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falling down, falling down


   polyphonic summer / falling down, falling down



  0


 博士はいつもむずかしい顔をして、大抵この世の終わりのように嘆き悲しんでいるが、それがポーズであることはみんな承知していた。



  1


 彼がどうして博士と呼ばれているかについて。

 答えは単純明快で、彼は白衣を着ていて、かといって医者には見えないせいだ。

 本人は哲学者だと自称している。

 それはきっと人間が人間であると自称するようなもので、本質的ではあるが、なんら現実的ではないひとつのレトリックにすぎず、問題は彼自身が宣言することによって自分は哲学者なのだと思い込もうとしているところだった。


 博士はいつもそのあたりをうろついている。

 うろつくならだれもいないところにしろ、と怒鳴るような心の狭い人間はこの町にはおらず、みんなさり気なく博士がせかせかと歩いているのを気にしながら、それぞれの生活に没頭している。


 最近、博士がいちばん興味を持っているのは、なぜ空は青いのか、ということだった。

 もちろんこの町には親切丁寧慇懃無礼に「それは光の特性のせいだよ」と教えるような愚か者はおらず、みんな注意深く博士が答えを出す瞬間を待っている。


「なぜ青でなければならないのか、というところが問題だ。なぜ緑ではだめなのか? いっそ、肌色でもいいではないか。いや、いや。色なんてなくてもいいんだ。空でいいじゃないか。空、つまりこの大空に、空、と書いておけばいいんだ。それで事足りるだろう。そうは思わないか?」


 神は困ったような顔で小首をかしげ、しばらくうんうんと唸ったあと、名案をひらめいたようにぽんと手を打った。


「青色が、どこかの世界の言葉では、空、という意味なんじゃないでしょうか?」


 博士は納得していない顔だった。

 もちろん、そうだろう。納得なんてするはずがない。

 彼は哲学者で、哲学者とはすなわち、納得しないもの、という意味なのだから。



  2


 ドラゴンに触ったことがあるひとならわかると思うのだが、ドラゴン自身はおとなしく、穏やかな性格で、こちらに危害を加えるつもりなど一切なくても、鉄のように硬く、岩のようにごつごつした鱗でもって擦り寄ってこられると、自分が大根か生姜にでもなった気にさせられる。


 ドラゴン使いの少年に、よく乗っていられるね、というと、彼は体長五十メートルほどはあるドラゴンの頭の上からほほえみを振り撒き、こう答えた。


「乗っているように見せかけて、ほんとは二、三センチ浮いてるからね」


 哲学者でないぼくは、なるほど、と納得した。

 ドラゴンは短いが太い足でのしのしとアスファルトを踏みしめ、尻尾であたりのビルを破壊しながら歩いていく。

 ドラゴンに町を破壊する意志はないが、ドラゴンという存在は町を破壊するものである。

 町を歩いていて、おや、どうしてこんなところが壊れているんだろう、と思うところがあったら、まず間違いなくドラゴンの仕業だ。

 ドラゴンにはいろいろ種類があって、五十メートル以上の巨大なやつもいれば、手のひらに乗るくらいのちいさなやつもいて、もれなく町を破壊しながら歩いている。


 当然、ドラゴンとキュリオシティは敵対している。

 もっと正確に言うならば、キュリオシティはドラゴンを不倶戴天の敵とみなし、ドラゴンのほうは餌をくれない人間と認識してキュリオシティを無視している。


 なぜキュリオシティがドラゴンを敵だとみなしているかについては諸説ある。

 嘘をついた。

 本当はひとつの説とひとつの真実しか存在しない。


 世界崩壊以前、ドラゴンは持ち前の破壊特性によって、住宅地のちょっとしたコンクリート塀を壊していた。

 キュリオシティは当時猫で、塀の上を歩くことを生きがいとしていたから、当然すたすたとモデルのように腰を振りながら歩いていたわけなのだが、前方のコンクリート塀が壊れていることに気づかず、足を滑らせて地上に落ちた。

