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第一法章 命出逢う日

 秋に入って、朝焼けの色合いと夕焼けの色合いを重ねる木の葉に、薄く雲のたなびく青空が彩られている。そこにはまだまだ、深い緑も多くて、まるでオーロラのよう。

 九月は、この世界を始めて統治した十六の創世神の一柱であるアローネが見守ってくれてる季節。母性あふれる海の神様が、優しく世界を抱いてくれて。

 八月を支配してた大地の神様トゥバンも、夏の暑さといっしょに、もう深い大地の底に眠ってる。

 雲を運ぶ風が、わたしの長い髪の間をすり抜けてく。

 なんだか楽しくなって、手のひらを返して、波で木の葉を揺らしてみる。淡く澄んだ水色に波打って、さらさらと踊る木の葉はとても楽しげで。

 わたしも、うきうきしてきた。

 公園の真ん中、魔法を奏でるにはちょうどいい広さがある。

 石畳に軽く、ステップを踏んで。

 染まりゆく木の葉に包まれた舞台へ。

 くるりと、体を回して辺りを見渡せば、ぽつぽつと人がいるのが確認できる。

 わたしの魔法で、この人たちにも幸せを感じてほしいな。

 そっと、秋の涼しさを含んだ空気を吸い込む。

 故郷のアローネと違って、海の香りがなくて、代わりに土と木々の香りが深い。ここが海の中じゃなくて、大陸にある街なんだって実感する。

 木々のゆるやかな息づかい。

 さわやかなに吹き抜ける風。

 おだやかに流れていく雲。

 柔らかな太陽のほほえみ。

 枝に止まっては短く言葉を交わす小鳥たち。

 土の中で密やかに命の営みをしている虫たち。

 全てが愛おしい。

 魂の奥底から、感情が溢れ返ってくる。

 それを押さえることなんて、できないし、したくない。

《穏やかに海眠る満月の夜 漣謳う 優しく 切なく 出逢いを喜びながら》

 わたしの詠唱は、おだやかな風に乗って、空に吸い込まれていき。

 淡く淡く、さざ波がささやき、木の葉をゆらす。

 奏でるのは、わたしが一番得意な『命の海・アローネ海』。大魔法使いオセアンが紡法した大洋交響曲の第一番で、海属性の魔法でも、最高峰と言われてる演目だ。

 その第一法章の『命出逢う日』は、新しい命が生まれる春のアローネ海を表現してる。命にあふれる故郷のアローネ海を思い浮かべて、わたしは魔力を空気に波打たせてく。

《幾たびもの輪廻を巡りて また出逢うこの日 孤独な旅の切なさも 貴方との逢瀬で喜びと幸せに生まれ変わる》

 朝焼けと夕焼けのカーテンに混じる、深い藍色に溶ける夜の海。

 寄せて返す波の中、次第に木の葉も楽しげに踊り出して。

《灯る命 星歌の響きを聴きながら 声もなく生を唄う》

 手を広げて、アローネ海の波にたゆとうように、ステップ。

 くるりと、ターンを踏んだら、両手と背中にかかる髪がいっしょに、ふわりと浮かんで。

 時間といっしょに、色合いを変えていくアローネ海をイメージする。

《夢のまどろみから 母なる海から 目覚めて 灯すのは自分の命》

 春の日差しをあびて、プランクトンが黄緑にきらめき。

 それが深緑に沈んだり、翠に輝いたり。

《いつか別れた貴方と出逢うために 命をかけて旅をする》

 夜には子守唄代わりの波が藍に染まってく。

 朝日を吸い込んで蒼、それから光が強くなって碧。

 夏には透き通った水色。日が高くなったら、空の色を映して。

《いつか別れた貴方と出逢うときに 生まれてきた意味を知る》

 それから夕焼けの移ろいに合わせて、紅と鴇色、橙。

 命の輝きを丸く浮かべて、波に漂わせて。

 離れて。

 近づいて。

 出逢って。

 別れて。

 重なって。

《いつか別れた貴方と出逢うたびに 幸せという感情が溢れ出す》

 揺らいで。

 ぶつかって。

 すれ違って。

 寄せて。

 返して。

 生まれてくる喜びに満ち溢れて。

《大海泳ぐ精霊の末裔よ 唄に踊り 想いに響き 魂に寄り添え》

 不意に、凛とした響きが詠唱を奏でた。

 辺りに浮かぶ無数の召喚陣は、瑠璃色に輝いていて。

 海の魔力をあふれ出して、魚たちが優雅にそのヒレを翻して現れる。鳥の翼のように体に対して大きく広がったヒレは、まるで花嫁のヴェールのように薄く、透き通る水色をたたえている。創世神の一柱であるツインズの末裔と言われるピスセスのその姿は、純粋無垢な少女のようにも思えた。

 彼女たちは瑠璃色の海をまとったまま、わたしの波に身を投げ出し、命の灯とたわむれている。

 視線を詠唱の奏でられたほうへ向ければ、黒いポニーテールがさらり、と揺れていて。

 きっと、同い年くらいだけど、その凛とした雰囲気は大人を思わせる。

 強い意志の宿った黒い瞳に見返された。

 その整った顔立ちにほっぺを染めていたら、彼女は手をこちらへ差し出される。

 続きを。

 声にしなくても、伝わる想い。

 彼女に先をうながされて、わたしはもう一度、自分の魂に意識をゆだねた。

《今日は出会いの日 孤独な旅は終わり 二人の旅は始まる》

 力強く、けれど、優しく、波は辺りにあまねく。

《絆を抱いて》

 その波に逆らって、ピスセスは泳ぐ。

 その軌跡は藍色を瑠璃色にぬりかえて。

《その身を寄せて》

 けれど、広がる波しぶきも、わたしの波に飲まれて消えて。

 その狭間を、彩色豊かな命の灯が移る。

《魂を重ねて》

 繰り返されるさざ波が織り成す幻想は、けして出逢うことない昼と夜の海が混じり合ったかのようで。

《旅をする 幸福と平和を感じながら 二人で生きていく》

 そっと、手を胸元に引き寄せて。

 波を沈めていく。

 それに合わせて、辺りの空気もまた秋色に戻っていって。

 ぱらぱらと、見ていた人たちが拍手をくれたのが、嬉しかった。

 けれど、それはわたしだけのものじゃない。

「すごいね! あんなにたくさんのピスセスを同時に召喚できるだなんて!」

 高まった鼓動のままに、わたしは早口に言葉を重ねると、彼女は小首を傾げて、さらりとポニーテールを鳴らした。

「あなたこそ、素晴らしい魔法だったわ。オセアンの大洋交響曲第一番第一法章、命出逢う日――セアエルと同等の魔力がなければ奏でられない魔法じゃない」

 彼女の落ち着いた言葉でほめられると、大人の人に認められたみたいで、くすぐったい気持ちになる。

 わたしは熱くなる顔がはずかしくて、きょろきょろしちゃって。

 それを見て、彼女は口元を隠してくすくすと笑った。

「ところで、あのキャリーバック、あなたのかしら?」

 彼女を見上げていた視線を指差されたほうへ向けると、公園の入り口と、確かにわたしのキャリーバックが見えた。

 あ、と声を漏らすわたしに、彼女はくすり、と小さく笑う。

「危ないわよ、あんなところに放って置いたら」

「だ、だいじょうぶだよ。今どき、物取りなんていないもの」

 言い訳をしながらも、わたしは急いでキャリーバックを取りに行く。これがなくなったら、明日から着るものがなくなっちゃう。

 ちらりと彼女の顔をうかがうと、整った眉を寄せていた。

「あなた、お引っ越し?」

「うん、そうなるのかな?」

 今日から学校の寮生活だから、引っ越しっていうのも間違ってないよね。家具はほとんど備え付けらしいけど、服とか身の回りの小物とかはないから、このキャリーバックで持って来てるの。

