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召喚されて骨  作者: わいとー
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7.崩れ去る壁

7.崩れ去る壁


集落を出て3日がたった。

リーナは鎧を解き、おむつを洗っている。


全身鎧で過ごしている以上、予想できない事ではなかったが……。

「妙齢の女性のあのような姿は、私の中の女性像を崩壊させていく……」

「ならば見なければよいだろう。私とてこんな姿を見てほしいわけは無いのだから」

リーナが抗議の声を上げる。

「それもそうだな。」

おれは後ろを向いた。

360度の視界に20以上の知覚能力を持つおれにとっては無意味な行動だが、確かに気分は多少変わるものだ。

正面では、リリーが野良ゴーストをむしゃむしゃしている。


ゴーストも元々一定以上の力を持っていないと、リリーの眷属にはなれず消滅するようだ。

あ、ゴーストの霊圧が消えた……。

ナンマンダー


リーナの言葉は半日も過ぎるころには慣れました。

すさまじい誤解をリーナと集落に与えたようだが、リーナに関しては「仏法の真理」を応用して、誤解を解くことに成功した。


何を聞いても落ちついて、理性的に判断できるように精神と魂に働きかけたのだ。

決して洗脳ではないですよ?


鑑定と話しからリーナが教会勢力に敵対している勢力の間者ということもわかった。

おれとリリーが教会の被害者であり、悪事の証拠そのものだということも、説得に大きく役立った。

その結果、旅の目的地は王都から間者としての雇い主が隠居する都市「マルハ」へと変更されたのだ。


「リーナよ、例のマルハはあとどのくらいで付くのだ?」

「あと5日は歩くわ。あなたが伝説にある転移や加速の魔法を使えたらすぐだったのだけれど。まったく、魔王みたいな魔力持ってるくせに、ほとんど魔法も使えないとかどうなってるの?」


説得の結果、リーナとはここまで普通に話せる関係になった。

しかし、この女小言が多い。


「なんか失礼なこと考えてない?」


おまけに感も鋭い。

「そんなことは無い。魔法に関しては使い手さえいればラーニングが可能なはずだ。マルタには宮廷魔術師だった者がいるのだろう?

その者が便利な魔法を持っていればそれで済む話だ。」


「魔力知覚」には魔法を解析して理解する機能も若干だが含まれていた。

初見でもおおよその性能は把握できるし、簡単なものであれば習得も可能だ。


「リリーのまほうは、べんりでなかった―?ごめんねー。」

「そんなことは無い。リリーの魔法はとても強力だ。」


既に、リーナとリリーの魔法は体験して慣れたし、習得もしている。

リーナの魔法はエレメンタルといわれる4元素「火・水・風・土」を操るもので、おれにとってもゲームでなじみ深かった魔法だった。高位の風魔法と火魔法に転移系の魔法があるらしいが、当然リーナは使えなかった。使いまくって高位の魔法を習得しようとしたが、この魔法はゲーム的に言うと習熟度ではなくイベントによりレベルアップするものだった。

世界各地にいる高位精霊に出会うことで、高位の魔法を習得するらしいのだ。

というわけで、今はレベルの上げようがないのだ。

リリーの魔法は、「暗黒魔法」以外はおれのスキルにもあった。

「暗黒魔法」は主に精神や魔力に干渉する魔法で、今欲しい転移や加速は存在しなかった。

名前は物騒だが、良い方向で使えば魔力を与えたり、精神を補強したりと、大変便利な補助魔法だったりする。どうやら、人間で習得する者たちが、魔力を奪ったり、精神をかき乱すようにばかり使うがために、こんな名前になったのだろう。


リーナの洗濯も終わり、今は、リーナとリリーの食事のために休憩中。

時間はもうじき正午を迎える。


「リーナよ、気になっていたのだが、食料はどこから出しているのだ?水は魔法で出しているのを見ているが……」

リーナは自慢げな顔をしながら、鎧の宝石を叩いてみせた。

すると、木の実を練りこんだパンと干し肉の塊が現れた。

「この聖凱はマジックアイテムでね、「火耐性」と「収納」の力があるの!」

珍しいものなのだろう、ドヤ顔で美人(どこにでもいそう)が台無しだ。

「リリーがたたいてもでてこないよー!こわれたー!」

リリーが鎧を叩きまくっているが物は出てこない。

代わりにリーナの生命力がどんどんとリリーに出て行っている。

「リリー、やめなさい。リーナが瀕死だ。」

おれは魂術で魂を分け与える。

回復魔法がないので、仕方なくこの方法を取っているが、リーナ曰く、この方法が回復魔法の究極らしい。

死霊や悪魔によるダメージはこの方法でなければほとんど回復できないそうだ。


「ありがとう、助かったわ」

リーナが素直に礼を言ってくる。

ちなみに、この方法で回復するとき、回復される者は術者の感情が流れ込んでくるそうだ。

「骨なのに、あったかい心の持ち主なのね……。わたしをほしいと思ったのは、ウソではなかったのかしら」

あかくなるリーナかわゆい。

まぁ、間者に選ばれるだけあって、どこにでもいそうな顔してるんだがね。


カキンっ!

[日光に慣れました。光属性への完全耐性を得ました。

関連スキル「聖光魔法」を得ました。

6属性の魔法スキルが統合されました。

上位スキル「元素魔法」を得ました。]


おとといぶりのカキンっ!が来ました。

あいかわらず、なんの前触れもないね。

とりあえず確認。


「元素魔法」は火・水・風・土・光・闇の6元素を自在に操る魔法。下位の魔法では不可能だった、複数属性の混合による自然現象も操ることができる。

その本質は物質と精神を自由自在に操ること。これであなたも大賢者。


おれ氏、賢者になる。


「リーナ、リリー、新しい魔法を覚えた。マルタまで飛んで行けそうだぞ」

「ほんとー!?くもよりたかくとべるのー!?」

「……どういうこと?」

「リリーよ、あの雲くらいなら余裕で飛べるぞ。

リーナ、日光浴したから、賢者になっただけだ。」

「すごーい!はやくとぼー!」

「そろそろまじめに考えるのやめた方がいいのかしら?」


おれたちは風に乗り、雲を渡ってマルタへと向かった。

リリーが雲からおりたがらず、結局、日程は予定通りかかってしまった。


まぁ、リリーは終始笑顔だったし、リーナもまんざらでもなさそうだったから良しとしよう。


「地を這う者たちに恵みをくれてやろう……フフフ……」

ドヤ顔しながら雲の上で用をたすリーナにドン引きしながらも、楽しい旅路であった。


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