 そこを、ドラゴンが、


「ふん、ばかな猫め」


 と笑ったのだという。

 本当かどうかは知らないが、あり得ない話ではないな、とは思う。


 それ以来、キュリオシティはドラゴンを敵とみなし、見かけるや否や飛びかかり、ドラゴンに鬱陶しそうな顔をさせている。


「いったい、ドラゴンというものはなんなんだろうね?」


 博士はぼくのとなりへやってきて、去りゆくドラゴンの後ろ姿を眺めながら言った。


「ドラゴンは、ドラゴンじゃないんですか?」


 ぼくが言うと、博士は鼻白んだような顔をして、吐き捨てるように言った。


「そういう言い方は好きじゃないね」

「そうですか、すみません、知らなかったもんで」

「いいさ。過ちはだれにだってある。ぼくにだってね」

「博士の過ちって、なんです?」

「生まれ落ちたことさ」


 ぼくは博士のことを、哲学者ではなくロマンチストではないか、と密かに思っている。



  3


 ロンドン橋の度重なる不幸については聞き知っているひとも多いと思う。

 彼女は数限りない崩壊と再建を繰り返し、今日まで最新の姿を保ち続けている。


 もちろんロンドン橋を壊したのはドラゴンなので、ロンドン橋はドラゴンを毛嫌いし、ドラゴンが近づくとぶるぶる震え上がり、しかし橋なので逃げることはできないから、恐ろしい天災よ早く立ち去れと祈ることしかできない。

 そういう二千年くらいのやり取りがあったせいか、ロンドン橋はいまや世界でもっとも辛抱強く気高いレディと呼ばれ、滅んだ世界にあってもつんとした気品を保っている。


「ちょっと、そこの平民」


 ある日、ぼくがいつものように散歩をしていると、不意に呼び止める声があった。

 振り返るまでもなく、そこにロンドン橋がいた。


 ロンドン橋は、橋なので、当然川の上にかかっている。

 この日はどうやら橋としての役割を放棄していたようで、大量の水を海へ流し込む一級河川のそばの河川敷にパラソルを広げ、その下で優雅なティータイムを繰り広げているようだった。


 ロンドン橋は縦ロールの金髪をきらきらと光に晒し、手招きする。

 地雷でも埋まっていないだろうか、と警戒しながら近づいたが、幸い何事もなくパラソルの下へ到着した。


 ロンドン橋は椅子に座ったまま、じっとぼくの顔を見上げた。

 青く澄んだ目がぼくの瞳を覗き込み、いかにも生意気そうな薄い唇がにやりと笑う。


「あんた、見るからに暇そうね」

「ぼくのどこが暇そうに見えたのか知らないけれど、まあ、たしかに暇だよ」

「じゃ、お茶を淹れなさい。お茶の淹れ方くらい、わかるでしょう?」


 まっ白なレースのテーブルクロスがかけられた机には、ポットがひとつと、カップがひとつしかなかった。

 お茶を淹れろというのもごちそうしてくれるという意味ではなく、ロンドン橋のカップに淹れろ、ということらしい。

 ぼくが注意深くカップに紅茶を注ぐと、ロンドン橋は満足げにうなずき、それを一口、上品に飲んだ。


「なかなかおいしい紅茶を淹れるじゃないの」

「そうですか、どうも」

「ハンプティダンプティがいなくて困っていたところなのよ」


 ロンドン橋は苦々しげに顔をしかめる。


「あいつ、すぐどこかに落ちて割れてしまうでしょう」

「まあ、そういうもんですからね、ハンプティダンプティは」


 まさか粉々になったハンプティダンプティを踏みつけていないか、と不安に思って足元を見たが、そんなような欠片はなく、ほっと息をつく。


 ハンプティダンプティとロンドン橋の関係については、一言でいうなら令嬢と召使といったところで、それもうんと気品があって美しい令嬢と、うんと能力がない召使という関係である。