「もしかして、前も誓都に暮らしていたの?」

 誓都――それは、六百年近くも続いた戦歴を嘆いた不戦の誓いにより平穏をもたらした、十六の都市国家のこと。それは今も、戦争を封じこめ、平和を支える世界の中心なんだ。

「うん、そうだよ。アローネに住んでたの。よくわかったね?」

 そしてこの最高の知識と研究が重ねられるクノウァも、わたしの故郷の海中都市アローネも、誓都のひとつ。

 わたしの返事を聞くと、彼女はあからさまなため息をはき出した。

「あのね、安全な誓都でずっと暮らしてからわからないのかもしれないけど、本当は世の中って危険なのよ。油断していたら、お嬢ちゃんなんかすぐに身包み剥がされるわよ」

 強い調子で、彼女はわたしを見下ろしている。

 彼女がわたしを心配して言ってくれているのは、わかるけど。

 それでも、なんだか悲しくなってくる。

 わたしがよほど顔を曇らせていたのか。

 ふわり、と髪をなでられた。

「……綺麗な髪ね。まるで、夜の海を湛えているみたい。家族は近くにいるの?」

「うん。もうすぐ来るよ」

「そう。なら、安心ね。それじゃ、私も引っ越しで、急いでいるから」

 彼女は最後にもう一度、わたしの髪に指を絡ませると、足元に置いていたショルダーバックを肩にかけて、立ち去った。

 荷物が少ないから、彼女もわたしと同じで、寮に入るのかもしれない。なんだか、すぐにでもまた会える気がする。

 運命、かな。

 そんなことを考えていたら、彼女が出ていったほうから、見慣れた赤茶色の髪がやってきた。

 けれど、その位置は以前よりも高くなっていて。

 獰猛なドラゴンを思わせる焦げ茶色の瞳が、わたしを静かに見下ろしてくる。

 目の前に立たれたら、だいぶ見上げないと顔がうかがえなくなっていて、離れていた時間を感じた。

「エアルス、また、背伸びたの?」

「ああ。お前は半年経っても伸びなくて残念だな、セア」

「うなぁ!? それがお姉ちゃんに対する態度!?」

「たかが数分の差で何言ってやがる、こんなちっこいくせに」

 エアルスめ、またなまいきになって!

 しかも、わたしの頭に手を置くだけで反撃を防ぐなんて、むかつく。

「むー」

 わたしが頭を押さえられてうなっている間に、エアルスは辺りを見回している。そしてスッと目を鋭くしてわたしを見下ろしてきた。

「お前、また魔法使ったな?」

「あ、あはは……わかる?」

 わたしがかわききった笑いでごまかすと、エアルスにあきれられてしまった。

 エアルスが髪をかき上げるのに合わせて、チャリ、とレザーブレスレットに絡みついた鎖が音を鳴らした。

「オレがマナを見えなくても、ここまで濃密に残っていたら気付くに決まってんだろ」

 マナ――それは、命の輝き、もしくは魔力の粒子。存在がもつ力。

 魔法や魔術を使うというのは、マナの流れを変化させて、事象を操るということ。

 だから大きな魔力を消費すれば、その気配がその場に残る。魔法使いや魔術師なら、そのマナの流れを感じ取るのは簡単だ。

「あんま使うなっつってんだろうが」

「だ、だってぇ、気持ちよかったんだもん……」

 言い訳にならない返事をすれば、当たり前のように上からため息が降ってくる。

「本当にどうしようもねぇな。魔法はポンポン使うわ、数歩歩けば道に迷うわ、ガキの頃と何も変わってねぇ」

「ま、迷子にはなってないよ! ……ま、まだ」

 たしかに、わたしは方向音痴だけど。

 始めてきたクノウァで迷ったら困るから、エアルスを頼ったんだけど。

 ちゃんと自分のことを理解するって大事だよね。

「誰に言い訳してんの、お前?」

「うわ、エアルス、女の子の心読んじゃだめなんだよ。エアルスはわたしに見せないようにしてるくせに」

 わたしが隠すように胸を押さえると、エアルスはあきれ顔になった。

「お前の心がガラ空きなだけだろうが」

 わたしたちは、双子なせいか、意識して隠さないとお互いの感情がわかってしまう。幼い頃は、どれが自分の気持ちかわからなくて、混乱したくらいに。

 しばらくして、エアルスが心を隠す方法を身につけてからは、そんなことはなくなったけど。

 その代わり、エアルスの本心が極端に希薄になったような気がする。

「元から、オレの感情は希薄だ、バカ。昔はお前の感情に引きずられてたんだよ。ほら、行くぞ」

 このことは触れられたくないことみたいで、エアルスはわたしのキャリーバックを引いてさっさと歩き出してしまった。

 たぶん、わたしのせいだとか考えたせい。エアルスは昔からそういうのを気にする。

 誰のせいでもない、がエアルスの口癖。

「って、自分の荷物くらい自分で持つよ!」

 足の長いエアルスに先に行かれたから、追い着くのも大変だ。

 エアルスは駆け足のわたしにちらり、と振り返る。

「セアに持たせたら、そこらの木に目がいって、手を離して盗まれる」

「エアルス見てたの!?」

 さっきの彼女と同じことを言われて驚くわたしに、エアルスは冷たい視線を向ける。

 お前、マジでそんなことしたの?

 皮肉を言う時だけ、心を開かないでよっ。

 恥ずかしさでほっぺが熱くなるのがわかる。鏡を見たら、きっとわたしは顔を真っ赤にしてるんだ。

 そんなわたしを見て、のどの奥で笑うエアルスは、ほんとにいじわるだ。

「そういや、お前のじゃない魔力も残ってたな。誰がいたんだ?」

「え? えと、頭、なでられた?」

「なんで疑問形なんだよ」

 エアルスはキャリーバックを持つ手を変えて、開いた右手をわたしの額に当てた。レザーブレスレットの鎖が秋の空気を吸っていて、ひんやりとしている。

 そっと、エアルスに心をゆだねる。

 正直言って、わたしは物事を説明するのは、得意じゃない。理論立てて考えるのは、エアルスと違って苦手だ。

 けれど、エアルスが相手だからこそ、こうして記憶をのぞかせることができる。

 先程の出来事を確認したエアルスはなぜか、優しい瞳でわたしを見つめてくる。

 いったいどうしたんだろう?

