14.南の森
やっと冒険に出られた。
14.南の森
薬草採取にウィンダズを出て、サウスランス王国の森にやってきた。
時間は日が暮れたころ、夜行性の魔獣が活動を開始するころだろう。
まぁ、おれたちには関係ないんだけどね。
「周囲に人影なし。
創造・シェルター」
地面に鈍い光沢のドアが出来る。
開くと階段があり、下りていくと中はワンルームでキングサイズのベットが置いてある。
トイレは水洗だし、フロもある。
ずっと空の旅だったので、今まで使われなかったこの魔法だが、ようやく使うことができた。
「あいかわらず、常識はずれな魔法を使うのね。
でも、こんな良い寝床で寝れるなんて思わなかったわ!
王女さまでもこんなベットは持ってないでしょうもの!」
「りりーもねれるー!すごーい!」
そりゃそうだろう、わざわざ地球で最高のベットを全知で確認して創造したんだから。
リリーも寝れるように魔法も付与されてるしね。
清潔を維持する魔法が掛かっているから、オネショしても尿が消えます。
汗かいても布団が湿りません。
つまり、常にサイコーの寝心地なわけです。
あぁ、睡眠不要の自分がうらめしい。
リーナのために目覚まし時計もセットしました。めっちゃうるさいやつ。
おれはリーナとリリーが起きるまでスキルの研究でもしているか……。
全知がほんとに曲者なんだよなー。
なんか、ほしいとこピンポイントで探るような、丁度いいスキルないかな?
こうして夜は更けてゆくのです。
「われ、悟りを開いたり」
「ぅんぅ、ワイト?おはよう」
「おはよう、リーナ。
よく眠れたかい?」
「ええ、最高の寝ごことだったわ……。
ところで何をしているの?」
「スキルの研究をしていてね、今しがた、宇宙の真理を解き明かしたところさ」
「そ、そう、よかったわね。
ところでいつになったら、元にもどるの?」
「あぁ、今戻った。
やはり、全知というスキルは危険だ。
おれが俗物でいられなくなってしまう。
悟りを開いている間、リーナやリリーの寝姿を見ても何とも思わなくなってしまった。
だが今は大丈夫だ、肌蹴たリーナに大変興奮している」
「そう…、よかったわね。」
リーナは冷めて目でおれを見ている。
少し心地いい。
「おはよー」
リリーも起きたようだ。
リーナが支度をしたら薬草採集を始めよう。
今回、採集したい薬草はノルマの2種類40株以上と、この森での採取実績のある希少種の薬草4種だ。
ノルマの2種は群生地が知られており、そこが荒らされていないことの確認も含まれるらしい。
希少種の4種は実績はあるが、冒険者の報告のみが情報源のため有るか無いかは、正直なところ分からない。
しかし、複数回の採集実績はある以上、どこかにはあるのだと思っている。
ノルマ2種:なおり草、とれ草
下位ポーションの原料で10年以上、需要が増え続けている。
希少種4種:しなな草、わらい草、ねむり草、ふっかつし草
それぞれ、毒消し薬、精神安定薬、眠り薬、蘇生薬の原料で高価で取引される。
とくに、ふっかつし草は2年前に実績があり、この森を冒険者が埋め尽くしたそうだ。
その後、発見されていないので、ガセネタだったのでは?との意見も多いが、一部が独占しているためにもみ消されたとの主張もある。
蘇生を容易に出来るおれには、あまり関係の無い話ではある。
リーナは熱心に蘇生薬の話を聞いていたが、誰か蘇らせたいのかな?
