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王都進発

 王都を敵軍が発したとの報告をうけ、

 急いでダンジョンを脱して公都の騎士団本部に向かった。

 すでにアマデウス公爵をはじめ主要メンバー・・・未来の嫁、舅、小舅が集まっている。


 場に到着してから周りを見渡したところおしなべて顔色を悪くしている。


「どのような状況ですか?」


「バルダー・グリュンハルツ伯爵を主将として、

 わかっている範囲で総勢2万程度です」


 アイリスがタブレットを操作しながら報告する。

 当初の想定よりも2倍から3倍強の軍勢が押し寄せてくるわけだ。


「各所に連絡を敵部隊の編制と行軍速度ロードス中央以外からの進軍経路があるかどうかの確認を」


 各所に潜らせた斥候部隊にトランシーバーで指令を送る。

 多少の改造を施してある違法無線とは言えトランシーバーの有効距離は決して長くない。

 あらかじめ、伝言による伝達システムにより、

 ここから数100キロかなたにある王都付近の斥候部隊と連絡を行う。

 多少のタイムラグは発生するが、この世界の常識からみると圧倒的なスピードでの情報伝達が行われる。


「王国は今年の麦の出来は壊滅的にひどいと聞いていましたが、

 よく、この数を出陣させてきましたね」


 苦笑いしながら各員に目配せをおくる。


 元々、王都を含め他貴族領に対してアマデウス領より輸出を行っている大穀倉地帯である。

 今回の件でアマデウス領からの各地への供給が完全に止まった上に、

 今年は歴史的な飢饉のために、

 アマデウス領への侵攻は行われないか、

 たとえ行われたとしてもそれなりの規模に収まると公爵家側は想定しており、

 1万を超えることはないと予想していた。

 情報では輜重部隊の規模は1万人規模であるということから、

 片道分程度の輜重量での強行軍なのであろう。

 一か八かとも思われるが、小出しに逐次投入するよりも、

 大戦力の一気投入は決して戦術的には侮れない策とも考えられる。


 実際のところの兵力比が6倍となるとまともに考えると常識的には勝てる範囲の戦力差ではない。

 通常城攻めでは攻め手は3倍必要になると言われているが

 それにさらに倍率2倍ドンではあるのだからな。

 戦力差的には絶望であるともいえる。

 籠城したところで地勢的にも援軍は絶望的である。


 ただし、常識的に考えればである。


 この戦力差は桶狭間の戦いでの今川軍と織田軍

 泗川の戦い戦いでの明と島津軍と同程度の戦力差ではあるので、

 戦史的にはまったく0の確率ではない。

 防御側の要因だけではひっくり返すのはなかなか困難な状況でもあるのは認めるし、

 異論も認めるが作戦の一本化だけは認めてほしいが、

 ただし一本化ができるのかは正直俺には予想がつかない。





 手筈通りに王国から公都の間の3か所の村の住民が避難できたかを確認をする。

 各村へは今年の秋麦の収穫後より住民に対する公都への移動措置命令を護民官より発令させ徹底させてある。

 同時に各村の備蓄食料、財産もすべて移動させた。

 村に残されているものは実質的には空き家だけである。

 ぶっちゃけると、村自体も焼き払ってしまうという手も考えたのだが、

 強制移動を余儀なくされた住民感情を加味するといろいろと問題は出るようなので、

 避難後に護民官により井戸および水源、路肩の側溝に汚物をたんまりと捨てる程度にさせておいた。


 どちらにせよこの世界の遠征軍の定石として、

 移動間の村々の備蓄食料及び領民等は略奪対象であったであろうから

 はじめから引き払った上で来襲する敵軍にはなにも渡さない焦土作戦をとった。


 まあ、これは敵軍の進発が収穫してからかなりの期間を要してくれたことが僥倖したことではある。

 現在の公爵領では一人ドラゴン征伐の連戦によって発生した闊達な資金があるため、

 戦後の復興資金についてはかなり余裕があるとの試算がでている。

 さらに、その副産物でドラゴンの素材を利用した武具装具も相当数軍部へいきわたらすことができたため、

 装備面では王軍をはるかに凌駕することができることができているらしい。


 食糧関連についても輸出ストップによるだぶついた食料が倉庫にうず高く積まれているため、

 領内での食糧等についても現状ではまったく心配をすることはない。

 2年程度の備蓄が現在はあるとのことだ。


 敵軍と自軍で比較すると数的優位は圧倒的に王国側

 補給兵站装備に関しては公爵側となるようだ。

 地の利に関しては一見すると地元の公爵側が優勢であるだろうが、

 領土の西側を魔王領に隣接し、ロードスの森を挟んで王国領

 南側を峻険な山脈、北側を海と東西南北を囲まれているため、

 四面楚歌の状態にあるため領民含め圧力に耐えられるかとの心配が残る。


 敵軍がロードスの森を全軍を抜けてくるまでには、

 おそらく最速でも1週間程度が必要な距離があるので、

 その間の各部隊行動を関係各部署へ伝達する。


 敵の行軍形態は前後に農民兵を主体とした歩兵であり中軍付近に騎兵と弓兵をおいているようだ。

 別働隊を出した形跡も確認されないため、

 ごくごくシンプルに公領を位押しで攻め入るということだろう。


 俺の見立てでは、森のロードスの街道筋全域に仕掛けを仕組んであるので、

 7日は通常行程よりも遅れるだろう。

 軍隊規模から考えれば2週間程度遅れることも想定されので、

 ロードスを全軍が抜けて布陣するまでに

 2から3週間の行軍を王国軍は余儀なくされるだろう。

 その間にどれくらい敵にダメージを与えられるかだな。


 とはいっても、決して闊達とは言えない兵站状態から考えると、

 かなりの強行軍で来るだろうから、

 それなりのエンカウント率でこちらの仕掛けにも引っかかってくれるだろう。



長いこと間をあけてしまい申し訳ありませんでした。

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