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お嬢様、君主様に謁見する


「あー、ちょっと出力の調整が大きすぎますね。まさかこんなにすごい破壊力になっちゃうとは」


 とレイトの報告。これではゾンビから進化したメフィットが居たとしても、気付かないうちにお星様になっていただろう。


「ま、楽に済んだんだし、これはこれでいいと思うけど……どうする? その大砲の調整、もうちょっとした方がいいよね?」


「そうですね、今の破壊力で、どれだけ大砲自身に負担がかかったのか、調べた方がいいかもしれません。強すぎて大砲が耐えきれずに暴発したら怖いですから」


「うん。なんだかね、あんまり強すぎる武器ってのも、持つのは怖いんだよね」


 私がそう言うと、横でレイカーが小さく笑った。


「何? おかしかった?」


「いえ……自分は海賊バッドフィンガーの船に悪魔トレイマスが来てから、殺された元船長の仇を討つ事ばかりを考えていました」


「あ、前の船長は、トレイマスに……」


「はい。そういう話をするのもどうかと思い、黙っていた次第です。今は、船長がかみる様で良かったと思ってます」


 強い破壊力を持つ武器の持つ魅力に取り憑かれる者は多い。大人しい人でも銃剣を持つとその力を使いたがったり、或いはその力に頼ろうとする。しかし、本人がその力を支配下におけずに振り回されるだけなら、いつか持った武器によって自分自身が傷ついてしまう事だろう。だから私は、自分の支配の及ばない物を持つ気は無かった。


「そう、ありがと。愛想をつかされない様に頑張るね」


 無骨な海の男に褒められるというのも悪くなかった。


「では、トラスホープに戻ります」


 無事、ゾンビ船を”粉砕”し、処女航海を終えたガスター号は、ちょっと強すぎる大砲を調整する為にトラスホープへと戻った。ユミルが調べてみると、案の定、魔力が過剰供給されていて、常に最大出力になっている状態だった。その原因はルーゲンフォークから仕入れた部品に原因があるという事で、ユミルは直接ルーゲンフォークに行って部品を調達したいと言った。


「多分、知識のない人が相手だと思って、安物を売りつけたんだと思うんです。私がきちんと言って、そのような事をさせません」


「うん、じゃ、次はルーゲンフォークにおつかいだね」


 と、街乗り軽自動車の感覚でガスター号を乗り回し始める私だった。

 問題はユミルも言っていた様に、ルーゲンフォークに飛空艇の発着所があるかどうかたったが、行ってみると、以前は私達が行けなかった、君主様の城の上に発着所がある事がわかった。

 ガスター号が近づくと、城の尖塔の上から、ガスター号に向けてだろう、光が明滅するのが見えた。現代でいうモールス信号だろうが、私はよく知らない。


「私が返事をします。見張り台に連れて行ってください」


 と言われ、メルリエルがユミルを連れて見張り台へと上る。そして光同士の信号で応答した後、メルリエルが近づいて良いそうです、と甲板上の私達に伝えた。

 発着所はとても良くできていて、光の指示にそって船を動かしていくと、きちんと停泊できる様にコースが作られていた。レイカーも特に問題無く簡単そうに操縦を行い、そして君主様の城の上にそびえる尖塔へと到着した。


 発着所には折りたたみ式の渡り板があり、ガスター号が接舷すると、それが伸びてきて、衛兵達が乗り込んでくる。


「初めてお目にかかります。入国管理局のヘルメンと申します」


 と丁寧に挨拶してきた男は、貴族らしく豪勢な衣装を来ていた。


「入国管理局のルッチェさんは、別の担当なんですか?」


「ああ、ルッチェは船舶の担当でして、飛空艇となりますと、我々の様な身分の確かな者でなければ失礼にあたりますので」


 彼の言葉を要約すれば、飛空艇は金持ちの乗り物らしい。


「失礼ですが、こちらの飛空艇はとても素晴らしい特別製の船に見受けられますが、どちらの造船所で作られたものなのですか?」


 と聞かれて、私は即答できなかった。元海賊の島にあって、それを修理した、とは言えない。ルッチェさんの話では、海賊は即時攻撃されるという事だったから、そんな事を言ったら私達は間違いなく敵視される。


「えっと、中古で壊れていたのを手に入れて、自分達で修理したんだけど……」


 となんとか誤魔化そうとしたら、ユミルが助け船を出してくれた。


「アーティファクター国の造船所にて作られた物です。私はアーティファクターの第四王女のユミル・レンベルクです」


「ここ、これはレンベルク王室の方でございましたか。どうかご無礼をお許し下さい」


(ほー……やっぱり王女様なんだ……)


 身なりはただのつなぎを来た作業員なのだけれども、それでもこの貴族は名前を聞いて深く頭を下げていた。


「レンベルク家ってそんなに権力があるの?」


「ああ、いえ……飛空艇や魔力発電では世界一の技術を持った国なので、皆さんが気を遣ってくれるんです」


 そうユミルは控えめに答えていたが、相手が露わにした畏怖心はただ事ではなかった。


「船長の西迅かみるですが……今日はちょっと買い物に来ただけなので、下船を許可して貰えますか?」


「はい、今すぐ。こちらの必要書類に船長のサインをいただけますでしょうか」


 ルッチェさんも同じ皮紙を出してきたが、これはどこの世界も同じ作法なのだろう。

 西迅かみる。とサインをすると、お決まりの質問をされた。


「シンの国のご出身でございますか?」


「ニホンという国です。ずっと遠い所から来ました」


「ああ、左様ですか。ニホン、ですか」


 この世界にニホンなんて国があるかどうかは知った事ではなかった。

 もう、なんか、こういう面倒臭い事は、全部適当でいい。


「では、どうぞ……申し訳ございませんが、キャプテンかみると、出来ましたらユミル王女は我が君主にご挨拶をいただきたいのですが


「ああ、うん。そうだね。無視は失礼だからね。挨拶するよ」


「ありがとうございます。君主様のご準備は出来ておりますので」


 ヘルメンさんと護衛の騎士に連れられ、私達は尖塔の中にあるエレベータにのった。この時、私はこの装置をエレベータだとすぐに理解したのだが、他の連中は驚いていた。


「ゆ、床が落ちちゃう!?」


「わわ、大丈夫なんですかこれ?」


 レイトとマイシャが慌てていたので、初めての時はそうかもしれなかったかなぁ、と自分の小さい頃を思い出していた。このエレベータも魔力発電によって制御されていて、飛空艇が安全に発着する為の尖塔へ昇る為に、わざわざ作られた物だった。


 彼らはこれを昇降機と呼んでいて、それが一番下まで着くと、お城の中の廊下に通された。ハウプトブルクと同じく、綺麗で質素な作りの城の内装を見る限り、どうもこの世界ではこれが普通らしい。現代の私達の国では、ありとあらゆる所に綺麗な彫刻が施されているのが、王様の住むお城というイメージがあった。

 少し灰色がかった白い柱と壁の通路を通り、大きな木の扉を開けると、謁見室に入る。謁見室は小さめで、すぐ目の前に若い男性の君主が座っていた。

 君主はヘルメンさんから署名の皮紙を受け取ると、それを見てから挨拶をする。


「初めまして。私はこの街を統治させていただいているレッドウッドです。王女ユミル様、キャプテンかみるどの、ようこそいらっしゃました」


「以後、お見知りおきを、ロード・レッドウッド」


 とユミルが丁寧な挨拶をしたので、慌てて私もならってお辞儀をする。



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