あと、みんな「南の森」って言ってるけど、ここの名称は「北部大樹林」と言います。
王国にとっては北端にある森だからね。
生息する害獣は、魔浪、ゴブリン、ハイゴブリン、オーク、オーガと割と多種にわたる。
植物系の害獣と魔法を使う害獣が少ないため、ギルドでも初心者向けとされている。
しかし、大手クランでは、魔浪とゴブリンは数の暴力が発生しやすいため、2パーティー以上での探索を呼び掛けている。
「さて、リーナの実力を測るのも兼ねて、探索はリーナに一任しようと思っているが、どうだろう?」
「のぞむところだ。
ワイトこそ、スキルに頼り切っていては成長しないぞ。
せっかくの初心者レベルの探索だ。スキルなしの実力を測ってみてはどうだ?」
「ふむ、一理ある。
せっかくだから、スキルをある程度切ってのぞむとしよう」
「りりーは?」
「リリーはリーナについて行きなさい。
リーナが危なくなったら、魔法使ってもいいからね」
「ほんと!りーなあぶなくなれー!」
リリーの祈り(呪い)に反応して、矢が飛来する。
リーナは危なげなく矢を切りはらった。
矢の飛んできた方を見ると、粗末な皮鎧を着た男たちが見える。
狙撃後に視認を許すとは素人だな。
「動くな!こっちはおまえたちを包囲している!
有り金と装備とその女を置いて行け―!」
なんだ、野党か……。
「リーナ、任せる。
スキルなしの目視では、あそこの五人と崖上に3人、後ろに回り込んでいる最中のが2人だ。」
「賞金首かしら?」
「見るからに雑魚だ、有象無象だろう」
「うしろのふたりたべていい?」
「いいよ。でも死霊になったらちゃんと処分するんだよ?」
「わかったー!
いっただきまーす!」
その瞬間、後ろに回り込んでいた野党二人は死んだ。
「おいしくなかったー」
「大丈夫?おなか壊さないかしら?」
「たぶん、死神でも食わない限り平気じゃないか?」
のんきに話していると、気の短い野党がしびれを切らした。
「おまえら!聞いているのか!
有り金と装備とその女置いてけってんだろーが!
聞こえねーのか!このバカが!」
バカってなんでこんなに威勢がいいのだろう?
後ろの二人が死んだの気付いてないし。
鑑定もどきでも使えれば、逃げて生き延びることもできただろうに。
「上の3人はおれがやるから、前の5人をリーナに頼めるか?」
「ええ、あれくらいなら前の装備でも余裕よ」
1対5をチートなしで余裕とは、そういえば、まだ、リーナに鑑定してないや。
野党の処理が終わったらしてみよう。
崖上の3人は視認出来たので、ビームライフルで消し飛ばした。
ビームは不可視領域の光で作ったので、肉眼だと消えたようにしか見えないんだろうな。
リーナは走りながら、あげた魔弓で弓持ち2人をヘッドショット。
槍投げでさらに1人地面に縫い付け、抜刀、一太刀で2人の首をはねた。
人殺しには一切躊躇が無いことが見て取れる。
まぁ、そらそうだわな。
間者なんてやってたんだし、言い換えればこの世界のニンジャ!クノイチ!になるわけだ。
なんか興奮してきた。
「終わったわ。
そっちの首尾はどう?」
「すでに終わっている。
槍で縫い付けたのは、尋問するか?」
「もちろん。
敵に情けは禁物よ」
槍で倒した相手の急所を外していたのは、わざとだったんだね。
蘇生して尋問できるから、わざと生かすって発想が無かったよ。
「尋問は割と得意よ。
任せてもらっていいわ」
とりあえずお任せしました。
けっこうえぐいね。質問に答えないと指飛ばしていく尋問でした。
まぁ、リーナもリリーも楽しそうだったからいいか。
野党のアジトが判明。
テンプレどおり洞窟でした。めんどいので洞窟内部を真空にして外で昼食。
空気を戻して、内部を探索しました。
収穫は以下の通り。
各国の貨幣:183,020マグ。
粗悪な武具:12人分ほど。
食料:半月分。
薬草:ノルマ2種のなおり草、とれ草が合わせて100株以上。
希少種のねむり草が16株。
野党退治したら、依頼が終わりました。
用も無いのでとっとと帰ろう。
「工程は大分変ったが、目的のものは手に入ったし、帰るか」
「そうね、今からなら、門があいているうちに戻れるでしょ」
「かーえーるよー♪」
リリーの歌?を聞きながら帰りました。
薬草を持ってギルドへ。
「薬草の採集依頼を完了しました。
確認をおねがいします」
「承りました。収集品を持って、あちらの部屋に行ってください。
掛かりのものが、判定いたします」
案内された部屋は、先客も数人おり、成果を出来るだけ高くしようと掛かりの者と舌戦を繰り広げていた。
おれは、開いているカウンターに向かった。
リーナはリリーでギルドのフロントで待っている。
「よう!名もなき冒険者。
おれは、この判定部屋の室長のチャリティーだ。
ここは初めてだな?」
なんか、えらく見積が安そうな名前だ。
「ああ、初めての依頼だったからな。
成果はこれだ」
「おう、薬草の採集依頼だな。見せてもらおう。」
薬草を出すと、チャリティーは驚いた。
「あんた、元々の職業は薬師かなんかかい!?