「完全に子供扱いされてるじゃねぇか、お前」

「へ? あ、あー! お嬢ちゃんって、そういう意味!?」

 わたし、年下だと思われていたから、あの扱いだっただなんて。

 確かに、身長差が十センチ以上あった気もするけどっ。

「それだけの召喚魔法が使えて、寮に入るってことは、お前と同じ文化学園の新入生かもな」

 そうだといいな。

 彼女とまた一緒に魔法を奏でられたら、とてもすてき。

「エアルスは、学校どうなの?」

「どう、って言われてもな」

 エアルスは少し困ったように髪をかき上げた。

「勉強してばかりだよ。誓都学院はそういうところだ。まぁ、オレはそれがしたいんだが」

 エアルスは中学校からわたしたち家族と離れてクノウァ誓都学院に通っている。世界最高の教育を受けることができるそこで、エアルスは魔術学を学んでいる。答えを追い求めるのが得意なエアルスだからこその、生き方。

 わたしがこれから入学するクノウァ文化学園は、芸術を学ぶ学校だ。誰かに伝えたい想いを紡いでいくのが、わたしの生き方。

「友達は?」

 それでも、かわいい弟が楽しい学校生活を送れているかというのは、お姉ちゃんとして気になるところ。

「いるさ。勝手に淋しい奴にするな」

「そんな態度取るからお姉ちゃん心配になるんだよ?」

 たくさんの会話を重ねながら、歩いていたら、どんどん街中から遠ざかっていく。

 クノウァ文化学園は、広い敷地と豊かな自然のために郊外にあるとパンフレットに書いてあった。そんな、広々としたところで、四季折々の景色と触れ合うことで、生徒たちの芸術性をみがいていくというのが、その目的なんだって。

 次第に足が踏みしめる地面も、堅い石畳から柔らかな落ち葉と土の感触に変わってく。

 周りには、秋色と夏色のコントラストを重ねる木々に、おしゃべりにいそしんでる小鳥たち。

 湿気った空気を胸いっぱいに吸い込んだら、うれしくて笑い声をもらしてしまう。

「相変わらずだな」

「え? なぁに?」

 エアルスの意図がわからなくて首をかしげると、いたずらっぽい笑顔で見下ろされた。

「いつまでもガキだって言ったのさ」

「なぁ!?」

「ほら、着いたぞ」

 わたしが抗議する前に、エアルスは足を止めてキャリーバックを押しつけてきた。

 エアルスの背中に隠れていた風景を覗けば、大きな門が金属光沢を見せて口を開いていて。

 その奥には、お城かと思うくらいに大きくて立派な建物がたたずんでいた。

「おおきい……」

「そりゃ、ウチと違って全寮制だからな。女子寮っていっても、ここに四、五千人住んでるんだぞ」

 さすがは世界トップクラスの芸術学校だなぁ、って思う。見上げるだけでも首が疲れてきちゃうんだもの。

「じゃな。問題起こすなよ」

 エアルスはわたしの額をこつん、とノックするみたいに小突くと来た道を帰ろうとする。

「え、エアルス、もう行っちゃうの?」

「当たり前だろ。男が女子寮入れるか」

 確かにその通りだけど、独りは心細い。

 じっとエアルスのほうを見つめていたら、指で鼻先をはじかれた。

「なんて顔してんだよ。姉貴なんだろ?」

 そうだ、わたしはお姉ちゃんなんだ。エアルスを不安にさせちゃいけない。

「何やってるんだよ」

 エアルスの頭に向かって左手を伸ばすけど、全然届かなくて。

 必死に背伸びしたり、跳ねたりしても、だめだった。

 もう、勝手に大きくなるんだから、困っちゃうよ。

「エアルス、しゃがんで」

 わたしに言われて、面倒くさそうに足をたたむエアルスは、騎士のようにひざまずいて。

 わたしの弟ながら、すごくかっこよくて、様になっていて、すこし気分がいい。

 その大地のような色合いを見せる前髪に隠された額を、左手の指先でそっとなでる。ほこり払うように、触れるか、触れないか、ぎりぎりの仕草で。

 エアルスの表情がすこしゆるむのが目に見えて。

 彼の未来に想いを寄せる。

「エアルスが夢をつかむために、おまじない」

 わたしの指が額から離れるのと同時に、エアルスはすくっと立ち上がった。

「お前もしっかりやれよ」

 最後にエアルスは、わたしの髪をわしゃわしゃなでていった。

 もう、髪がくしゃくしゃになっちゃったじゃない。

 手櫛でなんとか髪をまとめながら、わたしは目の前にそびえる門をくぐった。

 静かな雰囲気。

 カラカラとキャリーバックの車輪が鳴る音が、やけに耳に近く感じた。

 門から寮の玄関までもすこし距離があって。

 重い扉を開いたら、広い空間がわたしを待っていた。

 奥には螺旋階段が向かい合って、その間には通路が明かりに照らされていて。

 すぐ目の前には、受け付けに優しそうなお姉さんが座っている。

 このフロアは二階までしかないみたい。きっと、生徒の部屋は通路の向こうにあるんだろう。

「こんにちは。新入生の方ですか?」

 きょろきょろと豪華な内装を見回していたら、受け付けのお姉さんに声をかけられてしまった。

「え、あ、は、はい、そう、です。魔法科のセア・アウロラです」

 あわてたせいで、すこしつっかえながらそう応えると、お姉さんは手を自分の目の前に上げた。

 すると、その手のひらの前に、半透明の映像が浮かびあがる。最新式のエアスクリーンモニターだ。エアルスがものすごい欲しがってた。

 その宙に浮かんだ画面にお姉さんは指をすべらせている。

「はい、確かに。入寮案内をお見せください」

 お姉さんに言われるままにわたしは書類をいくつか見せて、手続きを終わらした。

「はい、大丈夫ですよ。セアさんの部屋は、ミリシア棟の二五一六号室です。奥の通路を突き当たりで右に曲がって、次のT字路で曲がってください。そこの二十五階に部屋があります。二人部屋ですので、相手の人とは仲良くしてくださいね。もう一人の子は、もう来ていますよ」

「ありがとうございます」

 お姉さんから部屋の鍵を受け取って。

 つきあたりで、右に。

 T字路で、左に曲がる。

 しっかりと道順を心の中で繰り返して。

 言われた通りに道を進むと、『ミリシア棟』と書かれたプレートとエレベータが見えてきた。エレベータの左右を見てみれば、合わせ鏡のように部屋が並んでいる。

 正三角形のボタンを押すと、重苦しい音を鳴らしながらエレベータがわたしを招き入れてくれた。

 壁に埋まっていたそのエレベータの、外側は澄んだガラス張りになっていて。

 風に揺られる木々と対面する。

 二十五階までの空中浮遊。

 せっかくだから、と外を見てみれば。

 想像以上の景色。

 木々はそれぞれのスピードで衣替えしていくから、同じ種でも色合いが異なるのが、上から見るとよくわかる。

 秋も足を踏み出したばかりだから、まだ蒼々しい木の葉も多くて。

 配色は、夕焼けに染まる街のようだけど、それとは違ってグラデーションじゃなくて、完全なモザイク模様。

 教会のステンドグラスを思わせるその風情に、わたしは言葉も思考も失って見入っていた。

 そのせいで、エレベータが到着したのにも気づかず、音を鳴らされて追い出されてしまった。

 もう、すこしくらいいいじゃない。

 ほんとに、機械って融通が利かなくて、エアルスみたい。

 まぁ、わたしはお姉ちゃんだから、そんなことにいちいち文句を言ったりしないけど。

 エレベータを降りたわたしは、鍵に刻まれたルームナンバーと案内図を見比べてから、部屋に向かう。

 なんだか、緊張してきた。

 今さらだけど、全然知らない人と一緒に暮さないといけなんだよね。

 仲良くできるかな……?

