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7「船路」

長らく更新を止めてしまい申し訳ございませんでした。


更新再開にあたり、これまでの文をかなり修正いたしました。設定も大きく異なる部分がありますので、ぜひご確認ください。

主人公の武器が十刀流からただのナイフ術になったりしております。

「ん……う~~ん……」


 暖かい朝日を浴びて俺は目を覚ました。

 体を起こして伸びをする。

 うん、すっきり爽快爽やかな朝だ、流石レティが選んだ宿屋だな!


 ここはラピスラージの港にある人気宿屋、「流宮城」だ。

 どこかのカメさんを助けていける城の名前とよく似ているが、どこを探しても似たような点は見つからなかった。名前だけかよ……。


 寝ぐせでぼさぼさになってしまった黒髪を触りながら隣を見ると、そこにはすでにレティがしっかりとメイド服に着替え、とてもいい姿勢で立っていた。

 早朝なのに完璧なメイドさんは違うね、やっぱ。


「おはよう、レティ」

「おはようございますハル様、すでに下の食堂にて朝食をいただくことが出来ますが、どうなさいますか?」


 この問いは朝食前に何かやっておくことはあるかという質問だろう。

 ぶっちゃけ結構空腹だから、早めに食べたいところだ。

 別に早朝からやんなくちゃいけない事なんてないしね。


「顔洗ったらすぐ行こう、お腹ぺこぺこだ」

「かしこまりました」


 俺はベッドから飛び降り、部屋の洗面所へと向かう。

 ついたら顔面に水魔法によって生み出した水をたたきつけて顔を洗った。

 そのまま少しの水で髪を湿らせ、風魔法と火炎魔法をドライヤーの代わりにし、寝癖を直した。

 

 洗面所から出て、畳んでおいた冒険者風の服装に着換える。

 

「それじゃ行こうか」

「はい」


 俺達はついに音を立て始めたお腹を満たすため、食堂へと向かった。

 ……音を鳴らしていたのは俺だけだったけれど。


 宿の食堂へ向かうと、とてもいい匂いが漂ってきた。

 朝から大音量で鳴る俺の腹にさらなる発破をかけてくる。


「はいお待たせ! おかわり自由だからね!」


 流宮城の料理人は日本で言う本物の食堂のおばちゃんといった感じだ。

 豪快に出された料理は、あっさりとした野菜のスープ、ベーコンエッグに焼きたてのパン。

 食堂のおばちゃんから生み出されたとは思えないくらい丁寧な味付けがされていて、手をしばらく止めることができないほどに美味い。

 レティも気に入ったようだ。





「いや~レティが選んでくれただけはあるな。いい宿だったよ」

「ご満足いただけたようで何よりです」


 お昼前に準備を終え、宿を出発した俺たちは今、港の船着場を目指していた。

 

 この港から出る船は昼の便と夜の便の二つで、さらにそれらはアージスト行きとエメラード行きと二種類あるので、系四回しか船が来ない。

 まあ片道一二週間近くかかるから、その長さを考えれば逆に頻度は多いのだろう。

 道中補給の目的で島に停泊することもあるだろうから、その長さも一概には言い切れないんだけどね。


「あの便ですね、すでに到着しているようです」

「あ、ほんとだ」


 遠くに見える港に停泊しているのは、日本で客船と呼ばれそうなほどの大きさをほこる船。

 あれは乗客のキャパも相当なものだけれど、その他に貿易品などをやりとりする場合にも使用されるとなれば、あの大きさが必要なのも頷ける。


「昼の便、「アージスト行き」でお変りないですよね?」

「うん、行こう」


 まだ船にすら乗ってすらいないけれど、俺はこの時点で行ったことのない大陸、アージストに期待を膨らませていた。

 やっぱりどの世界でも、旅行ってのはワクワクするものだね。




◆◆◆

「この世界の海もやっぱりあっちの世界と変わらないんだな……」


 アージスト行きの便に乗り込んで早数時間、俺はボーッと船上から海面を眺めていた。


 船の上から見る海の光景が、現代日本で同じようにして見た光景と酷似していてなんだか考え深くなる。

 この前は船じゃなくて飛んで海を越えたからこんな感情にはならなかったんだけどね。

 ちなみに飛行機に乗ったことはありません。


「何をしてるのですか?」

「んー……別になにもしてないよ?」


 声のした方に振り向くと髪を風でなびかせたレティが背筋を伸ばして立っていた。

 姿勢がいい人ってなんでこんなかっこよく見えるのか……。


 俺はそんな彼女になんとなく質問を投げかけた。


「レティはさ、アージストに行ったことってあるの?」

「アージストならば何度も行ったことがあります。とても友好的な人間種が多くて過ごしやすい所ですよ」

「へぇ……」


 ぶっちゃけアージストに行く理由はなんとなくだったから、そういう情報は仕入れてなかったな。


「魔王様が基本的にどの街でも友好関係を作ってくださったおかげで魔族への偏見もほとんどありませんし、大きな街であれば面識のある店は何軒もございます」

「さ、さすがは母さんだ……」


 ここ数年であの人の友好関係はとんでもなく広いことは知ってたけど、人間には受け入れがたそうな魔族の見た目すら受け入れさせるほどとは……。


「ですがこの先エメラードへ行くとなれば、あの国の王の影響で偏見がまだ多いので、注意が必要ですね」

「王の影響?」

「はい。あの大陸の王であり、王都「ハルナンド」を統べるハルナンド国王はあまり魔族に良い感情を抱いておりませんので、王都に暮らす魔族はほとんどおりません。よほどのことがない限り王都に住まわせてはもらえませんので」

「なんだってそんな……」

「魔王城のあるラピスラージ大陸には貴重な資源や鉱石が多くありますからね。強欲で有名なハルナンドの王であれば自分のものにしたくてたまらないでしょう」


 ――――――――なるほど。


「で、手にするためには俺たち魔族が邪魔だと……」

「その通りでございます」


 そいつは随分と強欲なやつだ。


「貿易じゃ満足できないのかな?」

「すべて自分のものにしたい、それが権力という力を持った人間の醜い部分だと思われます」


 ごもっともだ。

 そういう歪んでしまったやつもいるんだな……エメラードに長く滞在するときは気を付けよう。

 そういう人たちは漫画や小説でろくなことをしないからね。


「ま、そういうことなら行った時に近づかないようにしようかな」

「懸命なご判断かと」


 何が起こってもぶっちゃけ武力で解決すればいいや精神ではあるけど、魔族の不利益になることは避けたい。

 王都の街並みは気になるところだけど行かないに限りそうだ。


 その時強めの風が駆け抜けていき、俺は軽く寒さを感じた。

 ちょっと長く外に居すぎたかな?


「戻ろうか、レティ」

「かしこまりました」


 レティを引き連れ、船内に向かう。

 

 ――――――――この後、特に何事もなく船は予定通りアージストに到着するのだけれど……。


 そこで俺たちは予期せぬ人に会うことになる。



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