 とくにハンプティダンプティは女好きで知られているから、いまごろヒビが入った卵顔がどこかでナンパでもしているにちがいない。


 ロンドン橋はゴシックロリータふうの黒いドレスの裾を払い、細い首に巻きついた蛇のようなチョーカーの位置を直して立ち上がった。

 そして、ぼくを睨む。

 ロンドン橋は片手をぼくに差し出していた。

 ああそうかとその手を握ると、ロンドン橋は慌てて手を引っ込め、


「だ、だれが握手って言ったのよ! 普通立ち上がるときに手を貸すでしょうが」

「ああ、そういうこと。すんません、平民なもんで」


 ロンドン橋はほんのりと頬を赤らめ、ぼくの手に自分の手をやわらかく控えめに重ねた。


「どうせ暇なんでしょう、あなた」

「まあ、暇ですね」

「ハンプティダンプティを探すから、手伝いなさい」


 そう言って、ロンドン橋はなぜか恥ずかしそうな顔をするのだった。



  4


 最近の研究で、ゴジラはドラゴンの一形態にすぎないと看破されている。

 キングコングはその限りではない、という注釈がつく。


 まあ、事情を考えてみれば明らかで、ゴジラは町を壊すために存在するが、キングコングは町が壊れてしまったのであり、町を壊す意志は存在しない。


 そういうわけで、ロンドン橋はゴジラも嫌いで、そのせいかどうかは神のみぞ知るというところだが、ぼくの手をやわらかく握ったまま町のなかを歩いて回った。

 ロンドン橋は白い日傘を差している。

 黒いドレスの足元はエナメルのまっ黒なパンプスだった。


 世界が滅んでからというもの、町の様子はすっかり様変わりしている。

 以前はなんの変哲もなかった住宅街に、唐突にピラミッドが現れたり、摩天楼が隆起したり、反対にカルデラができたり、深い森になったり、石ころであふれたりする。

 それはどれも神のせいといって過言ではない。


 神は心やさしいので、生きたい、と望んだものをすべて生かしてやった。

 しかしいまや地球というのはつるりとした石の塊でしかなく、海も森も存在していないから、様々な地点に生きているものを点在させるのは非効率的である。

 そのために、神は生きているものを一箇所に集めた。

 それをぼくたちは「町」と呼んでいる。


 ピラミッドは世界中にいくつもあるが、町にあるピラミッド、すなわち生きていたいと望んだピラミッドは、メキシコにあった古代マヤ文明のピラミッドである。

 苔むしたそのちいさなピラミッドはなんの変哲もない一軒家のとなりにあって、いままでと同じように一言も喋らず、鎮座している。

 ただし、建物のすべてがそうであるように、ピラミッドもやはりドラゴンのことは怖がっていて、ドラゴンが通りかかるときゅっと身体を細くしてドラゴンの尻尾を回避しようと試みている。

 幸いにして、いまのところドラゴンの尻尾はピラミッドには当たっていないようだった。



  5


 ハンプティダンプティは卵である。

 そんなことは当たり前のことで、卵なのだが、ただの卵ではない。


「よう、てめえもナンパかい?」


 ハンプティダンプティは案の定繁華街にいて、ぼくを見つけるとひょいと片手を上げてニヒルに笑ったが、ぼくの後ろにロンドン橋がいることに気づくと、全身をまっ白に染め上げて殻のなかに閉じこもった。