 エレベータからわたしの部屋まで、そんなに距離があるわけじゃないから、考え事をしていたら、すぐに着いてしまった。

 ここまで来たら、もうなるようになれだ。

 わたしは最後にもう一度ルームナンバーを確認してから、呼び鈴を押した。

「はい」

 凛とした響きがスピーカーから返ってきた。

 なんだか、聞いたことあるような――気のせいかな?

「あの、この部屋の、えっと、なんて言えばいいのかな?」

「あ、相方さんね。今開けるわ」

 わたしは戸惑っていただけなのに、相手はすぐに理解してくれた。いい人そうで、すこし安心する。

 プツリ、とスピーカーが切れてから、すぐにドアが開けられた。

「あれ?」

「あら?」

 わたしたちは、二人して相手に見入ってしまった。

 わたしの目の前にいるルームメイトは、さらりとポニーテールを揺らして。

 鼻筋が通った、ぱっちりした二重まぶたの顔立ちは、どこか大人っぽくて。

 その意志の宿った瞳に見つめられていると、なぜだか顔が熱くなってきた。

「お嬢ちゃん? なんでここに?」

 公園で出会った彼女は、心底不思議そうに、わたしに目を丸くしてる。

「だから、この部屋に住むんだよ」

「え……?」

 わたしの体を上から下まで、疑惑の視線がさまよっている。

「――飛び級?」

「同い年だよ! ……た、たぶん」

 やっと出てきた言葉にわたしは反射的に叫んだけれど、彼女の見た目を考えると、すこし自信がなくなってくる。

「本当に十五才なの?」

 彼女は信じられないといったように、わたしを軽く見下ろしている。

 わたしは指を折って自分の年齢を数える。今日はまだ九月の十五日だから、まだわたしの誕生日は来てない。

「うん! 二十一日に十六才になるよっ」

 彼女は最後にもう一回わたしの全身を眺める。

「そう、なの。ええ、わかった、わ」

「それはあんまり納得してない反応だよ」

 やっぱり身長が低いのは損だ。みんなに子供だと勘違いされる。

 ……かわいいって言われたり、お菓子もらえたりするのは、嬉しいんだけど。

「まぁ、とりあえず入って。疑ってごめんなさいね」

 わたしは彼女にうながされるままに部屋に入る。

 入ってすぐ、ダイニングキッチンがあって、右手にトイレとバスルームが向かい合っている。

 家具はちゃんと備え付けてあって、入って左側には二段ベッドが見える。ベッドのヘッドボードはすこし広めで、勉強机の代わりになりそう。

 それから、部屋の中には二つのダンボール箱が置かれている。

 口がまだ閉まっている大きいのは、わたしの家から送られてきたもので、口が開いている小さいほうは彼女の荷物なんだろう。

「疲れたでしょ。座ったら? 紅茶でも淹れたいけど、ポットがないのよね」

 彼女は少し困った顔で、ほっぺに手のひらを当ててる。

 悩む仕草も、様になってて、うらやましいな。

「あ、わたし、送ってもらってるはずだよ。使う?」

 わたしは彼女の返事を聞く前に、ダンボール箱を開けて、割れないように新聞紙で何重にもくるまれたポットを出してみせる。

 ガラス製の透明なポットに、部屋の景色がゆがんで映る。

「素敵なティーポットね。じゃ、使わせてもらおうかしら」

 彼女はティーポットを受け取ると、やかんでお湯を沸かし始める。

 その間に、わたしはティーカップを二つ準備しておく。

「食器とか、持ってこなかったんだ?」

 いくつかの紅茶の缶を見比べている彼女は、とても真剣に、けれど楽しそうに茶葉を選んでいる。そんな人なら、茶器は一通りそろえているはずなのに。

「ええ。割れるのが怖くって。輸送費も案外高いから、こっちで安物を買おうと思っていたの」

 彼女は、軽く湯気が立ってきたお湯をティーポットに注ぐ。じんわりと水蒸気がポットの中をめぐって、内側に滴が落ちていく。

 それからやかんをまた火にかけて、彼女もいったんテーブルに着いた。長い足を組んで座る仕草がかっこよくて、わたしは思わず自分の足をなでてしまう。

「あ、自己紹介しようよ。わたしはセア・アウロラ。アローネから来たの」

「私は、アズリ・カミセよ。ジェウェル地方出身よ」

 ジェウェル地方と言えば、宝石の産地で有名なところだ。誓都の一つクライスタルに守られたジェウェル地方は、サバンナという乾燥した気候で、宝石の他に美人も多いらしい。

 そう言われたら、アズリの美しさにも納得がいった。

「誕生日は? わたしはさっきも言ったけど、九月の二十一日だよ」

「その誕生日だと、あなたがクラスで一番早く年上になりそうね」

 確かに、一月から八月までは早生まれで一つ下の学年になるから、可能性はあると思う。

「だ、だめ?」

「ダメではないわ、不思議なだけよ。私は、二月十四日生まれよ」

 なんだか今、とても失礼なことを言われた気がする……。

 アズリはそんなわたしを見ないようにして、沸騰したやかんの火を止めた。そしてポットを温めていたお湯をティーカップに移した後、やかんのお湯をティーポットに注ぐ。

 それから、紅茶の葉を、ひとさじ、ふたさじ、ティーポットの中に落として。

 紅茶の葉が、蜜色を振りまきながら、踊っている。

 可憐なダンス。

 深い味わいと優しい香りを与えられる喜びを紅茶自身が謳歌しているよう。

「でも、セアは荷物多いわね?」

「うん、食器とか、お洋服とか。あ、食器は多めに入れてもらったはずだから、アズリも使っていいよ」

「それは助かるわ。これから必要なものそろえるのに、街に行こうと思っていたから。買う物は少しでも少ない方がいいし」

 ティーカップに、蜜色の紅茶が注がれていく。

 その途端に、ふあり、と広がる柔らかな香り。

 心を直接なでられているみたいで心地いい。

「お買いものいくの? わたしも一緒に行っていい?」

「それは嬉しいけれど、明日はもう入学式よ。休んでいなくていいの?」

 アズリの問いかけに、わたしは大きくうなずいた。

「うん、クノウァの街ももっとみたいし、アズリともっと話したいもん」

 白い陶器に当てられていたアズリの薄い唇が、そっと離れる。そのほほえみは、淡く、戸惑いがちで。

「不思議ね」

「わたし、ほんとに十五才だよ!」

 わたしがほとんど反射神経のように声を上げるのに対して、アズリはそうじゃないわ、と笑いだしてしまった。

「寮生活が二人暮らしって知ってから、私、不安だったのよ。ルームメイトと仲良くできるか、できても、すごい時間がかかるって思ってた。なのに、あなたったら、こんなに笑わせてくれるし、食器も貸してくれるし、本当に、いい子に会えたんだなって、そう思うと、不思議になったのよ」

