13.冒険者ギルド
13.冒険者ギルド
飯のにおいに釣られて起きた転生者イオリは、魂術を自分に使うことで精神を崩壊させずに保っていた。
小説おなじみのトラック転生で舞い上がっていたところを、邪神に突き落とされたようだ。
付いてくるか聞いてみたが、野良ネコとして悠々自適に過ごすつもりだそうだ。
なので、翌朝に朝飯を分け与えて、そのまま別れた。
おれもリリーも寿命がないから、そのうち会うこともあるだろう。
「よし、ではギルドに行くとするか」
「で、ワイトはギルドの場所は分かるのかしら?」
「リーナ、たのんだ」
「相変わらずね。
出た通りを町の中央に向かうと広場があるの。
そこにあるわ」
「しゅっぱーつ!」
リリーが起きたようだ。
広場に向かって光速で駆けて行った。
物理完全無効が無かったらひき肉ストリートができるところだったな……。
宿の前の通りのはメインストリートなのだろう。
馬車が行き来するが、両脇には店舗や露店がひしめき合っている。
そういえば、鎧をむき出しにしているのも変だと思い、適当なマントを買うことにした。
作ってもよかったが、この世界の一般的マントが分からないし、そもそも、おれはマントというものをこの通りで初めてまじまじと見た。
地球でマントなんかしてたら、フィンガーグローブ以上に痛いやつだしな。
通りの店を眺めながら、リーナと歩いているとリリーが戻ってきた。
「ワイト―、あれほしー」
どうやら、露店で気になるモノがあったらしい。
「どれだ?増やした金がまだあるから高いものでなければ買ってあげよう。」
「ほんと!あれー!」
リーナがほしがっていたモノは、果物ナイフだった。
きな臭い露天で若干臭い店主が愛想笑いを浮かべている。
「旦那!これをお買い求めですかな?
少々、そんなかわいらしい少女に持たせるには物騒なもんですが、お安くしときますよ!」
露店の商品はみな1000マグ前後の値段で大したものは無いが、全て魔法の力が感じられる。
どう見ても怪しいので店主ともども鑑定してみた。
店名:マーラ呪物店
店主:マーラ・ゴメス (下級悪魔)
種族:人型悪魔 年齢:142
性別:男
体重:37kg 身長:141cm
スキル:「隠密」「呪術」「話術」「飛行」
状態:「興奮」
個体情報:ウィンダズに出店して早30年、おもに呪物を取り扱う卸の会長で、露店は完全に趣味。小さい子供が好きで接客するとき興奮する。ただし、ロリコンではない。
ウィンダズ経済界では有名な紳士であり、18人の嫁と40人の孫を持つ大家族の大黒柱である。
商品名:呪いの果物ナイフ
スキル:「腐敗・微弱」「切れ味向上」
説明:虐待されたメイドが主人と心中したときに用いた果物ナイフ。
切った対象を腐らせる効果と鋭い切れ味が特徴。
これで果物の皮をむくと完熟になる。完熟のものは腐ってしまうので使用禁止!
見た目はすさまじくきな臭いが、かなりまともな上に、微妙に使えるアイテムだった。
1200マグで買った。
果物ナイフはリリーの予備武器になった。
ナイフ持った幼女の幽霊……。ありだ……。
そんなこんなで、冒険者ギルドに付いた。
時間はすでに昼前、ギルド内はガラガラだ。
まぁ、それを見越してこの時間に来たわけだがね。
とりあえず、暇そうな受付嬢に話しかける。
「冒険者ギルドに登録したい。3人だ。」
「ようこそ冒険者ギルドへ、本日は3名の新規の登録ということで間違いありませんか?」
「間違いない。」
「では、こちらの台にそれぞれ手を置いてください。
鑑定が発動しますので、抵抗なきようお願いします。
偽装などはご遠慮願っていますが、あくまでも自己責任でお願いします。」
おお!なんかハイテクだ!
みんなで手を置いた。
とりあえず、おれとリリーは人間に偽装しといたよ。
「登録料を合計1500マグいただきます。」
「王国銀貨15枚で問題ないか?」
「はい、問題ございません」
なんと、情報抜いてから金取るのか、ちゃっかりしてるな。
「こちらが個人カードになります。
紛失されますと、再発行は1000マグいただきますので、ご注意ください。
このままパーティーとして登録されますか?」
「よろしく頼む」
「かしこまりました。
では、個人カードに記載しますパーティー名をお願いします」
しまった。
決めてなかった。
「リーナよ、決めていなかったが何かアイデアはあるか?」
「急に聞くな!確かに決めていなかったな」
「りりーもきめてなーい!」
受付嬢はなれたものなのだろう。ほほえましそうな表情だ。
「お決まりになりましたら、お声かけください」
そう言って、事務仕事に戻って行った。
「さて、どうしたものか?」
「多くの場合はパーティーの目的にちなんだモノや、出身をもじった名前が多いと聞くけど……」
「わいとー、きめていいよ!」
リリーの丸投げ攻撃!