とても初めての依頼で持ってくる量じゃないぜ?」」
隠す必要もないので、あったことを説明する。
「はははっ!初依頼でその規模の野党にあって生きて帰っているのも驚きだが、そのうえ、アジトまで行って巻き上げまで行うとは!
こいつはたまげた!
久しぶりに骨のある奴が入ってきたもんだな!」
おれは骨しかないけどね。
「そう言ってもらえるのはうれしいが、依頼の成果としての評価はどうだ?」
「ああ、ノルマに関しては、量は全く問題ない。ここ最近の最高記録だ。
だが、質がどれもあまりよくない。採取から日がたっているものも結構ある。
薬にする分には問題ないが、研究用には使えないから先方にもいい顔はされない。
判定基準は量だけだから、書類上の評価は最高だが、質のことはよく覚えておいてくれ。
で、問題は希少種のねむり草だ」
チャリティーは難しい顔をしている。
「基本的に、希少種は一本でもあれば値が付くんだが、昨日、群生地が確認されて値が崩れてしまった。
ギルドの方針としては、依頼を受けた時点での価値を保障したいんだが、この本数だと俺の権限だと少し厳しい。
申し訳ないが、明日また来てくれないか?
本来はこんなことあってはならないんだが、申し訳ない」
「かまわないさ、不測の事態はどこにでも起きうる。
冒険者でも、ギルドでもそれは同じだろう?」
「そう言ってくれるとありがたい。
なるべくよくなるように、上にも掛けあってみる。
今回はすまない」
「明日、昼前に来る。
そのあとは、次の採集依頼で西の港に行く予定だ。
乗合馬車の時間までには解放してくれよ?」
「わかった。そのようにしよう。
では、すまないがまた明日」
翌日。
「来てくれたか、こちらはウィンダズ南支店長のズラーだ。」
名は体を表すというが、ズラのおっさんが出てきた。
うれしくない。
「ズラーだ。今回の報酬についても不手際、誠に申し訳ない。
現在、ねむり草は最近探索された東のカルデラで群生が確認され、1株10000マグだった末端価格が、1株500マグまで下落してしまった。
ギルドの勝手な都合で申し訳ないが、今回の報酬は1株1000マグで勘弁してもらえないだろうか?」
宿代さえ賄えれば構わないこちらにとっては大した損ではない。
しかし、普通に生活のかかっている冒険者はかなり渋るだろう。
どうしたものか……。
「リーナよ、私は構わないと思うのだが、どうだろう?」
「今度、一度だけ討伐依頼を優先的に回してもらうってのはどうかしら?
町規模の依頼であれば、その程度の損は巻き返せるはずよ」
どうやら、ギルド側の用意した落とし所を射抜いたようだ。
目に見えて、チャリティーが安堵して、ズラーに横目で睨まれている。
「では、討伐依頼が解禁された暁には、初めの一軒の討伐依頼で今回の損を巻き返せるようなものを斡旋させていただきます。
ですので、今回のことはなるべく他言無用でお願いします」
「分かりました。
では、我々は出発の時間がありますので、失礼します」
こうして、おれたちの最初の依頼は幕を閉じた。
パーティー:アマテラス
ランク:ランク外
採集依頼:1/3
討伐依頼:不可
調査依頼:不可
初依頼:薬草収集
評価:最高
報酬:9000+16000マグ (基本報酬+特別報酬)
初めの討伐依頼を、ギルドより斡旋する。
依頼の報酬より、野党のお宝の方がずっと儲かったのはギルドには内緒だ。