 アズリも、わたしと一緒だったんだ。

 不安で。

 怖くて。

 会うことにも、ためらいを覚えてしまうくらいに。

「運命だったんだよ。わたしたちが、出会えたのは。あの公園からね」

 自信満々でわたしはアズリに教えてあげた。

 出会いはいつだって奇跡で、二人の軌跡。

 だから、いつだって大事にしなくちゃいけないの。

「そうね。優しいルナエルに感謝をしないと」

 ルナエルはこの世界を形作った十六の神様の一柱で、運命と慈愛を司っている。いつでもわたしたちを愛してくれるお母さんのような存在だ。

「アズリ、博識なんだね」

「あら、それはちゃんとわかるセアも頭がいいって自慢かしら?」

「え、あ、ち、違うよっ」

 くすくすと笑うアズリの瞳はいたずらっぽい光が宿っている。

「冗談よ」

 この感じ、わたしよく知ってる。

 エアルスが家にいた時と同じ雰囲気だ。

「いじわるはいやだよ……」

 小さく、そう漏らすと、アズリはより一層目を細めて。

 上目づかいなわたしを見下ろしていた。

 身長差があるから仕方ないけど、それだけじゃない。

「そういう態度が、余計に意地悪したくなるのよ」

 そう、楽しげにアズリは返してきた。


 ***


 翌日、朝の気配が足を踏み入れた頃に、わたしはアズリにほっぺをたたかれていた。

 深い眠りから急に意識を呼び起こされたせいで、うまく頭が働いてくれない。

 ぱちぱちと目を瞬かせても、焦点が合うのは覗きこんでくるアズリの整った顔ばかり。まだ結ばれていない髪が、さらさらと肩までこぼれていて、キレイ。

「起きなさい、セア! もう八時なのよ!」

 だんだん、アズリの声が鮮明に耳に響いてきた。

 八時……入学式は、九時半集合だったはず――九時半?

「あと一時間しか――!?」

「きゃっ!?」

 時間のなさに気づいて、慌てて頭をあげたわたしは、見事にアズリと額をぶつけあってしまう。

 わたしはびっくりしただけだけど、アズリはうずくまって動かなくなってしまった。

 朝が弱くて、起こしてもらいやすいからと、もらった下のベッドからはい出して、わたしはアズリの様子をうかがう。

「ご、ごめんんさい。あ、アズリ、平気?」

「――もう、セアは起こさない」

 額を押さえたまま、アズリはそう返してくれた。

「え、ええ! わたし、朝起こされないと毎日遅刻しちゃうよ!」

 アズリは黙ったままで。

 嫌われたのかもしれないと思うと、怖くなってくる。

 なんとかしなくちゃ。

「あの、アズリ、ほんとにごめんね」

 わたしからはアズリの震える背中しか見えなくて。

 そんなに痛かったのだろうか。

 許してもらえないのかな。

「わざとじゃないんだよ? びっくりしちゃって、その――」

 そこまで言いかけて、アズリが小さく声をもらしているのに気づいた。くぐもった音は、のどの奥から出されているようで、ひどく聞き取りにくい。

 心配になって、アズリの顔を覗こうとすると、ふいっと顔をそむけられてしまった。

 けれど、ちらりと見えたんだ。

「アズリ、笑ってる!」

 わたしにばれたとわかった途端、アズリは声を我慢するのを止めて、思いっきり笑いだす。

「だって、そんなに必死に、謝って、かわいかったんだもの――」

 そう言う間にもアズリは笑い声を混じらせている。

 心配して損した。

「ひどいよっ」

「あら、私も本当に痛かったのよ?」

 抗議するわたしに対して、アズリは赤くなった額をなでた。

 うん、まぁ、お互い様ってことで。

「ほら、準備しなくちゃいけないわよ。遅刻したら大変でしょう」

 目をそらすわたしに、そう言ってアズリはバスルームにある洗面台にうながしてくれる。

 言われるままに急いで歯をみがいて、顔を洗ってから戻ると、アズリはパジャマの上を脱いで、ブラウスに手を通していた。

 アズリは、細い。

 手足はすらりと長いし、ウェストも綺麗なラインでくびれている。

 むだなものがついていないような体つきだ。

「セア、髪まだ濡れているわよ。ちゃんと拭きなさい」

 アズリがわたしの視線に気づいたのか、振り返った。

 でもわたしは、アズリから目が離せない。

 あそこも、むだなものなのかな?

 アズリになされるがままに、長い髪についた水気をタオルで拭ってもらっていたら、ふと、アズリの手が止まった。

「セア、どこ見ているの?」

 わたしの目線にはちょうど、ボタンの閉められていないブラウスをはおったままの、アズリの胸が見えていた。すとん、と上から下へ降りている気がする。

「言っておくけど、あなたの大きさがおかしいのよ!」

「だ、だれもちいさいなんて言ってないよ!」

「目がそう語っていたわ! 背が低いくせに、こんなに胸があるなんて生意気よ!」

「うなぁ!?」

 アズリに胸をわしづかみにされて、わたしは思わず声をあげた。

 けれどアズリは怒りをぶつけるように、手に余るわたしの胸をもみ始めた。

「や、やめてよ、アズリ!」

「うるさいわ。さっきの額の仕返しよ」

 妥当なようで理不尽な理由で、わたしはいじめられ続けた。

 そして、そんなことをしていたせいで、わたしたちの準備が終わったのは遅刻ぎりぎりな時間だった。


 ***


 式典会場は、クノウァ文化学園高等部敷地内にある講堂だった。ここもやっぱり寮と同じで――ううん、 それ以上に大きい。アローネで一番大きい教会の大聖堂に匹敵するんじゃないかなって思うくらい。

 そしてわたしたちと同じ新入生たちが、新品の制服に身を包んでひしめきあっている。

「何人くらいいるのかな?」

 視界を埋め尽くす人の数に、疑問が浮かぶ。かなりの人がいるけれど、講堂にはまだまだ面積に余裕があった。

「高等部九学科全員で、だいたい三千人のはずよ」

 アズリのあげた数字にわたしは言葉を失った。

 中学校は全校生徒で八百人くらいしかいなかったのに、一学年でその三倍いるだなんて。

 さすがは都会……って、アローネも誓都だから、じゅうぶん都会だったね。

 でも、アローネは海中都市だから、人口も少なかったんだよね。わたしにとっては当たり前だったけど、海の中で生活するのって、たいへんなことらしい。

「私達の魔法科も、学年に百八十人いるのよ」

 それでも全学科の人数から見れば、魔法科の生徒はかなり限られてる。それほどに、このクノウァ文化学園で魔法を学ぶということは難しいんだ。

 そんなことを考えていたら、隣に座っているアズリの視線がわたしに向けらていた。

「どうしたの?」

「いえ……セアも、魔法科っていうのが、不思議になって」

「なんで?」

「だって、朝は起きられないし、背は周りと頭一つ分小さいし、扉の段差で転ぶくらいドジだし、確かに優しくていい子だけど、ここまで手のかかる子が入れるところなのかと思うとね」

