シミュレーション
ただのゲームをやっていただけなのに
なにか、盛大に勘違いをしたうえにキラキラとしたまなざしを向けてくる。
やばい、まぶしい、このまなざしを曇らせてしまうとは・・・
「い、いや違う違うって」
「それならば、軍師様ですね」
斜め上に来たー、根本的に軍師なんて役職はねーよ!
猛烈にあせる。
「お・・おちつこうね、アイリスさん」
ち・・・ちかい、ちかいよ、いい匂いだよ、こんな入浴設備も適当な世界なのになんでこんなにいい匂いなんだよこの娘は・・・
ある意味謎現象だ。
夜とか同じ部屋で寝ているだけでもあれなのに、
おじさんハッスルしちゃうよ!
いあ、違うおちつけ、おちつけ、俺。
「おちつけません、父は父様は王国側との紛争が始まってからずっと公爵様の屋敷につめられているんです。
こんな勝てるはずもない戦をなんとかするために」
そうか、だから副ギルド長が代行という形で運営しているのか。
アイリスの父であるアルスバーンは当代随一の魔術師でもある、
魔力総量では現筆頭宮廷魔術師であるアイゼナッハ・シュバルツ子爵に劣るが、
制御、知識、行使する属性数ではアルスバーンが上回っていると言われており、
かっては次期筆頭魔術師は彼だと世間では言われていたらしい。
そんな彼ではあったが20年ほど前にある事件の共犯(のちに冤罪と判明したが)とされ、
それが原因で王都を離れここアマデウス公領に
当時身重の妻のカルラとともに移り住んできたらしい。
とにかく、実際の駒を動かしながら説明する。
「あくまで、これはゲームといって、
疑似的な世界をシミュレートしてやる遊びみたいなものだから」
まだ中途半端なマップだがテストモードで両軍のユニットを適当においていく。
このALL warの模擬戦モードでは各部隊毎にそれなりの命令をあらかじめセットしておけば、
後は勝手に戦闘決着までをシミュレーションしてくれる。
「もちろん、俺は将軍でも軍師でもないただの一般庶民なの、
俺たちの世界ではこういった遊具は割と普及していて俺はどちらかといえば別方向がメインだったけど、
ここら辺りのゲームもたまーにやっていただけなんですよ。」
どんどん、アイリスさんがしょんぼりと落ち込んでいくと同時に、
俺との距離がいつもの距離に離れていった。
「そ・・・そうですか・・・・申し訳ありません」
やばい、泣きそうだ・・・
普段はクールそうなアイリスさんなのにどうしたらいいのか・・・
しつこいようだが実年齢=彼女いない歴の俺にはまったくわからない。
「なにか、期待させてしまったことについては謝らせてほしい。」
「いえ、こちらこそ勝手に騒いでしまって申し訳ありません」
画面上ではちまちまと小さなユニットがうごいて散発的な戦闘が行われている
AI設定をほとんどやっていないので俺から見るとただ動いているだけの状態だ。
都合のいい話ならここらあたりで神でも降りてきて必勝の策とかが思いつくと思うんだが、
残念ながら俺のスペックではなにも思いつかない。
所詮低いINTということか・・・
リアルステータスくそだな。
「なぜ、この部隊たちは森林で戦闘しているのですか?」
そんな疑問を俺に投げかけてきた。
なぜ、森林で戦闘していると言われても普通に戦闘しているだけじゃないかという認識だが・・・
あれっ、なにかがカチっとひっかかった。
気が付いたら貫徹していた。
クール系美少女と貫徹、前世だったら考えられないシチュエーションだ。
んっ、転生でなくて召喚でも前世でいいのかな?まっいいか。
「アイリスさん、昨晩言っていた森林での戦闘の時に不思議そうな顔していたのはどうしてなんですか?」
「あ、あっはい、ロードスの森を軍隊が行軍すると街道を馬車だと2列くらいで行軍するじゃないですか。」
ふむ、太い場所でも馬車が2台すれ違えばいい程度の道があるということか。
なるほど、おそらく2000~3000人程度の縦列行軍になるな。
ただ、この世界だとおそらく通信系が良いところのろしか笛か伝書鳥系くらいしかないだろうし、
魔法での伝達とかはなかなかできないということか。
ん、それならばあれで行けるんじゃないかな?
通信手段はトランシーバー撒けるだろうから、
こっちはなんとかなるかなと最悪途中でリレーすれば・・・
「ミ・・・ミツオさん、なんか百面相してちょっと不気味ですよ」
ジト目でアイリスさんがひどいことを言ってくる
「ああ、すみません貫徹後でちょっとぼうっとしてしまいました。」
まあ、しょせん作戦畑じゃないわけだし、俺が浅知恵だしても混乱するだろうから、
適当にはぐらかしておこうか。
「大丈夫ですか?今日の狩りはやめておきましょうか?」
貫徹後なのに普通に狩り行くつもりだったのか
まあ、2~3徹ならこっちも問題ないけどね。
「いえいえ、大丈夫ですよ~、まずは朝食をたべてから行きましょう」
「はい、今日も頑張りましょうね!」
うん、やっぱり、愛想笑いでさえも笑うとかわいいな~
などと、ついよこしまなことを考えて、
さっきまでの思考を中断するおれであった。
あけましておめでとうございます。
昨年は稚拙な小説を読んでくださってありがとうございます。
今年も不定期ではありますが更新したいとおもいますので、
よろしくお願いします。
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舞い上がります!




