第1話 お持ち帰り率100%の童貞
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異能アクションありのオカルティックコメディです。
合コン――それは大学生の三大義務（諸説あり）
大学生になって2回目の春のことだ。
授業終了後に田中一郎は同じゼミの仲間に肩を叩かれ、爽やかな笑顔とともにこう言われた。
「合コン行こうぜ！」
今さら説明するまでもないと思うが、合コンというのは合同コンパの略称であり、男女が新たなる出会いを求めて集う一種の婚活パーティーのことを指し示す。
決して一部のモテる男をターゲットにしたモテない男たちの八つ当たり（物理）である合同コンバットの略称ではない。
なので、将来的な結婚願望を持つ彼にとっては、前向きに検討をせざるを得ないお誘いといえる。
だが――
「悪いけど他当たってくれ。行きたくない」
行きたくない理由はいろいろある……と言っても、別に彼が人見知りが激しい陰キャだからとか、女子と目を合わせて話すことができないくらいシャイだからとか、そういった理由だからではない。
あ、そうか！ わかったぞ！ さては既に彼女がいるな？ この裏切り者が！ 今日の戦場はここに決まりだ！ 各々がた、討ち入りでござるぞ！――といった合同コンバットに発展する理由なのかと聞かれれば、残念ながらそれもノーだ。
一郎に現在彼女はいないし、以前にもいたことはない。
そのうち欲しいとは思ってはいるが、抱える事情が事情なので、それをなんとかしない限り望み薄だと言わざるを得ない。
つまり……ゴリッゴリの童貞である！
彼女イナイ歴＝年齢……甘酸っぱい青春とは無縁の人生を送っているのである！
約束された青春的敗北者……それが彼、田中一郎なのである！
「頼むよ田中ぁ。お前がいると女子の参加率上がるんだよ」
「何でだよ？ 俺そんなにイケメンなのか？ 女子の間で話題沸騰中だったりするの？」
「んなワケねーだろ。平凡オブ平凡」
「イケメン枠だったらすでに御手目岳を確保してるっつーの」
「じゃあなんで俺が参加すると女子の参加率が上がるんだよ？」
「そんなの決まってるだろ」
「客寄せパンダ以外に価値があるとでも？」
「俺の価値そこだけ！？ もっと、こう……ないの！？」
「「「ないよ！」」」
春先に相応しい、実に爽やかな笑顔でそう断言された。
ぶっ殺すぞこの野郎。
もうノート見せてやらねえ。
「いや、強いて言うならもう一個あったか」
「何！？ なになになに！？ 何がある！？」
「お持ち帰りされても絶対安心なとこ」
「それお前らの都合じゃねーか」
「いやいや、女子側としても安心できるだろ」
「万が一お前に押し負けたり、流れで家に着いて行っちゃっても、絶対に貞操の保証はされてるわけだし」
「なにおぅ！？ 俺だってヤる時はヤる男だぞ！？」
「そういうセリフはヤってから言おうぜ？ 童貞」
「自分のあだ名は知ってるだろ？」
「よっ、お持ち帰り率100％の童貞♪」
「流されても安全な人間オートセキュリティ！」
「ゴムを忘れた時も安心できる歩く貞操帯！」
「うるせえええぇぇぇぇぇっ！」
ただの童貞ならまだしも、お持ち帰り率100%の童貞とかふざけてるとしか思えない。
しかし、この非常に不名誉なあだ名も事実なのだから否定もできない。
そのせいで、一郎はいろいろとあっち方面の疑惑を噂されてしまい、時々かわいそうな目で見られてしまうこともしばしば。
――金持ちなのに包〇か……かわいそうに。
――いやいや、手術で解決できるじゃんそれ。
――きっと不能なんだよ。若いのになぁ……
――俺、バイアグラ持ってるから良かったら……
興味、哀れみ、好奇心。
お持ち帰り率100%の童貞という謎は、人間の持つ根源的欲求――知識欲を刺激する格好のエサなのだ。
それ故に一郎の参加する合コンは安全性もあって大変人気だ。
全員椅子の座りすぎでイボ痔になれ。（一郎心の叫び）
「俺が童貞な理由をいろいろと推察し、それを肴に盛り上がろうとかいう最低な宴になんか参加するか。帰る」
「まあまあ、そう言うなって」
「来てくれるならお前の参加費はいらないから。俺らでお前の分は全部払う」
「腹いっぱい食っていいから。な？」
「…………それは、悩むな」
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