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召喚されて骨  作者: わいとー
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1.召喚された?

1.召喚された?


目の前が真っ暗になった。

風景が一変し、眩しいほど明るいパルテノン神殿を想像させる洋風な部屋で、制服姿の高校生2人と椅子に縛りつけられていた。


目の前にはありきたりな、すげー偉そうな態度と服着たハゲがいる。

「神官長、今回はまともな勇者が現れたんだろうな」


縛られていて振り向くことは出来ないが、俺たちの後ろに神官長なる者がいるらしい。


「この少年は光魔法と聖装備のスキルが、こちらの少女には竜召喚と解呪のスキルがございました。勇者と聖女を名乗らせるには十分かと思われます。」


どうやらいっしょに召喚された少年少女は、珍しいスキルを持っていたようだ。

で、おれは?


「そのさえない男はどうだ」


いや、おまえも大概だろ!ハゲ!

心の中で抗議していると、神官長が答える。


「それが……、神与のスキルブックにもないスキルがございました」

「ほう、それはいったい」


レアスキル!キタ―!!!!

おれは心の中で踊り狂っていた。

さぁ! 神官長よ、早く俺にそのスキルを教えてくれ!

今なら、この誘拐まがいの召喚も快く許してやれるぜ!


「はい、スキル欄には「何事にも慣れる」とあります。内容は鑑定しても全く分りません。

鑑定はスキルのなりそこないを鑑定しても内容は分からないとされております。おそらく習熟度系のスキルのなりそこないかと。」

「ようするに?」

「この男に価値は無いかと。魔力値もほとんどなく、次の召喚用の生贄にもなりません」


なんということでしょう。

まさかの屑スキル。これってこのまま処分されるパターンだよな。

何としても逃げなければ!


おそらく、場所を移して処分とか言い出すから、そこで何とか逃げを打って……


「では、使える男女は別室で洗脳。その男は処分だ。」

「受けたまわりました。騎士らよ、彼らを神託の間へ移せ。少年はステータスが高い、腱を切っておけ。」


あれー、こいつら慣れてる上に容赦なくね?

勇者にするとかいう少年の足の腱切りやがった。

少女漏らしてるし。


「この男には新薬のテストに協力してもらう。医薬長と処理班を呼べ。念のため、それまでは寝かせておけ、自殺されたらもったいない。」


一連の流れで確信した。

こいつら本物のクズで外道だ。

俺たちへの対処がもはや通常業務だ。

たぶん、召喚用の生贄がそろうたびにこんなことやってる……。


えっ、どうやったら生き残れるの?


「かの者に安寧なる眠りを―――スリープクラウド」

騎士?らしき全身鎧がなんか言ってる。

とたんに眠くなる、騎士って魔法戦士なのね。

とか思っている間に意識を失った。



バシャー!

冷たい。

水をかけて起こされたらしい。鼻に水が入っていたい。涙出る。


「検体3062号、覚醒を確認しました」

「検体覚醒。状態を確認せよ。」


検体っておれのこと?

3000超えてるって数多すぎない?


「かの者を暴く光―――オープンライト」

「報告せよ。個体名は不要だ。」

「報告します。

種族:人

性別:男

年齢:27才

身長:167cm

体重:70kg

状態:沈黙

以上です。」

「了解。薬師長は投与量を算出せよ」

「投与量は家畜の実験から算出しますと4mgで3秒致死量となります。どの量より試しますか?」

「まずは検証からだ、4mgにて致死時間を計測せよ。」


ちょっとまて、死ぬ前提でそれまでの時間を数えるって何用の薬?てか毒だよねそれ!

あと、ずっとしゃべれなかったの沈黙のせいだったのね。いまさらだけど。


「ライフサーチの発動完了しました。いつでも行けます」


行かないで――!行ったらおれ死んじゃうやん!ちょっと待とう!落ち着こう!

ああ、なんか落ち着いてきた。


って、おれが落ち着いてどーする。


「検体よ、この薬は我が国にとって大変重要なものだ。その開発に貢献できることを光栄に思いたまえ。この薬は無味無臭はもちろんだが、数秒で大型家畜を死に至らせ、しかも、死体も処理するという素晴らしい薬だ。これで我が教会にあまり協力的でない王族も間引きが容易になる。君はそんな尊い方たち用の薬を投与されるのだ。どうだ?幸せだろう。」

「薬師長、自慢はそれくらいにしておけ。試薬投与。」

「試薬投与します。計測開始1.2.3.4!・5!!…検体意識喪失!」

「生命反応、微弱ながらあります!」

「カウント続行、死後効果の観察も忘れるな!そっちが本命だ!」

「カウント!12!13!……18!」

「検体死亡!死後効果のカウント開始!」

「カウント開始します!1.2.3.4.5……」

「皮膚組織崩壊開始!筋肉組織液状化確認!頭骨露出!」

「52.53.54……」

「57秒で遺体白骨化!反応終了を確認!」


部屋に沈黙が訪れる。

視線は先ほどまで検体3062号と呼ばれていた男の骨があるだけである。


「薬師長、これはどういうことだ?なぜ骨が残る。」

「人間と家畜では魂の強度が意思を持つ分だけ異なると言われている。魔法薬は魂の強度だけ抵抗力が増す。投薬量を増やせばこの先の反応も正常に起きるだろう。」

「仮説は理解できるものだ、予定通り検体3080号まで使い投薬量を変えて実験を行え。」

「了解しました。この骨はいかように?」

「ほかの検体と同様に開拓村向けの集団墓地に埋葬せよ。表向きは殉職者だ。丁重に扱え。」

「承りました。」


その日、薬師長の仮説を証明するに足る実験結果が得られた。


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