「お、お嬢さま、ここ、これはですね、ナンパをしているのではなく、そう、いわゆるひとつの訓練といいますか、執事的経験値のアップに勤しんでいるといいますか」

「ハンプティダンプティ、無駄なことを喋るのはおよしなさい。いまさらごまかしても、あなたがどういうものなのかは知っているわ」

「は、ははあ、ご寛恕ありがたく思います」


 ハンプティダンプティはころころとアスファルトを転がってロンドン橋の足元までやってきて、そのまましばらくころころとしていたが、ぼくはふと気づいて、


「ロンドン橋、言わなくてもいいことかもしれないですけど、スカートのなか、覗かれてますよ」


 すかさずロンドン橋のパンプスがハンプティダンプティを踏み潰し、白い殻が完全に破れてどろりとしたものが流れ出した。

 ぼくは見なかったことにして、空を見上げる。

 よく晴れた青い空だった。

 空が青いのはどうしてだろう、と言った博士の言葉を思い出す。

 そう、それはきっと、この世界の真理に通じている疑問だ。


 ロンドン橋はスカートの裾をきゅっと押さえ、覗いたハンプティダンプティではなく、なぜかぼくのほうをじっと睨んだ。


「いや、見てませんよ、ぼくは。意外と純粋な純白のパンツだなんて」

「見てんじゃないのよ!」


 日傘でがしんと殴られる。

 勘がいいのも、状況によって善し悪しだ。

 しかし本当に純白だったとは、なかなかどうして意外ではあるが、それでいて本当によく似合っていそうな気もする。

 パンツに似合う似合わないがあるのかはよくわからないが。


 粉々になったハンプティダンプティをその場に放置し、ぼくたちはさらに歩いていった。

 そのうち王さまの馬や騎士たちがやってきて、最後にはアリスの手によって再生されるのだが、ハンプティダンプティは、アリスにはなんの興味も抱かない。

 なにせ彼は年上好きで、美少女にはまったく興味がないのである。

 しかしだれも彼の年齢を知らないから、彼の年上好きというのは、あくまで彼の主観の話でしかないのだが。


 ぼくたちは町を歩いた。

 生きている町のなかを、あてもなく、手を取り合うというにはおぼろげに、寄り添うというには恥じらいに、ただ歩き回った。


 途中、くだんのドラゴンとドラゴン使いの少年に出会い、ロンドン橋はドラゴンが見えなくなるまでぼくの背中に隠れていた。

 ドラゴンが町の向こうに消えると、ロンドン橋はふうと息をついて、


「あなた、よく平然としていられるわね、あんな怪物の前で」

「まあ、ぼくは意外とドラゴンとか好きですからね。男の子だし」

「男の子はドラゴンが好きなの?」

「そりゃあ、好きですよ。もちろん個人差はあって、ドラゴンより宇宙人のほうが好みだっていう男の子もいるだろうし、そんなことよりも機械人のほうが好きだって男の子もいるでしょうけどね」


 まったく理解できていないようなロンドン橋の端正な顔だった。

 前々から思っていたのだが、ロンドン橋には哲学者の素質がある。

 あるいは、ロマンチストの素質が。



  6


 博士は猫が真理を知っている唯一の生物だと信じきっている。

 しかし問題なのは、博士はキュリオシティが猫だと信じないところだ。


「だって、きみ、見てごらんなさい」


 博士は、遊んでほしくてぼくの足元にじゃれついているキュリオシティを指さして言った。


「どこからどう見ても、人間じゃないか」


 そう言われては、だれも反論はできない。

 ぼくはキュリオシティの顔の前で指を振り、じゃれついてくるのを適当にあやす。


「でも、こいつ、もともとは猫だったんですよ。この世界が終わる前は」

「そんなことはあり得ないよ、きみ。人間というのはね、生まれたときから人間なんだ。蛙とはちがうわけだよ。そしてきみは知っているかどうか知らないが、猫というものは、生まれたときから猫なんだ」


