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お嬢様、仲間を捕獲する


「難しい話はやめて、簡単に言うと、その黒幕も大した事は無いからスニーカーズ達をやっつけちゃおう」


「でっ、でも、相手はオーガーがボスで、その他にオークやバグベアー達も居て、かなり手強いですよ」


「…………」


 知らない単語が出てきたので、モンスター辞典を調べる私。


 オークは、筋肉マッチョな人間って感じ。バグベアーはクマ人間らしい。


(要するに脳味噌筋肉軍団か……)


 幻術師メルリエルが魔法を使えば、簡単に騙されてしまうんじゃないだろうか。

 いや、既にそうなっているとしたら?

 このスニーカーズがメルリエルを好きにさせているのは、手が付けられないからかもしれない。


「あ、いい事考えた」


「かみる様、良い策が思いつきましたか?」


「ああ。レイト、ちょっとこの金で、メルリエルという娼婦を買ってきて」


「えっ……でも、俺なんて簡単に幻術にかかってしまいますよ」


「それが狙い。もし幻術を使ったなら本物だから、私とマイシャが捕まえる」


「もし幻術を使わなかったら、それはニセモノだから、その先はお断りする事」


「お、お断りしなくても……どうせ前金で払うんですし……」


「私が見ている前で、他の女とそういう事をするのね? もう結婚の話はなかった事にしてもいいのね?」


「いっ、いえ! かみる様と結婚できるのなら、なんだって我慢しますよ! わかりました! イイ事してあげるって言われてもお断りですね!」


「よし、頼んだぞレイト!」


 私がレイトの肩を優しく叩いてそう言うと、レイトは敬礼をしてからアジトを出て行った。


「……良いんですか? レイトさんと結婚するつもりとかあるんですか?」


「無いけど……まぁ、キスぐらいはしてあげてもいいかな、ってぐらいには思ってる」


「ものすごく妥協されたんですね」


「わかる? 分かってくれる? さすがに何でも頼みすぎだなっていう気持ちもあるの」


「でも、なぜか全く異性として興味を惹かれないんですよねー……」


「わかる! 分かるわその気持ち!」


 要するに女にとって都合の良い自己弁護をお互いに話していたが、今回の場合はちゃんとレイトを見張ってないといけないという事に気付いて、慌てて私達もアジトを出た。




「あー、鼻の下伸ばしてるなー……」


 歓楽街の道をいったりきたりしながら、レイトは娼婦の品定めをしていた。

 そんな事をした所で、どの娼婦がメルリエルなのかなんて分かりもしないのに、見た目で決めるつもりなのだろう。メルリエルは金が目当てで詐欺をしている以上、金持ちを狙うだろうし、金持ちに買ってもらう為には、それなりに美人でなければいけないだろう。


 だからレイトには分かりやすいように金の腕輪と似合わないネックレス、それに小さいが本物の宝石の指輪をいくつかさせている。これも亡きワイン屋のオヤジがたんまり溜め込んでいたおかげだ。きっと仇は撃つ。でもワイン屋のオヤジの為ではないし、オヤジが成仏しようがしまいがどうでもいい。


 とにかく美女だ。そして金目当てっぽい女。レイトは二時間近くも品定めをした後、ようやく一人の女性に声をかけた。


「すいません、この辺りで一番高い方ってどなたですか?」


「……あんた誰? ぽっと出の兄ちゃんが高級娼婦なんか買えるわけないでしょ。こっちも命がかかってるんだから、身元が分からない男の相手なんかしないよ」


 と素っ気なくお断りされてしまった。


「あいつはバカか! メルリエルが高級娼婦な訳がないだろ。詐欺が目的なのに一見さんお断りの世界で仕事するわけないじゃないの」


 と、ここから怒っても仕方無かった。しかし、そんなレイトに一人の女性が声をかけてきた。


「私なら、お金に見合っただけのサービスをしてあげるわよ?」


(まさか……レイトはこれをねらって? そこまで頭良い男なの!?)


 その時、私は一瞬だけ、レイトに対して悪かったという気持ちをもった。しかし、その娼婦に金を払ってみたら、ごく普通にイイ事をされそうになったので、レイトは慌ててご免なさいをしていた。


「なにそれ、どういう事? こっちもお金を貰った以上はプロなんだから、最後まで仕事をさせなさいよ」


「本当にごめんなさい。ちょっと、今、急に体調が悪くなっちゃって」


「はぁ???」


「すいませんでしたー」


 安宿の個室を飛び出したレイトは、そのまま別の路地へと駆け込んでいった。

 初日からいきなり当たりは無いか。と思った時、同じ宿屋の二階から、女が宙を飛んで逃げ出したのを見た。


「あれ、もしかして当たりじゃない!?」


「追いかけましょう!」


 周りからは特に怒りの声は聞こえてこない。あの逃げた女が幻術師なら、今頃被害者は夢うつつ状態だろう。


 狭い路地から表通りへ出た女は、そのまま歓楽街を離れる方へと逃げていく。スラム街の方だった。

 夜、この明かりのない狭い路地裏に入られては、追うのは至難の業だった。私には殆ど道が見えなかったのだが、マイシャには見えているらしく、目標を追って走っていく。


 途中、左手の壁が突然白く光ったので、何事かと思って立ち止まると、マイシャが魔法を唱えた。


「ブレイクエンチャント! 幻術は効きませんよ!」


 マイシャが二回目にみせた僧侶っぽい魔法だった。その呪文によって壁は消え、通路が続いている。その奥に、下水道へ入るマンホールがあった。


 その蓋を開け、下へと通り、逃げていく足音を追いかける。

 一度、二度、下水道を直角に曲がり、S字カーブの狭い道を抜けた時、広くて真っ直ぐの道に出た。


「いただきっ!!」


 私は腰に差していた二本のクナイを抜くと、ダーツよろしく、逃げる女に向けて投げた。狙ったのは当然、身体ではなくスカートのすその部分。


「あっ……」


 見事に服の裾を床に縫い付けられた女は、びりり、とスカートが避けてしまい、下着姿になって、その場に蹲った。


「何者ですか? 私をメルリエルと知って追ってきたのでしょう? 今までに被害にあった誰かの依頼ですか?」


「……おっおっ? この女……すごい美人じゃない!?」


 マイシャが魔法の光を召喚して、女の顔を照らしてみると、幻術など使わなくても十分なぐらい、綺麗な顔の線をした女性だった。綺麗、という点では私は負けていたが、可愛い、というジャンルでは負けていないぞ!


「悪いね、メルちゃん。ちょっと大切な用事があるんで、一緒に来てちょうだい」


「殺すならここで殺しなさい! 覚悟は出来ています」


「じゃあ死ね。意識だけ」


 私は彼女の身体をぐい、と持ち上げると、そのみぞおちに一発入れた。

 わりと難しくて成功率は50%ぐらいなのだけど、今回は綺麗に気絶してくれて良かった。


 意識を失ったメルリエルを連れると、私とマイシャはトラスワンのアジトへと戻る事にした。レイトは放っておけばそのうち金が無くなって帰って来るだろう。

 下水道からアジトまでは、どうやっていけば戻れるのか全然分からなかったので、一旦地上に出てから、いつものマンホールの所まで戻った。


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