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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

魔王討伐を畏れられた勇者は称賛のために人類への復讐を誓う

作者:

あれからどれほど経っただろうか?魔王討伐の俺の人生で最も輝かしかった時から。今となっては痩せ細った体にボロボロの布切れ一枚にズボンを履く傍目から見たらホームレスのような外見だ。


魔王討伐をしたときの俺は、周囲からさぞ周囲から持て囃され祝福を浴びると思っていた。しかし現実は思い通りにはいかないもので、人々の反応は俺の想像と違った。町に帰ると人々は俺を見るなり逃げるかのように家に帰り、俺を勇者として送り出した町の長は家から出迎えることもせず家の門番に俺を突き返させた。町の皆のあんまりな態度に落胆しながら俺は町の外れにある長い間空にしていた我が家で原因を考えたが、答えはわからなかった。が、しかし翌日すぐその答えがわかった。

その日は早朝から外が騒がしく不思議に思い窓から外を見ると俺の家を囲うように大勢の兵隊がいた。訳が分からず外に出ると兵隊は持っていた槍を一斉に俺に向けて構えてきたのだ。

そして兵隊の長のような男が俺に言った。

「化け物めおとなしく投降しろ!」

化け物?俺が?

何が何だかわからなかった。

俺が本気を出せばそいつらを一網打尽にすることは容易だったが、突然の出来事に脳の処理が追い付かず言われるがままに俺は投降してしまった。

それから俺は後ろ手に手錠をかけられ、町の近くにある王国の城の地下牢に幽閉された。


それから現在に至るまで俺は地下牢で過ごしてきた。逃げ出したい何度もそう思った。いや、逃げ出そうと思えば簡単に逃げ出すことは出来るのだが、勇者であるという俺の肩書がそうはさせなかった。しかし、俺が我慢を強いられるのは今日までだ。


思ったのだ、否思い続けていたのだ俺がこんな扱いを受け続けるのはやはりおかしいと。そこで考えてみたのだ。どうすれば望んだとおりの扱いを受けるのかを。まず、何故俺が魔王を討伐することで皆から称賛されると思ったのか考えてみた。

答えは簡単だ。あの時人間は魔族から迫害を受け、常に魔王からの支配に怯え、日々の暮らしすらままならなかった。俺の魔王討伐はその恐れや迫害から解放し、自由を人々にもたらすことになるからだ。

ということは、もう一度同じ状況にある種族を同じように救ってやれば俺の望みはかなえられるのではないかと考えた。つまり魔族だ。地下牢にいるはずの俺が何故そんなことがわかるのかだって?隣の牢の奴に聞いただけだ。人間が今までの恨みを晴らさんと壮絶なまでの迫害を魔族に加えていると。魔王を失い力を失った魔族は死ぬまで奴隷として働かされ、人間の都合で家族が引きはがされている。そんな魔族を救ってやれば俺は望んだ通りの称賛を受けることができる。だが、そうすれば俺は勇者ではなく魔王となるだろう。それでもいい。そう思った。


そして今日が魔王への第一歩を踏み出す日だ。

さて、動き出すか。牢の鉄柵を掴み力を込める。俺にとっては鉄なんて粘土みたいなものだ。簡単に人が通れるほどの隙間ができた。

他の牢の奴はどうしようか?殺すか?

いや、放っておこう。俺がこの国を滅ぼせば管理するものがいなくなりいずれ死ぬだろうしな。


「おい、お前何やってんだよ。俺も出してくれよ」

前の牢の奴がうるさいな。ムカつく。こいつは殺ろう。

他の奴まで騒ぎ出しやがった。

牢の柵を破壊してやると俺は奴の牢の中に入った。


「助かったぜ、俺は...」

うるさい口を塞いでやると俺はもう片方の手で首を掴んだ。

奴は俺の手をひっかきもがいた。

だが俺はそんなことは気にも留めず首を掴む手に渾身の力を込める。

絞られた首から血が溢れ出す。

奴のもがく腕は力なく垂れ下がった。

首から手を離すと奴は人形のように崩れ落ちた。

不思議と心地よい感覚が訪れた。

それを見た他の牢の住人は騒ぐのをやめ、地下牢エリアは静まり返っていた。


しかし、奴らが騒いだせいで城の兵が5人このエリアへと降りてきた。

「おい貴様、何をしてる。大人しく膝をつけ!」

兵の一人が威勢よく言い放った。

しかし、体は正直なもので兵の剣を握る手は震えていた。

剣か丁度いい。武器はもっといたほうがこれから楽だろうしな。

怯える兵の制止を無視して歩を進める。

「おい!止まらないと殺すぞ!」

震える声で兵は言うが俺は奴の剣先の前にまで来た。

どう殺してやろうか?

