃんが大泣きしていた。
ちょ、朝っぱらからなんなのよ!
近所迷惑になっちゃう。
ティルミちゃんの目の前で、オロオロしても、泣き止む気配がない。
手にはグラスを持ち、顔は机に伏せて、大泣きをしていたのだ。
なぜ、ティルミちゃんが、こんなにも大泣きしているのか。
それは、少し前に遡る。
***
「ベルゼさん、ごめんなさい!」
「い、一体どうしたのだ。いきなり謝って?」
ティルミちゃんの突然の謝罪。
ティルミちゃんはとってもいい子なので、謝られることなんて絶対にしないはずなのに……なぜ?
『いや、こういう優しい子に限って、裏の顔とかあるんですよ』
いや、裏の顔なんてないでしょ。
もしあったとしても、私はティルミちゃんの裏の顔なんて見たことないし、裏でやったことをわざわざ謝らないでしょ
『それもそうでした!
いやん、私ってポンコツ』
……そのまま、スクラップにしてやろうか!
『ひゃう。そ、それだけはご勘弁を!
お情けを、ベルゼさまぁぁぁぁ』
やべ、ベルフェうぜぇ。
「あ、あの。ベルゼさん」
「あ、ごめん。私に取り付いている幽霊が騒ぎ出したから……」
「それって前に言っていたやつですか?
あれ、幽霊じゃなくて悪魔だったような……」
「う、それは……」
やばい、間違えたらしい。
前に、ベルフェのせいで、ティルミちゃんを怖がらせてしまった時、言い訳として、ベルフェのことを幽霊とか、悪魔とか、精霊とか、適当に言ったんだけど……
覚えている訳無いじゃん!。
そもそも、私も悪魔だからね!
『私に聞けばよろしかったのでは?』
……そういえば、その手があった気がする。
うう、私って馬鹿だっけ?
もういいや、どうにでもなれ!
「まぁ、幽霊でに悪魔でもなんでもいいや。
そいつがうるさく言ってくるから、ちょっと、ボーッとしてしまただけ。
わかった?」
「はぁ……そうなんですね」
あ、これはよくわかっていない顔だ。
ベルフェの説明って、地味に難しい。
そもそも、私しか認識できないのがあれだよね。
「それでですね、ベルゼさん。
今日は、仕事が遅くなりそうなので、先に家に帰ってもらえますか。
これ、私の家の鍵です」
「ん、わかったけど、そんなに遅くなりそうなの?」
「もしかしたら、朝になるかも……」
「大変だね。頑張ってね、ティルミちゃん。
何か手伝えることがあったら、なんでも言って!
手伝うよ」
「ベルゼさん……
ありがとうございます!
でも、これは私の仕事です。
精一杯頑張ってきますね」
「体壊さないようにね」
「は~い、いってきま~す」
ふう、ティルミちゃん、今日は遅くなるんだ。
また一人ぼっち……
冒険者ギルドと、ティルミちゃんの家だけが、私が一人じゃなくなる場所だったのに……
寂しいけど仕方がない。
ティルミちゃんの家に行こう……
という訳で、早速ティルミちゃんの家で遊ぶことにしたよ。
「きゃほう!」
そう、ブラックウルフたちがいたのだ!
このもふもふがとっても気持ちいい。
まるで、雲の上にいるような極上の感触。
と、とっても気持ちいい……
「ふわぁ」
んん、もふってたらだんだん眠くなってきた。
窓から、外を見てみると、完全に暗くなっていた。
ティルミちゃん、頑張りすぎないといいな。
とりあえず、今日はもう寝よう。
「おやすみなさい」
「がう!」
***
という感じで、私は寝たんだ。
で、ティルミちゃんの泣く声で目が覚める。
とっても、とーっても凄かったんだよ。
だって、いきなり、「ふえぇぇぇぇぇん」って声が聞こえるんだよ。
一体何事だ! と思って、飛び起きちゃったよ。
という訳で、私もあまり把握出来てないのだ!
何か、ごめんなさい……
『珍しいものだったので、記録しておきまし……』
消せ。すぐに消せ。今すぐに。早く!
『や、やですぅ』
っち、仕方ない。
ベルフェのことはあとで殺るとして、今はティルミちゃんだ。
『はは、ベルゼ様。ご冗談を!
やるって字が間違ってますよ。
殺るになってますよ』
……………
『え、嘘ですよね。ご冗談ですよね?
お願いだから、反応してくださいよ。
ふえぇぇぇぇぇぇぇん』
あ、ベルフェも泣き始めた。ちょっとメンドくさい。ベルフェだからまぁいいか。
「で、ティルミちゃん。一体どうしたの?」
「ベルゼさん、ぐすん。聞いてくださいよ。 商業ギルドがぁぁぁぁぁぁぁ」
「え、商業ギルドで何が……」
「私の実力を認めてくれて、王都の商業学校の推薦状をもらったんですぅ。それで、それで、私は、王都の商業ギルドに移動することになってしまったんですよ……ふぇぇぇぇぇぇぇぇん」
ん?
