表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

滅びの境界線

「……地球は、もう持たない。」


リサ・モリスは、NASAの最新解析データを見つめていた。


マントル対流の異常活性化——それは、地球の寿命を数百万年単位で縮めるどころか、あと48時間で崩壊させる結果となった。


「地殻の崩壊速度が加速してる……。あちこちで大規模な陥没が発生し、地表の重力が乱れ始めてるわ。」


「地球全体の膨張と収縮がランダムに起こっている。」


ジャックが指を滑らせながら画面を拡大する。


「重力異常が局所的に発生してる地域がある。たとえば、アフリカ北部では重力が一時的に増大し、人間の歩行すら困難になった。逆に、南米の一部では重力が弱まり、物体が浮遊する現象が発生している。」


リサは目を閉じた。


「……コアのバランスが完全に崩れたのね。」


地球の核は、マントルの流れによって安定を保っている。だが、爆発による影響で流れが予測不能なほど加速し、コアの膨張と収縮が繰り返されているのだ。


「このまま進めば、いずれコアの圧力が限界を超え、地球が内側から砕ける。」


ジャックが乾いた笑いを漏らした。「皮肉なもんだな……地球を救おうとした結果が、これか。」


NASAの緊急会議では、各国の代表が映像越しに集まっていた。


「日本の関東地方が沈降を始めました。」


「ニューヨークのマンハッタンが、部分的に崩壊した。」


「中国の黄土高原では、地面が裂けて発光する現象が発生。おそらく、地下のプラズマエネルギーが噴出してる。」


地球の終焉は、もはや時間の問題だった。


「残された選択肢は一つ——人類を可能な限り脱出させる。」


「各国の宇宙機関が、緊急避難用の宇宙船を発射する計画を進めています。」


NASAのスタッフが情報をまとめる。


「乗員は最大10万人。人類の総人口の0.001%にも満たない……。」


リサは苦々しく呟いた。「それで、人類が存続できるの?」


「生存確率は低い。でも、地球に残れば確実に死ぬ。」


「……。」


リサは視線を落とした。


「リサ、お前は優先リストに入ってるぞ。」


ジャックが言った。


だが、リサが探した名前は、ただ一つだった。


エミリー・モリス——彼女の娘の名前は、リストにはなかった。


リサは電話をかけた。


「ママ……?」


エミリーの声が震えている。


「迎えに行くわ。」


「ママ、こっちの空が変なの……赤くて、光ってて……。」


リサの胸が締め付けられる。


「大丈夫。ママが絶対に守るから。」


彼女は、地球最後の選択をしなければならなかった。


科学者として宇宙へ向かうのか、それとも母として娘と共に残るのか。


そして、彼女は決断した——。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