 アズリの言葉ひとつひとつが胸に突き刺さる。

 昨日会ったばかりの相手にここまで言われるなんて……。

 その上、どれもほんとうだから余計にダメージが大きい。

 そんなふうに落ち込んでいたら、明かりが消えた。

 周りもざわめくのを止める。

 式典が始まるんだ。

 そして、耳に弦の響きが届く。

 続いて軽快なピッコロに、切ないフルートが折り重なって。

 金管が音の衝撃をぶつけてくるのと同時に、縦横無尽に雷が講堂の中を巡り、わたしたちの視界を白で埋めつくした。

 ひやり、と肌を水の流れが冷やす。

 空中から生み出されたその流れは、細くたなびくヴェールのように、オーケストラの響きに揺られながら、わたしたちの視線を前方にあるステージに導いた。

 そのステージが、淡やかな光に照らされる。

 水の流れがうずをまいて、はじけた。

 黒髪を振りゆらめかして。

 水しぶきを飛ばしながら。

 そこにいたのは、赤いドレスに身を包んだ女性。

 高いヒールを鳴らして、踊る。重奏に誘われて、水のヴェールに寄り添われて、軽やかに、優雅に、その印象を移ろわせながら。

 その左手がひるがえれば、ヴァイオリンを伴奏に水の流れがわたしたちの頭上で、身をよじり、身をひねり、『入学おめでとう』と軌跡を残して。

 その右手が上げられれば、シンバルが耳を叩き、雷がわたしたちの目の前で、弾けて、走って、心臓を跳ねあげる。

 そして、風がステージに集っていって。

 女性がドレスのすそをめくられながら、風に乗って宙に浮かぶ。

 ステップを踏みながら、くるりと、逆さまになってわたしたちの上へ飛ぶ。

 ひらひら、ひらひらと、木枯らしに踊る落ち葉のように。

 けれど、けして落ちることはなく。

 風と水と雷とをまとって、ヴァイオリンとフルートとホルンとを伴わせて、踊る。

 それから、一番後ろ、入口のところに降り立って。

 今度はわたしたちの間で、ステップを踏む。

 雷が走り、スレンダーな体を一瞬だけ浮かび上がらせて。

 たなびく水が、魅惑的な腰つきに合わせて、ゆらめいて。

 時折、風に乗って、隣の通路に入り。

 ひとりひとりを歓迎しているように。

 その姿を魅せながら。

 かと思えば、急に走り出して。

 ステージまで一直線。

 重奏も焦るように、早く、早く。調和までも乱しながら。

 泡たつ水の流れがステージの中で渦巻いて。まるで、卵のよう。

 その透き通る球体に飛び込んだ途端、音と雷が一際強く、衝撃を放って。

 わたしたちの、視覚も聴覚も、切り取られた。

 響く沈黙に、瞬く暗闇。

 それに気を取られたすきに、女性も、水の流れも、ステージから消えていた。

 戸惑いと感動の静寂が講堂いっぱいに広がって。

 それから、拍手が嵐のように鳴り響いた。

 もちろん、わたしも手が痛くなるくらいに手をたたき続ける。

 その拍手が終わらないうちに、ステージの真ん中が輝いた。描かれる金色の魔法陣は、転送魔法のもの。

 光がこぼれて、演説台と、それから、落ち着いた雰囲気とゆったりとしたローブをまとったおじいさんが現れた。毛の薄い頭にはひし形の学帽が乗っていて、白いおひげを豊かに伸ばしている、その姿には見覚えがあった。

「こんにちは、皆さん。私はクノウァ文化学園学長ハルモニ・コンデュクトルです。まずは、入学おめでとう。君達のような、優秀で未来の希望溢れる若者達が、この学園に来てくれたことに喜びを感じています」

 学長は見た目通りおだやかな声音で、わたしたちに話しかけてきてくれた。優しいおじいちゃんっていう感じだ。

「先程のパフォーマンスは、君達の先輩である舞踏学科三年のフローヴェル・ナウさんを中心として、魔法学科、音楽学科の生徒との共同演出でした。例年は、学科を越えて入学式典で演じることはなかったのですが、私は彼女達のパフォーマンスに感動を覚え、また偉大なることだと思っています」

 学長の言う通り、この場にいるだれもがあのダンスには感動してると思う。

 繊細だけど激しく、優雅なのに昂奮をかき立てて、壮麗であって魅惑的だった。

「では、何故、彼女達のパフォーマンスは素晴らしかったのだと思いますか」

 どうしてって、それは技術が高いのもあるけど、けど、それよりも――。

「技術が高いから。彼女達が才能豊かだから。それらは、確かに今のパフォーマンスを高めているでしょう。しかし、感動はそこから湧いているのではありません」

 そう、あのダンスはすごかったのは、オーケストラと魔法と一緒だったから。その二つと寄り添って、折り重なって、溶け合っていたから。それから――。

「彼女達はお互いの演出を認め合い、寄り添いあい、しかし、任せるのではなく、最高のものを、調和させたのです。君達に魅せるために」

 わたしたちに向かっていた。あの人たちのすべてが、ひとつになって、心の奥に、体の底に、魂の元まで響いてきた。まっすぐに、わたしたちを見ていてくれたんだ。

「そう、君達を歓迎するために。忘れないでいてほしい。作品とは、そういうものなのです。ともすれば、創作のためには、他人など、他人の評価など、関係ないというものがいる。それは、創作者ではないと、私は考えます。また、他人の目や評価ばかりにとらわれて、自分らしさを失うことも同じです。それは何故か」

 強く、学長の言葉がわたしたちに届く。

 さっきのダンスのように。

 本気でわたしたちに語りかけている。

「創作とは、コミュニケーションだからです。君達が創作した作品の向こうには、必ず受け取り手がいる。私達は、作品を通じて、語り合うのです。隣の友人達と。尊敬する人々と。まだ見ぬ方々と。創作とは対話なのです。対話という語り合いには、自分と相手がいるのです。だから君達には忘れないでいてほしい。作品の向こうにいる人の気持ちを考えることを。そして、自分の気持ちを相手に伝えることを」