そう考え一瞬足を止めると胸に重い感触がした。

胸を見ると剣が刺さっていた。

だが不思議と痛みはなかった。

そのまま歩くと兵と腕一本分くらいの距離まで来た。

兵は恐怖で足が動かないのか立ち尽くしている。

俺は兵の首を狙って手刀を放った。

兵の体は防御することもなく胴と首とに分かれた。

俺は胸に刺さった剣を抜くと残りの4人の首も次々と刎ねた。

先程よりも強い快感が俺を支配した。

こんなに気持ちいならもっと早く始めればよかった。

そう後悔しながら地下牢から上につながる階段を上った。


上りきるとそこには平和な日常があった。

俺の視界は怒りで赤く染まった。

それから俺は本能が赴くままに視界に入る生物を両断して回った。

人々の悲鳴、血しぶきが飛ぶ音が耳に心地よかった。

5分程暴れただろうか?

するとどこからともなく大勢の兵隊が現れ俺を囲んでいた。

そしてあの時の、俺を連行していった兵の長が言った。

「やはり、お前は勇者なんかではなく化け物だったようだな。今度は容赦はしない。その命ここで終わらせてくれる。行け、兵達よ!」

その合図と共に兵達は各々の武器をかかげて俺に攻撃をしかけてきた。

遅い。俺の目には止まって見える。

俺は剣を構えて走り出した。

次々と兵の首が舞い上がる。まるで花火のように。

俺は爽快感を感じた。

どれ程走り回っただろうか?

あとは一人だけとなった。

奴だ兵の長だ。

こいつには言っておきたいことがある。

「俺は勇者だった。お前らの仕打ちが俺を化け物にしたんだ。いや、魔王かな」


「ふざけたことを言いやがって。俺は他の兵とは違...」

こいつの汚い声は聞きたくない。

何かを言っていたが言い切る前に首を切ってやった。


さあ、兵は殺りきった。あとは王だな。俺にこんな仕打ちをした黒幕だな。簡単には殺さん。

城の真ん中に堂々と構える大きな階段を一歩ずつ踏みしめる。

階段の両端は金色の荘厳な装飾に飾られていた。

装飾品に俺の姿が映る。

身体の形は人と変わらないが、肌は青色に変色し目は白目を剝いている。そして額に3つ目の赤い眼が備わっていた。

本当に化け物みたいじゃないか。

少し落ち込むが直ぐに喜びに変わった。

そうだ、俺は魔王になるんだ。人々の畏れる存在になるんだ。これでいい。むしろこれじゃあまだインパクトに欠ける。

そう思っているうちに王の間の入り口へとたどり着いた。

無駄に大きい扉を蹴りで破壊する。


「な、なんだ。何事じゃ!」

王の戸惑いの声が王の間に響く。

なんて耳障りな声なんだ。

俺は奴に向かって速足で進む。

「お、おい化け物、こっちへ来るなー!」

悲鳴が響きわたる。

「お前が王で間違いないな?」


「黙れ、化け物!」


「そうか」

俺は腰を抜かしている王の右足を踏みつける。

骨が砕ける音と共に王の右足は潰れた。

王は声にならない悲鳴を上げる。


俺は淡々と次は左足を潰し、両腕を持っていた剣で両断した。

死、それとも俺への恐怖故か王の目からは涙がこぼれ落ちていく。

王は命乞いをしているのか口を動かすが声になっていなかった。

こんな奴に時間をかけるのはもったいないな。

もういいや手刀で首を刎ねる。

血しぶきが玉座を濡らした。


玉座を濡らした血の模様がなんとも美しく感じた。

これを俺の、魔王の玉座として使おう。

少し疲れたな。

俺は玉座に腰掛ける。

城中に漂う血の匂いが心地よく眠気を誘う。

俺の復讐はここから始まるのだ。そして魔族からの称賛を手に入れる。

そう心に誓い俺は瞼をゆっくりと閉じた。

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