 まったくそのとおりである。

 博士の言うことは常に正しく、ぼくは往々にして嘘をつくから、まあ、この場合もおそらくは博士の言うことが正しい。


 キュリオシティは人間で、人間であるからには、人間として生まれてきたのだろう。

 それがロマン、というわけだ。


 キュリオシティは鋭敏なる理性と知性でぼくにからかわれていることを理解し、怒ったようにぼくのふくらはぎに噛みつき、歯型を残すとすたすたと歩いていった。

 ほらね、と博士は歩いていくキュリオシティの背中を見て、勝ち誇る。


「二足歩行をしているだろう。あれは、人間である証拠なのだ。一部の類人猿は限定的な二足歩行をするが、人間とは明確に骨が異なる。首や背骨がね。人間は首に負担をかけず重たい頭を支えるため、いまのような骨の構造になったのだ。したがって、四足歩行の動物の脳の発達には自ずから限界が生じ、それを打破するためには二足歩行ないし首の骨や筋肉の巨大化が必要であり、当然ながら猫にそんなものはなく、猫は四足歩行に適したサイズの頭しか持たないのであり、限られた頭蓋骨の容量では人間のような知性は発生し得ず、したがって猫は人間ではなく、人間は二足歩行で猫は四足歩行なのだから、二足歩行をしている彼女は猫ではなく人間なのだよ」


 では、とぼくは質問した。


「橋はどうですか?」

「橋?」


 博士は白衣のポケットに手を突っ込み、首をかしげる。


「橋は人間といえるでしょうか、それとも、橋は人間ではないのでしょうか?」


 博士は、質問に即答するような思慮の浅い人間ではなかった。

 たっぷり一時間ほど博士は考え込み、そのあいだにぼくは通りかかった三島と話をしたり、空を飛んでいた魔法使いのスカートがめくれないものか凝視したりしていたが、博士はついに答えを出した。


「橋は、ぼくの専門じゃないからなんともいえないね。ぼくの専門は生物だから。そう、現時点では、橋は人間ではない、とは言いきれない」


 重要な指摘をありがとう、と博士は言って、深く考え込みながら歩いていった。



  7


 どうしてロンドン橋が落ちるのかといえば、ある気が効いた伊達男が言うのに、ロンドン橋は惚れっぽい女なのだという。

 だから、ロンドン橋は何度も落ちる。



  8


 川べりまで戻ってきて、ロンドン橋はようやくぼくの手を離した。


「言っておくけど」


 とロンドン橋はぼくを睨みつける。


「お礼は、言わないわ」

「はあ、そりゃ、お礼を言われるようなことはしてませんから」

「ち、ちがうわよ、その、感謝の気持ちはあるっていうか、つまり、だから」


 ロンドン橋は縦ロールの金髪を指にくるくると絡ませ、ぶつぶつと言っていたが、最後にはなにか感情の反転が起こったらしく、


「ばか!」


 と一言叫んで走り去っていった。

 正直に告白するのなら、ぼくはロンドン橋が嫌いではなかった。



  9


 ロンドン橋落ちた、落ちた、と連呼するあの歌は、明らかにロンドン橋を小馬鹿にした歌である。

 よって、ぼくはあの歌が大嫌いで、あの気が抜けるようなのんきな旋律も大嫌いだが、なるほど、その歌の意味はよく理解できるのだった。



  10


 ある詩人は、この町を白昼夢と称した。

 その詩人はもうどこにもいない。

 彼は生き残った目的を達成し、一足先に滅びた世界の仲間入りを果たしている。


 博士は世の中のすべてに絶望したような顔をして、町をうろついている。

 だけど、ぼくたちはそれがポーズであることを知っている。

 なにしろこの町は、生きたい、という意志があるものしか存在できない町なのだから。


 いったい滅びた世界でなにをするというのだ、ときみは言うかもしれないが、反対に言わせていただくのなら、滅びていない世界でなにをするというのだ。

 まあ、滅びていない世界なら、することもいろいろあるだろう。

 滅びてしまった世界ですべきことは、ほとんどなにも残っていない。

 しかしぼくたちは生きている。

 なにかの理由で、ハイゼンベルク的不確定さの仕業で、ぼくたちは生きているのだ。


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