 学長はそこまで言って、講堂を一度見回す。

 その途中で、わたしも学長と目が合った。

 しっかりと、まっすぐに。確かに、わたしが見られていた。

 学長は、わたしに言葉を伝えようとしてる。

 わたしも、ちゃんと聞かないといけない。

 目が合ったのは、ほんの一瞬だったけど。

 わたしはもう、学長から目が離せなくなったんだ。

「君達が思い描いているものを、伝えてほしい。輝く傑作を創作してほしい。ここは、そのためにあるのです」

 学長の話が終わるのと同時に、また拍手が起こった。

 さっきほど激しくはないけれど、その重みはおんなじで。

 それこそ、その後のいろんな人の祝辞がどうでもよくなるくらいに。

「すごかったね」

 入学式が終わってすぐ、わたしはアズリにそう話しかける。

 胸の奥から感情があふれ出して、早く言葉にしないと苦しかった。

 わたしと同じ気持ちでいるんだと、安心したい。

「ええ。本当に、なんて言ったらいいか分からないくらいに、素晴らしい踊りと、それから、お言葉だったわよね」

 アズリがそう返してくれて、よかった。

 胸の奥に溜まっていた空気が抜けていくみたいな感じ。

 わたしは自然と、胸をなで下ろして。

 ほっとする。

「えっと、これから教室にいくんだっけ?」

「その前に、クラスの確認でしょう」

 すっかりこの後の予定を忘れてしまったわたしに、アズリはあきれ気味だった。

 確かに、クラスがわからないと迷子になるもんね。

 クラス分けは校舎に張り出されているはずだ。

「おんなじクラスだといいね、アズリ」

 講堂から校舎まで――わたしたちの通うことになる魔法学科棟は、歩いて十数分かかる。下り道だからまだ楽だけど。

 ぴょんぴょんと跳ねながら降りるわたしの後ろを、アズリはゆっくりと着いてくる。

「セア、あなたちゃんと入学書類読んだのかしら?」

「え? わたしは母様に書いてもらったの。どうして?」

 わたしが振り返ると、アズリはため息をはき出してた。

「ルームメイトはクラスメイトから選ばれるのよ。入学書類に書いてあったのに。セアって本当に箱入り娘なのね」

「そ、そんなことないよぉ」

 でも、高校生になるんだったら、ちゃんと自分でやらなきゃいけなかったのかな。これからは、母様には頼れないんだし、しっかりしないといけないよね。

 わたしが決意に満ちてひとつうなずいたら、慈愛のこもった目でこちらを見るアズリと目が合った。

「な、なぁに?」

「いいえ。セアはかわいいなって思っただけよ」

 アズリの言葉に、わたしはほっぺが熱くなる。

 もう、そういう不意打ちもエアルスそっくりだ。

 わたしはまたステップを踏んで、道を降っていく。

 さっきよりも体は軽やかで。

 自然と好きな歌を口ずさみながら。

 それから、校舎の玄関前にあったクラスを確認したら、やっぱりわたしとアズリは同じクラスだった。

 校舎の造りは、中学校とそこまで変わらない。三階建てで、玄関に入ってすぐ保健室が見えた。Eの字になるように棟がつながっていて、二階の通路に職員室が、三階の通路に図書室があるみたい。

 けれど、この校舎は魔法学科とメディア学科と文芸学科の教室しかない。ここから離れた場所にもう二つ校舎があって、そこに残りの六つの学科の生徒は通うらしい。

「セア、キョロキョロしていたら迷子になるわよ」

 だいじょうぶだよ、と言う前にわたしはアズリに腕を引かれてた。

 アズリに連れられて、わたしたちの一年A組に向かう。

 教室にはもうみんな集まっていて。

 わたしたちは最後だったみたい。

「セア、出席番号はわかってるわよね?」

「さ、さすがにそれは覚えてるよ。わたしは三十八番。アズリは?」

「私は二番。席、離れちゃうわね」

 ほんの少しとはいえ、アズリと離れちゃうのは心細いな。距離にしたら、ほんの数メートルだけど、それでも隣かどうかっていうのとは全然違う。

 席に着いても、ついアズリの方に視線が行っちゃう。

「ほら、席に着けー」

 不安を紛らわせるために首元にたれている髪をいじっていたら、まだ若い男の人が教室に入ってきた。出席簿を手にしてるから、担任の先生なんだろうけど、先生っていうより、なんだかお兄ちゃんって感じの人だ。

 入学式で話していた先生がみんなお年寄りだから、余計にそう思うのかもしれないけれど。

 先生はざわめく生徒たちをなだめながら、教壇に立つとみんながちゃんと席に座ってるか、確認した。

 それから、咳払いをひとつ。

 それが、若いなりに生徒に威厳を見せようとしてるようで、ちょっとおかしかった。

「こんにちは。このクラスの担任のライル・エレクトリシティだ。中学校と違って、高校では教科ごとに先生が変わるから、担任と言ってもずっとここに立っているわけじゃないが、相談とか、気軽に言ってほしい。それと、先生の担当科目はみんなが大好きな魔法学だ」

 ライル先生は自己紹介をしながら、黒板に『Ryle Electricity』と名前のスペルをつづった。

 言葉は軽い調子だけど、中身がないってわけじゃなくて、親しみやすい。どことなく、顔立ちも愛嬌があって……そう、ネコちゃんを思い出す。そう思ったら、細いブロンドの髪も猫っ毛で跳ねてるし、青い瞳もネコっぽく見えてきた。

「どうした、セア。先生の顔になにか付いているか?」

 なにも考えずにライル先生の顔をじっと見ていたら、気づかれてしまった。あわてて首を横に振って、否定する。

「先生、生徒の名前、もう覚えているんですね」

「ああ、ちゃんと覚えたぞ、アズリ。君達のクラス担任に決まってから、入学書類のコピーと毎晩にらめっこしてな」

 アズリが先生の気をそらしてくれて、助かった……。

 それにしても、入学前からみんなの名前を覚えるだなんて、すごい人なんだ。ほんとうに、わたしたちを待っていてくれたんだ。

「おっと、まだやることがあるんだった。とりあえずは出席ついでに自己紹介をしてもらおうか。先生が呼んだら、返事をして、名前と出身、それからみんなに一言言ってもらおうか」

 自己紹介は新しいクラスの恒例行事だよね。

 でも、わたしはこういうの苦手なんだよぉ。

 中学校でも、うまくしゃべれなくって、自分でもなにを言ってるのか、わからなかったし……。

 そんなわたしでも、ライル先生が上手に話をうながしてくれて、なんとかまともに話せていた。

 やっぱり、しゃべるのが上手なのって、すごいな。それだけでも尊敬しちゃう。

「よーし、みんな仲良くするんだぞ。次は――うん、明日のことから話そうか。今から時間割を配るから、前から回してくれ。明日から授業が始まるから、寝坊するなよー。一時間目は魔法学だから、いなかったら泣くぞー」

 先生の最後の一言に、何人かが笑い声をあげたけど、わたしは笑えなかった。

 ちゃんと起きなくちゃ。

 回ってきた時間割りを見ると、明日の天曜日は魔法学から始まって、六時間目まで授業がある。けっこうたいへんだ。

「それから、三時間目からは健康診断だけど、女子は昼を抜いたりするなよ。たった数百グラムしか変わらないからな」

「先生、なんで三時間目からなんですかー?」

 男子生徒の一人がそんなことを質問した。

 確かに、朝からやったほうがあわただしくならない気がする。

「ん? ここは山の中だろ? 内科の先生とかが来るのに、時間がかかるんだ」

 お医者さんも大変なんだね。

 でも、数学がなくなるのはちょっとうれしいな。

 それから、明日から部活の体験入学も始まるらしい。

 ちょっと目まぐるしい感じだ。

「で、これが今日の最後だな。このクラスに、入試の首席と次席がいるから表彰するぞ。みんな、拍手するように」

 へぇ、このクラスってすごい人がいるんだね。

 いったい、だれなんだろ?

