地殻崩壊
リサ・モリスは、研究所のスクリーンに映る地震波データを見つめていた。
砂漠地帯の裂け目は拡大を続け、地下深くの構造が崩壊し始めている。それだけではない。世界各地で異常な現象が報告されていた。
・アマゾンの熱帯雨林で地面が陥没し、地下から有毒ガスが噴出
・南極の氷床が突如として割れ、未知の熱源が観測
・太平洋の海底プレートが崩れ、大規模な海底地震が発生
地球の異変は、もはや局地的なものではなかった。
「地球のコアに何かが起きている……。」
リサは唇を噛みしめた。
その時、研究チームのジャックが慌てた表情で駆け込んできた。
「リサ! 重力場の異常が、地球全体に広がりつつある!」
彼が示したデータには、地球規模の重力変動が明確に表れていた。
「まるで、地球が内側から引き裂かれているみたいだ……。」
その夜、リサはエミリーとのビデオ通話を繋いだ。
「ママ、帰ってきてよ……。」
エミリーの瞳には、不安が滲んでいた。
「ママがいないと、怖いよ。」
リサは胸が締め付けられる思いだった。
「もう少しだけ待ってね。ママが、なんとかするから。」
「……ほんと?」
その問いに、リサは一瞬言葉を詰まらせた。
「……うん、必ず。」
だが、その約束が守れるのか、自分でもわからなかった。
翌朝、リサたちは再び砂漠の裂け目に向かった。
空は不気味な赤黒い雲に覆われ、砂漠の風は灼熱を帯びていた。
「これまで以上に熱が放出されている……。」
ジャックが計測機器を覗き込む。
その時、地面が突如として激しく揺れた。
ゴゴゴゴゴ……!
裂け目が広がり、砂漠の大地が崩れ落ちていく。
「やばい! 逃げろ!」
リサたちは必死に駆け出した。
背後で、数キロに及ぶ砂漠の地面が陥没し、巨大な穴が形成されていく。
「地球が……沈んでいく……。」
リサはその光景を目の当たりにし、確信した。
これは、地球の終焉の始まりだ。
研究所に戻ったリサは、世界各地の科学者たちと緊急オンライン会議を開いた。
「このままでは、地殻が崩壊し、地球全体が連鎖的に沈み込む危険があります。」
画面の向こうで、日本の地震学者が慎重に尋ねる。
「それが意味するのは……?」
「地球の内部が、何らかの原因で空洞化している可能性が高い。もしこのまま進行すれば、最終的に地球は崩壊する。」
会議室は重苦しい沈黙に包まれた。
「解決策は?」
「今のところ……ない。」
リサの言葉に、科学者たちは愕然とした表情を浮かべた。
彼女は、エミリーの言葉を思い出す。
「ママ……今度こそ、約束守れる?」
(私は……この地球を救うことができるの?)
リサは、深く息を吸い込み、スクリーンを見つめた。
「何があっても、この地球と、私の家族を守る。」
たとえ、それがどんな絶望の先に続いていようとも——。