そのとき、ワイトはひらめいた!
「天照だ!」
「アマテラス?」
「あまてらす?」
二人ともキョトンとしてる。
「天照はおれのいた国の神様の名前だ。
太陽神で、理由は忘れたがひきこもって、部屋の前で宴会され敵になってのぞいたら引っ張り出された女神様だ」
「そんなのの名前でおまえはいいのか?」
「構わん、わりと好きな神様だしな」
「ひきこもるー!りりーもひきこもるー!えんかいするー!」
リリーは完全に誤解しているが、踊るロリ天使はかわいいから問題ない。
受付のおねいさん、よだれ垂れてますよー。
「すみません。パーティー名が決まりましたので、登録の続きをお願いします」
「わかりました。
では、こちらに記入をお願いします。
個人カードへの転記はこちらで行いますので、個人カードをこちらにお願いします。」
リリーがくるくる回ってる。かわいい。
「転記が終了しました。
カードをお返しします」
「ありがとう」
「では、遅くなりましたが、冒険者ギルドはみなさんを歓迎します。
規則で、ギルドについて簡単に説明させていただきます。」
それから、1時間くらいだろうか、リーナに聞いたことを簡単に説明され、依頼の受け方、評価方法、ギルドによるランク付けについて説明された。
依頼は採集・討伐・調査に分けられる。
信用にかかわるため、最初は採集の依頼しか受けられない。ちなみに扱いはランク外、試用期間みたいなものか。
採集依頼を3種以上完了すると、討伐が解禁される。この時点で最下級ランクになる。
討伐では倒した魔獣や妖魔によってポイントが加算され、1000ポイント程度で一人前と扱われる。
そこから先は、調査も解放され、任意の依頼を受けてギルドの評価を上げていく。
評価方法は公表されていないが、一定ランク以上は遠征といわれる3週間以上の長期間任務の遂行が必須と噂されている。
ランクは、ランク外が通称ノービス、討伐解放で最下級のビギナー、調査解放で一人前として、正式にランクHが与えられる。
ランクはSS,S、A、B、C,D,E,F,G,H の10ランクでDランクでベテランといわれる。遠征が必須と噂されるのはB以上で、多くのベテランはCに行けば引退後も貴族や富豪の警護として引っ張りだこだという。
ランクは、パーティー単位で管理される。
そのため、新規メンバーを加える際は、パーティーランクとランクが同じ、または高い者を加えなければならない。
これが、上位パーティーの補充の利かない理由だった。
ギルドとして、虎の威を借る狐は全体の信用にかかわるため、上位冒険者が引退せざるを得なくなったとしても譲れない規則だそうだ。
また、引退はいつでも構わないとのことだ。
説明が終わったのち、ウィンダズの各出口から1~2日程度で行える採集依頼を4つ受けてギルドを出た。
ちなみに、期限は全て無期限だ。
一般的な薬草や鉱石の採集依頼はギルドの在庫確保が主な目的のため、依頼自体後付けでも全く問題ないそうだ。
ちなみに、討伐の場合でも、討伐部位さえ持ってくれば後付けが利く。
ただし、特定の群れや個体の場合は取り合いになるので、依頼書の争奪戦だ早朝に発生する。討伐対象となった魔物は、基本の討伐報酬に加えて依頼の報酬がの乗るため、同じ労力で倍以上の報酬額となる。怨恨の発生が後を絶たないため、依頼を受けていないものが倒しても、依頼の報酬は出ない事になっている。
受付嬢の説明が終わるころにはすっかり昼下がり、屋台も空きだしただろう飯を買いに行くとしよう。
「食料を買いこんだら、宿代の節約も含めて、南門の薬草採取に行かないか?」
「構わないさ、ワイトが居れば移動も夜も問題ないんだ。
寝床さえしっかりした物を作ってくれるならどこだって行けるさ」
「それでも注意はしてくれ、おれはけっこう抜けている」
最近気が付いたんだが、リーナは戦士として考えている時は男言葉になるようだ。
まぁ、どうでもいいんだが。
「りりーもいいよー。わいとがいればいっつもおなかいっぱいだもん!」
手頃な幽霊が見つからないときは、あいかわらず、おれがリリーのご飯です。
「じゃあ、適当にリーナの飯を買いこんで出発するか。
時間止めてもって行くから熱い汁ものでもいいぞ。」
集落を出て昨日の宿までずっと保存食だったからか、リーナは大変喜んでいた。
「明らかに1月分はありそうな飯を買いこんだな」
「どうせ、問題なく収納できるのだろう?
ならばいいではないか、食料は必要になることはあっても不要になることは無いのだ!」
飯が絡むとリーナは若干だが人が変わる。
一度見た飯は創造可能だってことは黙っておこう。
きっと、町中の飲食店を回るはめになるからな……。
そろそろ、設定に矛盾が出てきそうで怖い。




