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見つめていたい every breath you take

作者: 水月 祐

「やあ、またここにいたのか。」

 友達のフレイが部屋に入ってきた。

「相変わらず彼女を見てるのか?」

「ああ。」

「ま、好きにするがいいさ。俺達の命も長くはないからな。」


 僕のいる部屋の窓からは、大きく膨れ上がった太陽が見える。太陽がこれだけ大きければ、外の気温もかなり上がっているはずだ。しかし、この建物の断熱効果はしっかりしており、中にいる限り、暑さは感じない。


 僕達の住んでいる星の太陽は、もう老齢期に入っており、かなり肥大化していて、いつ爆発してもおかしくない状態になっている。多分、数年後には爆発するだろう。しかし、その前に肥大化が進み、この星が焼き尽くされるらしい。それが数ヶ月後に起こるという。当然、その時がこの星の最後となる。


 僕達もただ最後を待っていた訳ではない。世界中の科学者やいろんな人達が生き延びる為の手立てを研究した。ロケットをつくったり、星を移動させようとしたり、ワープして他の星へ行けないか考えたりした。しかし、太陽の肥大化が始まる前に全世界の人を移動させるのは無理、という結果が出た。その結果を聞いたすぐは暴動が起こったり、テロが頻発したりしたが、しだいに落ち着いていき、今は多くの人がフレイのように運命を受け入れて最後の日を待つようになっている。


 生き延びる為の手立てを探している時、ある新しい技術が発見された。命の無い物を、好きな所に送る、という技術で、物を送る道筋に6次元を使う、というものであった。最初は人も送れないかさんざん研究されたが、命ある物は無理、との結論が出た。しかし、物なら何でも送れる上、フィードバックもできた。つまり、カメラを送って、そのカメラが撮った映像を見ることができたのである。そして、帰ってくる映像は6次元を通るため、ほぼタイムロス無しで見ることができた。

 この技術を使って、宇宙のいろんな所にカメラが飛ばされた。僕達は最後の日まで、宇宙のいろんな映像を見ながら過ごしている。


 僕は、ある時、ある映像に釘付けになった。それは、自分達の星を“地球”と呼ぶ人達が住む星の、ある女の子の映像であった。つまり、僕は地球の女の子に一目惚れしたんだ。


 僕はやや改造したカメラを地球に送り、女の子の映像を見続けた。ぼくは、最後の日まで彼女を見続けるだろう。



 私は、以前、ストーカー被害に合っていた。いつからかはわからないが、ある男が私に付き纏いだし、私の行くところ行くところに現れた。警察に相談し、警察から注意してもらったりしたし、引越ししたりもした。しかし、どうやってか男は私の居場所を突き止め、付き纏う。そして、さらに不思議なことに、男は私を離れたところからただ見ているだけだった。年単位で付き纏われたが、私は男の声を聞いたことがない。ただ、付き纏われ、見られていただけだった。

 そして、さらに不思議なことに、付き纏いはある日突然なくなった。ある日、突然男がいなくなったのだ。私は用心しながら過ごしていたが、そのうちだんだん忘れていった。


 数年後、ストーカーの話を聞く機会があった。ストーカーはある日突然私を見続けなければ、と思い込み、そうしたのだとか。それは、どこか遠いところから頭の中に指令が来る感じで、抗うことが出来なかったそうだ。そしてまた、ある日突然その指令が消え、ストーカーをやめたらしい。信用はできないが、ストーカーをやめてくれたのは嬉しかった。


 僕達はもうすぐこの世からいなくなるだろう。それまでは男の目を通して彼女を見続けよう。

 僕はナノレベルのカメラをつくり、男の頭に潜り込ませて、男の目を通して彼女を見られるようにした。そして、男の行動を支配し、彼女を追い続けるようにした。カタツムリに寄生してカタツムリの行動を支配する寄生虫のように。男は僕が生きている間は彼女を追い続けるが、僕がいなくなったらその支配から自由になる。それまでそう長くはないだろう。僕の代わりに、彼女のそばで彼女を見続けて欲しい。

 



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