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召喚されて骨  作者: わいとー
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3.墓から出てきた骨

3.墓から出てきた骨


 私はリーナ・グラバ(23才・独身)はピチピチの美人神官戦士にして、正体は教会の不正を探るために、前王妃様より使わされた密偵でもある。

しかし、平民出として身分を偽装したために、こんな辺境の開拓村に派遣されてしまった。

これでは、教会の不正をさぐるどころではない。


周囲の開墾が終わった城塞都市ですら、近隣の魔物を定期的に間引かなければいけないこのご時世に、辺境になんぞいた日には命がいくつあっても足りない。

今日もゴブリンやオークといった妖魔の襲撃があった。

あいつらに捕まると、女の私は死ぬまで苗床にされてしまう。

しかも、死んだ後食われるおまけつきだ。


だがそれも明日までだ。

先月書いた辞表の返事がようやく来たのだ。

明日、後任の者がここに赴任する。その引き継ぎを行えば私は安全な王都に帰れるのだ!

だから、今やっている墓所の見回りが最後の仕事になる。

そう思えば気分も良くなる。実際この仕事だけは気が楽なのだ。

墓所には辺境してはかなり立派な結界と滅霊陣が設置されていて、ゴースト一匹見たことがない。

それに、ここは聖騎士などの殉教者も弔われているらしく、週一回は高位の神官らしき人物が訪れている。


だから、あんなふうに土が盛り上がってスケルトンが出てきたりはしないし――――スケルトンだ。

結界で出てこれないし、そのうち滅霊陣を踏んで消えるよね?

うん、見なかったことにしよう。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 おれ氏、大地に立つ!

5年ぶりですね、大地さん、大空さん。


「わたしは帰ってきた―!!!」


うん、言ってみたかっただけさ!

見てください。青い空、白い雲、緑なす平原。

見事なまでの心温まる田舎の風景ですね。


丘の上には集落も見えますね。全裸は骨とはいえ精神衛生上悪いので、服か、最低でも布がほしいところですね。

しかし、白日の下で改めて自分を見てみると、見事なまでに白骨です。


カキンっ!

[消滅状態に慣れました。消滅への完全耐性を得ました。

「破壊不能」へ統合されます。「破壊不能」が「不変」に進化しました。]


外に出て早速消滅の危機だった模様。

この異世界はけっこう手厳しいですね。


とりあえず、村へ向かいましょうか。


ゴンっ!

何かにあたりました。


まぁ、透明看破と魔法視認で壁があるのは分かってたんですけどね。

もしかしたらスルーするかと思ったんだが、やはり駄目だったか。


ここは、勇者らしく結界を破ろうかと思いましたが、おれは時々思慮深いうえに平和主義者だ。

この結界を破った場合、地下の怨霊たちがあふれ出てしまうだろう。

教会の連中が復讐されるのは構わないが、あの集落の人々が関係ない人々であったら……。

そう考えるとそんな強硬策は取れません。


「ここはギャグマンガの勇者を見習おう」

おれは結界に向かってジャンプし叫んだ。

「ガコンっ!」

ガコンっ!


おれの平和への祈りは天に通じ、ギャグ補正で結界のほころびに身体をねじ込むことに成功した。

よし、もういっちょー。

「ガコンっ!」

ガコンっ!

「ガコンっ!」

ガコンっ!

「ガコンっ!」

ガコンっ!

ボロンっ!


おれは結界を抜けることに成功した!

カキンっ!

[結界に慣れました。結界への完全耐性を得ました。

関連スキルを獲得しました。スキル「結界術」を得ました。

術スキル獲得により、ブレイクスル―が発生しました。

死霊への完全耐性から、「死霊術」を得ました。

呪いへの完全耐性から、「呪術」を得ました。

「死霊術」と「呪術」が統合され「魂術」に進化しました。

スキル「魂知覚」を得ました。]


ブレイクスル―とは、墓に埋まっている時も何度かあったんだが、ゲームでいうキースキルみたいなものが集まって、ほかの下位スキルが一気に獲得されたり、上位スキルに統合される現象だと解釈している。

まぁ、法則性とか全くわからんけどね。


そんなことより……。

おお!草や虫たちの魂が見える。

草が全部うっすら光って見えて、虫はすべて蛍に見える!

正直、ウザったい。


まぁ、すぐ慣れるんだけどね。

ああ、慣れてきたわ。

しかし、死霊+呪=魂とはこれいかに。


一応確認しておくか……。


「魂術」とは精神でも肉体でもなく、魂へ直接干渉する秘法である。

あらゆる精神への耐性を無視し、対象の根幹を攻撃できる。また、逆もしかり。

物理的な干渉は出来ないが、魂さえあるならば神ですら抵抗は容易ではないとされる。


うん、なんかよくわからん。

何ができるかは、おいおい実験しないとな。


「魂知覚」は魂を知覚できるようになる。

魂は光として認識され、魂の強度は光量で、善悪や状態は色合いで認識される。

歴史に名を残す賢者や詐欺師が持っていたと噂されるスキル。


なるほど、それでむしゃむしゃされてる虫君は光が弱まっているんだな。

そう考えると、この虫君は生きながら食われているわけか……


かわいそうだから念仏でも唱えてあげよう。

「ナンマンダーナンマンダー、成仏しろよー虫君―」


虫君は暖かい光に包まれ、天に上っていった。

カキンっ!

「祈りになれました。スキル「祈り」を得ました。

「祈り」は「魂術」に統合されました。」


祈ることで、魂を救うことができるとは……。

これは、墓所の彼らを救わざるをえない。

おれは再び、墓所へと向かった。


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