15.黄金の魚
15.黄金の魚
乗合馬車で西の港にやってきた。
前回のことで、お金に余裕が出来たので少し時間のかかる依頼を受けることにしたのだ。
ウエスタン諸島連合国で最大の貿易港にあたるこの港は「イストニア貿易港」、通称イストニアだ。
ここには、北のノースランドと南のサウスランスの奥地でとれる物が海路でやってくる。
そのため、ここの商品は年中、季節感というものとは無縁だそうだ。
ここに来た目的は、採集依頼の黄金魚を捕るためだ。
黄金魚は特殊な味覚を持つ方々向けの珍味である。
そこまで高くないうえに、それほど需要も無いので、専門で捕るものがいない。
そのため、冒険者に依頼が回る。
この依頼自体、危険は少ないが時間がかかることが多く、人気が無い。
討伐依頼を解禁されるともう受ける者がいないので、おれたちのような採集依頼しか受けられない者が受けることになる。
生息地は、はっきりしているが行くまでが結構大変だ。
それほど険しくない山2つに谷1つを超えたところのある地底湖に生息している。
イストニアから、まともに歩くと往復5日の結構な旅になる。
おれたちは人里離れたらすぐに飛行するので、半日で往復できるけどね。
「普通の冒険者では、この依頼は一週間かかるわ。
でも、私たちは1日あれば終わる。
つまり……」
「つーまーりー?」
めずらしくテンションの高いリーナにつられて、リリーも楽しそうだ。
そして、リーナは声を大にして宣言する。
「6日は露店めぐりが出来るの!
あぁ、海の幸に南北から津々浦々の味覚が集うこの食の聖地で!
6日間も、食う寝るだけの生活が過ごせるなんて!」
「まぁ、ほどほどにしておけよ」
野党のお宝で、完全に小金持ちになった我々は、少し上等な宿に泊まり、露店という露店を回りつくし、あらゆる味覚を制覇した (リーナが) 。
リーナが、6日後の風呂上がりに己の所業を呪ったことは言うまでも無い。
おれは、掴めるくらいの腹の肉も結構好きだけどね。
だらしないのは、それはそれでいいのです。
おれの守備範囲は四国ぐらい広いのだ。
「さて、さっさと依頼を済ませるか」
「ワイトよ、やはり行きだけでも歩いて行かないか?」
「ダイエットなら、依頼と関係ないところでやってくれ。
それに、魔法で代謝を上げたから、普通の食生活に戻れば1月でそれくらいなら戻るはずだ」
涙目でベットに体育座りしているリーナがかわいそうで、ついダイエット用の魔法を作ってしまった。
リリーに腹の肉をつまんで遊ばれたのが相当こたえたらしい。
そそくさと、港を出て往来もほとんどない山道に入る。
今度は野党もおらず、周囲に人影も無いので地底湖まで飛んで行く。
途中、はぐれのミノタウロスが居たので、討伐しておいた。
初心者が遭遇したらひとたまりもないからね。
たしか、討伐報酬20000くらいだった気がする。
討伐が解禁されるまでとっておこう。
そして、昼前には地底湖に到着した。
地図の通り、直線距離では近いものだ。
山越えも谷超え、安全なルートを確保するために、かなりの遠回りになっている。
地底湖には、バシャバシャと跳ねる黄金魚が見える。
自分の身体の反射光によってくる虫を捕食しているのだ。
そして、水に落ちた虫は食べないという習性があるため、普通の冒険者はモリを持って水に入ることになる。
リーナも脱ぎだして、準備をしている。
絶景である。
しかし、おれはフライフィッシングというものを知っている。
黄金魚は60~80cmくらいの大きさで、釣るにはめちゃくちゃ楽しそうな魚だ。
地球にいたら、最高のスポーツフィッシュだったのではないだろうか?
「リーナよ、脱いでいるところ悪いが、水に入る必要は無いぞ」
「釣るつもりか?
水に入った餌は食わないと聞いていなかったのか?」
「おれの元いた世界にうってつけの釣り具がある。
まずは見せるから、それからみんなでやろう」
「リリーもできる?」
「ああ、出来るとも。
創造・フライロッド」
おれはフライフィッシング用の竿と、疑似餌を創造した。
せっかく魔法のある世界に来たのだから、疑似餌は竿を持った人の意思で自由に動くようにした。
怪訝な顔のリーナと、目をキラキラさせているリリーに見本を見せる。
「こう、疑似餌を投げる。
この疑似餌は思った通りに飛んで行くから水には落ちない。
そして、食いついたところで、竿を上げれば!」
見事に黄金魚の一本釣りである。
ほとんど重さを感じなかった……。
掛かった後の手ごたえと、魚と格闘して疲れさせるのが楽しかったんだけどなぁ……。
人知れず落ち込んでいると……。
「りりーもやりたーい!かして!かして!」
目がキラキラを超えてシャインシャインしているリリーが突っ込んでくる。
「リリーの竿もちゃんとあるからね。
これをあげるからやってみなさい。」
リリーは竿を受け取ると早速まねして、釣り始める。
黄金魚は結構バカな魚らしく、いとも簡単に食いつく。
外見6才のリリーが片手で体長80cm近い魚と釣り上げているのは、やはり異世界に来たんだと改めて実感させられる光景である。
「リーナはどうだ?
リリーだけでも依頼分は釣り上げそうだが?」
「せっかくだ、やってみたい。」
黄金魚は順調に釣れている。入れ食いもいいところだ。
リリーはあいかわらず、片手でポンポンと上げている。
リーナは両手でも重そうにしながら釣り上げている。
タモでも作った方がいいだろうか?
そういえば、リーナに鑑定かけてなかったな。
暇だしやっとくか。
変なバッドステータスとかあったらいやだしね。
個体名:リーナ
種族:人→ヴァルキリー (進化中) 年齢:23
性別:女
体重:自主規制 身長:158
スキル:「幸運」「密偵」「剣術」「槍術」「弓術」「4大精霊の加護」「ワイトの加護」
状態:「興奮」
個体情報:ワイトに見初められし者。もとはただの聖戦士(間者)だったが、ワイトの加護と聖凱を賜り、神兵たる戦女神に昇格した。それに伴い炎・水・風・地の4大精霊から加護を受けた。
たぶん明日には進化完了。
ごめん、リーナさん。
人間やめさせちゃったらしいです。
でも、特に悪いこと無いからいいよね?
内緒にしてても、いいよね?
てか、鎧上げただけで人間やめるとか誰も思わねーよ!
石仮面じゃねーんダぞ!
はぁ、どうしよう……。
依頼終わって帰ったら謝ろう……。
気付くと、どちらが先に100匹目を吊り上げるかの勝負に燃える2人がいた。
とりあえず、依頼は終了かな?




