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救世主?

街をヒュマナ信者達から解放したルリとスフェール。

ルリはぽろりと、クロノシア神からの依頼だったと言うと──




「有り難うございます! 助かりました‼」

 街の方々が私達に頭を下げた。

「今日はこの街で休んでいってください」

「でも……」

「ルリ、街の者の言葉に甘えるといい。これからの旅は過酷になるやもしれん」

「そういう神託?」

「ああ」

「うへぇ」

 私はげんなりする。

「各地の街がヒュマナ神の信者に狙われている、それをどうにかするのも我らの仕事だ」

「仕方ないよね、クロノシア様が言うもんだから」

「今、なんと?」

 街の長をやってるっぽい感じの人が声をかけて来た。

「クロノシア様に直々にヒュマナの抹消を依頼されて──」

「救世主様だー!」

「はい?」

 街の人々は私とスフェールに頭を垂れる。

「神託があったのです、ヒュマナ神を排除する者を使わした、我らの使徒として、クロノシア神様から」

「はぁ」

「これで数々の街も開放される……!」

「ちょっと待ってください、つまりこの近辺の街もヒュマナ神の信者と加護持ちに占拠されていると?」

「はい……」

「スフェール、いそ……」

「ちょっと待て、ここに凄腕の鍛冶屋ゴドラフがいるそうだな」

「はい、彼なら工房に立てこもっております」

「念の為武器の依頼をしよう、お前の護衛の剣を。幸いミスリルが手持ちにある」

「私が行きましょう、開放されたのをしったら出て来ます」

「頼むぞ」

 と言うわけで、他の街に行く前に私の護身の剣を作って貰うことになった。

「──ゴドラフさん! 街が開放されました、お客さんですよ!」

 長さんが言うと、がちゃんと言う音がし、ぎぃと扉が開いて小さいおじさん──ドワーフの方が姿を現した。

「おう、聞こえとる」

「それでな、お前に仕事の依頼をしたいそうなんだ」

「何?」

「この娘が護身で使える剣を作ってくれ」

「ちょっと動きをみせてくれんか?」

 とナイフを渡されたので、動きを見せてみた。

「ほほぅ、独特の動きがあるが悪くない」

「ミスリルを渡すから作ってくれ」

「だがなぁ……奴らに街を占拠されて酒が切れてやる気がでんのじゃ」

「何」

「そ、そんな!」

「……」

 私は鞄をあさり、酒瓶を取り出す。

 ウィスキーだ、父がたまに飲んでた奴。

「あの、このお酒では駄目ですか?」

「見たことの無い酒瓶じゃのう、まぁ一口」

 酒瓶を渡すと、ゴドラフさんは口をつけた。

 カッと目を見開く。

「何じゃこのうまい酒は! 初めて飲むぞ⁈」

「ルリ、もしかして……」

 スフェールが小声で尋ねる。

「えっと私の世界のお酒です、うまく鞄から出せました……」

 私は小声で返事をした。

「こんなうまい酒を貰ったなら仕事はせんとな!」

「本当ですか⁈」

「儂等ドワーフは酒を使った約束は裏切らんのじゃよ」

 ゴドラフさんはミスリルを受け取る。

「娘さん、名前は?」

「る、ルリです!」

「ルリさん、アンタにあった剣しっかり作っておくから頼んだぞ!」

「──はい! スフェール、行こう!」

「任せろ」

 四足歩行のスフェールに乗っかり街を後にする。





 それからが大変だった。

 近くの町や村へ一時間くらいかかる。

 その間にも人々は虐げられてて、着く頃には家が崩れて居る所もあった。

 もっと早く来ていればと思ってしまうが、それでも誰も私達を責めなかった。

 この一帯の村や町などをヒュマナ信者と加護持ちから救ってくれたのだから、と。

 何でこんな善良な人達をヒュマナは美しいと思えないんだろう。

 何故人間にしか目が行かないんだろうと不思議になった。





 なんとか夕方までにアギトの街に戻ってこれた。

 そして宿を借りて一休み、温泉が湧き出ている街だったので、温泉に浸かる。

「ふへぇ」

 疲れ切った体に温泉のお湯はしみるようだった。

 そして寝室に戻る。

 少し柔らかいベッドだった、一番いい部屋のようだ。

 有り難い。

「ルリ」

「スフェール何?」

「飯の用意ができた、行くぞ」

「うんー……」

 うだうだしている私を見て、スフェールは私を抱えて部屋を出て行った。



 食堂の一角には結界が張られた箇所に料理があった。

 良い匂いのするスープと、味のあるパンにゆでた肉と葉野菜を挟んだ物と、ジャムが挟んだ物があった。

「お前が以前出したものを使わせて貰った」

「うん、作ってくれて有り難う」

「さぁ、食え」

「ん」

 結界に入り、スープを飲む。

 じんわりと暖かなコンソメの味と肉の味と野菜の味が広がる。

 そして、肉はほろほろと崩れ、旨みをしみ出させる。

「今日は何の肉を使ったの?」

「マーダーチキンだ」

「なるほど……」

 私の世界ではサンドイッチだったものを食べる。

 肉はジューシー、葉野菜はパリっとしてておいしかった。

 パンはずっしりしていてかみ応えが抜群だった。

 最期にジャムを塗ったものを食べる。

 イチゴジャムを塗ったらしいパンを頬張り息をつく。

「ああ、美味しかった」

「そうか、良かった。今日はゆっくり休め」

「うん」

 私は食事を終えると歯磨きをしてから部屋に戻り、ベッドに横になり眠りに落ちた。





「本当に、ヒュマナの件を其方に任せてすまんな」

 クロノシア様は疲れたように言った。

「いいんですよ」

 私は首を振る。

「でも、人間する際、力全部取り上げられなかったんですか?」

「それができたら苦労はせんのじゃ」

「なるほど……」

「ルリ、本当に良く頑張っています」

「フェンリナ様!」

「儂等で相談して、おぬしがよりよく何かをできるようにできないか考えたのじゃ」

「はぁ」

「そこで目覚めたらあるものを置かせて貰うことにした」

「はぁ」

「是非有効活用しておくれ」

「分かりました」





「ん……」

 朝、目が覚めるとテーブルの上にスマートフォンと、見慣れない石があった。

「なんだろうこの石、スマートフォンはどうなってるの?」

 スマートフォンに電源を入れると様々な食べ物、本、ゲームなどが載っている画面が開かれた。

「……これスマートフォン?」

 というより、本を読む専用のタブレットに近かった、サイズはスマートフォンだが。


 さて、問題の石。


 どことなく神秘的に見える。

 綺麗な赤い色の石だ。


「ルリ、朝食ができたぞ」

「あ、スフェール。神様から貰った石なんだけど、何か分かる」

 と呼びに来たスフェールに石を見せる。

「賢者の石だぞ」

「Why?」

「賢者の石だ」

 私は問答無用で石を自分のアイテムボックスに突っ込んだ。

「スフェール、このことは皆には内緒ね?」

「分かっている」

 そう言うとスフェールは私の首根っこを掴み食堂へと向かった。


──本当に分かってるのかなぁ?──


 私は不安になりながら食堂へと連れて行かれた。






救世主ルリ、スフェール爆誕。

本人にはその自覚はないのですが。

当面の目的はヒュマナ信者を排除しつつ、ヒュマナ神の討伐となります。


ここまで読んでくださり有り難うございました!

ゆっくりと更新している中でも読んでくださり感謝です。

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