私の理解が悪いのかな?
どう聞いても、いい話にしか聞こえないんだけど……何が悲しんだろう。
「ベルゼさん。私は、私は寂しいですよ。。ベルゼさんと一緒に暮らすの、とっても楽しんですよ。でも、でも、王都に移動になったら、離れ離れになっちゃうじゃないですかぁ。ベルゼさんがいないなんて嫌ですよ。もっと一緒にいたいですよぉぉぉぉ」
うう、なんて嬉しいことを言ってくれるの。
ティルミちゃんは!
「仕方ないから、私も一緒に……」
「王都の冒険者ギルドは、Cランク以上か、冒険者学校の在校生、もしくは卒業生以外、依頼を受けられないんですよ?」
「え、そ、そうなの」
「そうなんです……
だから、私は寂しんですよ」
うう、私の冒険者ランクは、まだF。
つまり、新人冒険者だ。
今のままじゃ、王都に行っても働けない。
遊ぶための資金が集められないよ!
早急に冒険者ランクを上げなければ!
「ほら、ティルミちゃん。そろそろ泣きや……う」
あはは、とっても変な匂いがするよ?
これは何かな、何かな?
はい、お酒だぁぁぁぁ。
「って、ティルミちゃん、お酒なんて飲んでるの。年はいくつよ」
「ふぇ? 私は十二歳ですよ?」
「十二歳なんだよね。
お酒なんてまだ早いんじゃ……
というか、十二歳の子供を夜遅くまで働かせる商業ギルドがブラックすぎる件について!
その前に、ティルミちゃん。お酒をやめなさい!」
「え、なんでですか?
今は、飲んでないとやってられないんですよ」
「でも、子供にお酒なんて……」
「でも、私は大人ですよ?」
んん?
今のは聞き間違いかな?
十二歳が大人だって!
私が封印される前は……
ごめん、人間をちゃんと見ていなかったからよく覚えてない。
け、けど、もう少し大きな個体が大人だったよ。
昔から考えればティルミちゃんは、まだ子供のはずなんだけど!
『ふふ、もうすぐベルゼ様に殺られちゃうベルフェが説明しましょう』
よし、ちゃんと答えられたら、ご褒美に、殺らないでやろう。
『マジっすか!
わたし、めちゃくちゃ頑張りますよ!
現代の共通界において、大人の定義は、働いてお金を稼いでいるかどうかになります』
え、年齢とか関係ないの?
『はい、全く関係ありません。
重要なのは、働いているかどうかなんです。
だって、働かない大人に娯楽を与えたって、堕落するだけじゃないですか。
だから、働かない人は禁止されるんです』
え、でも、ティルミちゃん、まだ子どもだよ?
『先程も申しましたように、年齢じゃないんですよ。
たしかに、年齢は若いですが、働いている物のご褒美として、娯楽が解禁されるんですよ。
だから、お酒も飲めるんです。
立派な大人です』
うん、よくわからない。
というか、子どもが働いているから、大人扱いで、お酒とか飲めるようになるっていうのは、体に悪いからやめたほうがいいと言いたいよ。
とりあえず、ちゃんと説明してくれたから、殺るのはやめてあげるよ。
『やった!』
ベルフェ……本当にちょろいな。
「「「「ワオォォォォォン」」」」
おお、ブラックウルフたちが叫び始めた。
「みんな、私を慰めてくれるの?」
「がう、がうがう」
「がうがうがう」
「ワオン!」
「みんなありがとう!」
泣きながら、ブラックウルフに抱きつくティルミちゃん。
子供らしいすがたがとっても可愛いはずなのに、手に持っている酒瓶が全てを台無しにしているような気がする。
あ、ラッパ飲みしたよ!
もうやめて、私のライフは0よ!
じゃなくて、この世界のルールって雑過ぎるでしょ。
もうちょっと考えないと……
バタ……
「ぎゃぁぁぁぁ、ティルミちゃんが倒れた!」
私は、急いでティるミちゃんの容態を見てみるが……
「すぅすぅ」
「って、寝てるだけかい!」
そう、ティルミちゃんは寝てしまったのだ。
お酒のせいもあるし、疲れもあるからね。
仕方ないような気がするけど……
いきなり倒れるから、びっくりしたよ。
それにしても、ブラックウルフにうもれながら、酒瓶を抱えて寝る少女の姿って、いろんなものをぶち壊しているような気がするよ……
はぁ、ちゃんとベッドで寝かしてあげよう。
私は、そっとティルミちゃんを抱え、ベッドで寝かしてあげた。
抱き抱えている時のティルミちゃんは、とっても幸せそうな笑みを浮かべていた。
うん、寝顔は可愛いね。
だから、そろそろ酒瓶をね、こっちに渡してもらおうか!
読んでいただきありがとうございます!
働いていたら、子供でもお酒を飲める世界……
ティルミちゃん大暴走でした!
次回もよろしくお願いします!