表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/52

神様

 サラ女王との謁見が終わり、王宮の廊下をダンと歩いていた。出立が明日になったため、部屋に戻るところだった。

 そこに前方から手を振って走ってくる雪が見えた。


「武蔵くーん、そっちは終わったのー?私のギフト、すごいよー」


 女王との謁見の最中、雪には王宮礼拝堂に行ってもらっていた。雪のギフトが何か調べるためだ。雪の後ろから神官が追いかけてきた。


「雪さーん、説明がまだ終わっていませーん」


 どうやら、説明を聞くのに飽きた雪が逃げ出したようだ。武蔵はため息をついた。


「ま、その、あれだな。お前の彼女は自由奔放だな」


 ダンが笑いながら言った。武蔵は頭を抱えた。


「冗談はやめてください。ただの幼馴染ですから……」


 そんな会話をしていた二人の元に、雪がたどり着いた。軽く息を弾ませていたが、言いたいことがあるため、目は輝いていた。


「私のギフト、二つあって、一つは人間以外と“話す”ことができるんだって。これで殺人事件の真犯人を凶器から聞き放題だよ」


「身近に殺人事件が起きてたまるか。それと警察のお仕事を横取りするな」


 雪のボケに軽くツッコミを入れた。雪も武蔵と同様に二つのギフトを持っているようだ。物から話が訊ければ、この世界での活動に役に立ちそうだ。


「で、もう一つは何だった?」


 ダンが興味深げに聞いてきた。


「何かできるわけじゃないけど、“神様”の御加護だって」


 雪が胸を張って答えた。


「ぶふぁっ!すごいじゃないか!!」


 ダンが吹いた。若干、唾が飛んだが、すべてよけた。もしかして、俺の早く動くギフトが作動したのか。こんなことで初作動はいやだと武蔵は思った。


「すごいでしょー」


 なおも胸を張る雪。神様の御加護というのがどのくらいすごいのか、いまいちわからない。


「そんなにすごいのか?」


 武蔵はダンにどのくらいすごいのか聞いた。


「神様憑きのギフトはこの国でも数人しか確認できていないぞ。前に話した総団長のギフトの一つが神様憑きで、“軍神”が憑いている。武力であの人に勝てる人間はいない」


「めちゃくちゃ強そうだな……」


「総団長って、マッチョマン?」


 俺と雪はそれぞれ感想を口にした。そこに、雪を追いかけていた神官が到着した。


「やっと追いつきました。雪さん、説明は最後まで聞いてください」


「すみません、雪にはちゃんと言い聞かせますので……」


 雪に代わり、いつも通り武蔵が謝った。口をとがらせている雪を横目に、神官が落ち着くのを待った。

 神官は膝に手を当て、前かがみになって切らした息を整えていた。


「雪さんの神様は“厄病神”様です。本来、神様憑きは、この王都“セリアージュ”にある神殿に居てほしいのですが、神様が“厄病神”様なので、同じ場所にとどまることがないよう、お願いします」


 過去、最大級の不安要素がここに現れた。今まで巻き込まれ続けたのは雪に“厄病神”様がついていたからなのか。


「ギフトとして“厄病神”が憑いた人間は過去に居ますか?」


 息が整った神官に武蔵は聞いた。


「過去に“貧乏神”が憑いた方はいました。その方が留まった家や街は財政がかなり傾いたので、終生、旅をし続けたと記録に残っています」


 思わず、武蔵は天を見た。雪にはこの王宮で待っていてもらい、過去の英雄の跡を辿る旅は、一人(サラ女王の条件でプラス一人)で行こうと思っていた。何かやらかすのではという不安があったためだ。

 だが、一か所に留まると、“厄病神”が力を発揮してしまうのであれば、旅をしなければならない。


「手数をかけて悪いんだけど、旅の支度は二人分にしてもらえないか」


 武蔵はダンに言った。神様のギフトで気分が高まっていたはずのダンはいつの間にか、落ち着いていた。“軍神”レベルの神様憑きと思っていたら、“厄病神”レベルはベクトルが違いすぎる。


「あぁ、わかった。二人分用意するように伝えよう」


 出立を前にして、不安要素しか増えなかったが、気心しれた人間が一緒なら、旅も楽しくなるかもしれない。武蔵は前向きに考えることにした。




 翌朝、支度金と一部の魔獣対策の装備一式(簡易胸当てとダガー)をもらい、王宮の門に武蔵と雪はいた。

 サラ女王が条件として付けたもう一人を待っていた。

 しばらくして、王宮から一人の女性が歩いてきた。青い軍服を着て、長い金髪を後ろにひとまとめにしていた。


「アメリア=バンフィールドと申します。道中、よろしくお願いします」


 武蔵と雪はそれぞれ簡単に自己紹介をした。それにうなづきながらアメリアは聞いた。第一印象としては三人とも悪くはなかった。


 こうして王都“セリアージュ”出発を出発した




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