 周りを見ても、みんな優秀そうだから、見当もつかない。

「次席はアズリ・カミセだ」

 ライル先生の言葉に、わたしは窓側の席の一番端に座っているアズリを見た。

 アズリってやっぱりすごい魔法使いだったんだ。

 自分のことでもないのに、うれしさがこみあげてくる。

 アズリはというと、体をすこしこわばらせていて、動かなかった。アズリ自身も驚いているのかもしれない。

「次席、ですか……?」

 ぽつり、とアズリはそうもらした。

 その声音がなんだか変な感じだ。

 信じられないっていうような雰囲気の響きがある。

 アズリはあんなにレベルの高い召喚ができるんだから、もっと自信を持っていいのに。

「ああ、素晴らしいぞ。さ、表彰するから、前に出てきてくれ」

 ライル先生にうながされて、アズリはやっと立ち上がった。その動きもなんだかぎこちなくて、前に出るまで視線もクラス中をさまよっている。

 なんだか、だれかを探しているみたい。

 だれを探してるんだろう?

 なにがそんなにアズリを戸惑わせてるんだろう?

 じんわりと、不安がわたしの中に染み渡る。うまく言えないけど、イヤな予感がする。

「あめでとう、アズリ」

「あり、がとう、ございます」

 アズリは先生から賞状を受け取るのも、ためらっているようだった。

 それから、今度は周りをけっして見ないで、逃げるように席まで戻っていく。

 落ち込んでる?

 なんとなくだけど、そう思った。

 でも、どうして?

 とてもすごいことなのに、なんで?

「それで、首席はセア・アウロラだ」

「へ?」

 アズリのことばかり気にしていたせいで、自分でもまぬけに聞こえる声が出てしまった。

 ポニーテールを振り乱してこちらに振り返ったアズリと目があった。信じられない、とその瞳が語っている。

 今、呼ばれた?

 わたしがその事実を認識できたのは、アズリの視線を確認した後だった。よく状況が理解できなくて、ライル先生のほうをぼう然と眺めていたら、先生は思いっきりため息を吐き出した。

「あのな、二人して先生を困らせないでくれ」

「え? わたし?」

 それでも信じられなくて、わたしはライル先生に聞き返して。

 その青い瞳を見返してる。

「そうだって。名前読んだだろ、今」

「ええええぇぇえ!?」

 あまりの驚きに、思わず席から立ち上がって叫んでしまった。

 首席?

 わたしが?

 いちばん?

「せ、先生、まちがえてないですかっ?」

 おかしいよ、わたしなんかが一番だなんて。

 入試試験だって、解くのに半分の時間しか使わないで、後はひたすら魔法のこと考えてたのにっ。

「間違えるか、こんな大事なこと! いいから早く出てきて表彰させてくれよ!」

 ついにライル先生が泣きそうな声を出してしまったので、わたしは急いで前に出ていった。

 その間、わたしのことをずっと見つめてくるアズリの視線を感じながら。

 痛い。

 なんだろう。

 わたしは、ほんとうにあの賞状を受け取っていいの?

 疑問を持ったまま、わたしはライル先生の前に立って。

 先生が読み上げる賞状の内容も、耳をすり抜けていく。

 もう、わたしはそれを受け取るしかなくて。

 アズリの見開かれた瞳に、ただひたすら不安を感じてた。


 ***


 ホールルームが終わって、夕焼けに向かう寮までの帰り道。

 アズリは前を歩いてて。

 わたしはその後を追っていた。

 もうずっと、無言のまま。

 教室を出た時から、距離は縮まらないまま。

「あ、アズリ?」

 わたしは、せいいっぱいの勇気を出して、アズリに声をかける。

「なに?」

 アズリは、振り返ってはくれないけれど、返事をしてくれた。

 それが、すこしだけわたしに安心をくれた。

「あの、怒ってる?」

「――どうして? セアは、怒られるようなこと、していないでしょう?」

「そ、そうだけど」

 じゃあ、なんで、振り向いてくれないの?

 なんで、あんな目でわたしを見ていたの?

 なんで、無理をして平気をよそおっているみたいに、声がこわばっているの?

「アズリも、すごいよね。次席だもんね」

「あなたは、首席でしょう」

 やっぱり、ほんのすこしだけど、声にトゲがある。

 気にしなければ、いいのかもしれないけど、それでも。

「アズリ……こわいよ」

 こわいよ。

 今にも、手を上げられて、追い出されてしまいそう。

 近寄らないで、って拒絶されそう。

 突き放されてしまいそうで。

 こわかった。

 そばにいてほしくないんだと。

 わたしがここにいてはいけないんだと。

 そう言われるのが、こわかった。

 居場所を失うのが、こわかった。

 わたしは足が動かなくて。

 アズリは振り返ってくれなくて。

 すたすたと前を歩いていく。

 置いていかれてしまう。

 わたしが追いつけないところまで。

 きっと、追いかけるのも許されなくて。

 ここで、じっとしてるしか、ないんだ。

 そう思って、ただアズリの後ろ姿を眺めてる。

 アズリのポニーテールがさらさらと、ゆれて。変わらないリズムが、アズリがわたしを必要となんてしてないんだって、思い知らさせるようで。

 ものすごく、かなしくなってしまう。

 不意に、アズリが立ち止まった。

 寮までの下り道。

 わたしから見たら、アズリはまるで夕焼けを背負っているようにも見えて。

 一日の最後を告げる太陽のなげきが、目に痛い。

「セア、もうはっきり言うわね」

 体が勝手に震えてくる。

 耳をふさぎたい。でも、聞かなきゃいけない。

 ここに立ち止まる勇気がほしくて、胸元に手を伸ばす。

 しっかりと、わたしの手のひらに返ってくる固い感触。エアルスからもらった、ペンダントを握りしめる。

 お願い、わたしを守って。

 どんなことを言われても、くじけないでいられるように。

「私はね、セア。一番にならないといけないの。でも、今はあなたが一番でしょ。なら、セアは私のライバルよ」

 ほんとうに、はっきりと言われた。

 アズリの強い意志を宿した黒い瞳に射抜かれて。

 わたしは身じろぎもできなかった。

 まっすぐなその瞳が、黒曜石のように綺麗で。

 それなのに、どこまでも哀しかった。

「絶対に、負けないから」

 その言葉を最後に、アズリはわたしを見なくなって。

 また寮へと歩き出したんだ。

「待って――待って、アズリ!」

 わたしは、すぐにその後を追いかけたけれど。

 ぜんぜん、追いつけなくて。

 のばした手は、空をさまようばかりで。

 何度、呼びかけても、アズリはもう振り返ってくれなかった。


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