プロローグ「魔王の息子」
この度更新を再開した魔王の息子は転生者?ですが、再開にあたり大幅な改変を施しています。
主にキャラの名前や、細かい話の流れなど、話を読みやすくするために変えてみました。
気分的には新作としてお楽しみいただけると幸いです。
……梅雨のせいで大雨の降る平日の午後、夏突入とあって大雨というのに蒸し暑い。
しかしこの俺は雨の天然シャワーを全身で浴びている。少し温いくらいの水滴が止めどなく全身を打っ てくる。
程よく涼しいおかげで蒸し暑さなんてどこ吹く風だ。まあ風は吹いてないんだけれど。
で、何で俺は雨を全身で受け止めているんだ?
雨にあたっているということは、傘をさしていないということだ。
……俺は自分でも知らないうちに水も滴るいい男になりたかったんだろうか…
冗談はさておき、速く傘をさすか家に帰らないと風邪をひいてしまう。
えっと……俺の傘は……
……何だ、持ってるじゃないか。
俺はしっかり手にひしゃげた傘を握っている。
もう片方には高校の学生鞄も。
知らず知らずの内にアホの子になっていたとは……自分が恐ろしい。
さて、早く傘をさして家に帰ろう。
温かいお風呂が待っている。
……あれ、全然腕に力が入んない。
ちっとも腕が上がらない。
いくら力を込めても。
……と思ったら、腕が変な方向に曲がっていた。
手が上がらない訳だ、ポッキリ逝っちゃってる。
そんなことに気付いた時、遠くの方が嫌な音が聞こえ始める。
だんだんと大きくなるそれは、一週間に一回くらいは耳にする、おなじみの救急車のサイレンだ。
俺はこの音嫌いなんだよな。
早く行ってくれないかな~なんて思っていると、それは俺のすぐそばに止まってしまった。
ってここよく見たら車道じゃん……俺何してんだろ?アホの子にもほどがある。
止まった救急車から、白い服を着てタンカっぽいものとか箱っぽいものを持った人たちが下りてくる。
そういえば数年前、俺の両親が歩道に飛び込んできたトラックから俺をかばって轢かれた時も、あんな 風に人が下りてきたっけ?
今度は誰が轢かれたんだろう。
あ、別に轢かれたとは限らないか
何て考えて間もなく、白い人たちは俺のすぐ近くに駆け寄ってきて、体をまさぐり始めた。
男に触られる趣味はないんだけどな……。
そしてすぐに体を持ち上げられた。
あれ? 俺運ばれてる?じゃあ怪我してんのってもしかして俺? え、轢かれてんの?
確かに腕は変な向きになってるけど……よく見たら足も。
あ、超大怪我じゃん。
白い人たちの話声、というか怒鳴り声が聞こえる。
「脈は!?」
「あ、ありません!!」
おいおい冗談でしょう?
じゃあなんで俺はあんたらが見えているんだ?
……ああ、なるほど。
俺はもう轢かれて死んじゃったんだ。
それを自覚した瞬間、俺の意識はスーっと失われていき、やがて完全に落ちた。
◆◆◆
ここはどこだろう。
俺は轢かれて死んだはず……だよね?
死ぬ間際と同じように体は動かない。
だけど視界はさっきよりクリアだし、思考もはっきりしてきた。
どうやら俺は仰向けに寝ているようで、目だけを動かして周りを見ると、壁や天井が見えるから屋内の様だ。
……どこもすんごい禍々しい色しているんだけどね。
壁なんかにかかってるオブジェクトは骸骨にしか見えないんだけどね。
うーん……少なくても天国ではなさそうだ。
どちらかというと地獄……いやワンチャンで閻魔大王様の前ということも
俺のちんけな頭で必死こいて妄想を広げていると、唐突に、俺の耳に歓声が響き渡った。
「おお! 成功だ! さすがジジイだな!」
「いえいえ、お嬢様の努力の賜物でございます」
歓声の中でも一番近くから聞こえてきたのは、二人の話声。
何だ? やっぱり閻魔様でもいるのか? 出来れば天国がいいなぁ。
そんな俺を見下ろすように、黒い髪のボサボサショートカットでナイスバディのお姉さんが顔を出してきた。
めっちゃ美人です。眼福。
眼福ではあるのだけれど.
……頭の左右にご立派な角が生えているのよね。
それに漆黒のマントなんか羽織っちゃって……いるんだな、中二病って
「……可愛いなぁ」
お姉さんは俺の顔を見ながらそう言った。
ん? 可愛い? 俺が?
今まで一度として可愛いなんて言われたことない俺に? 友人の女子からは
「何だか当たり触り無いような顔してるよね」
とまで言われてしまった俺が?
正直あの時は辛かった。
キョトンとしてしまった俺に、お姉さんは手を伸ばし
そのまま抱き上げた
……おかしいなぁ~俺少しやせ型だけど170と55はあるんだけどなぁ。
お姉さんの怪力に驚かされていると、彼女は流れるように俺の両脇を手で支え、自分の視線まで持ち上げた。
何だか高い高いされている気分。
いや、実際にされている。
いくらがんばっても足が地面に着く気配がない!
このお姉さんめっちゃ長身だな。
お姉さんは自分の目線まで上げた俺を、じっくり舐めるように見ていく。
男のプライドとしてどうなのこれは。
そして満足そうに笑みを浮かべた後、大きな声言い放った
「よし! 今日からお前は私の息子だ!」
……はい?
不定期です。ごめんなさい。