依頼:薬草採取地の開放
エルヴンの街を防衛したその夜、ルリは神様たちと夢の中で謁見する。
そして朝、薬草採取場所を開放するべくスフェールと向かう──
「じゃあ、私寝るね」
「ああ、お休み」
「うん、お休み」
私は柔らかなベッドに潜り込み、眠りに落ちた。
目を開けると、フェンリナ様とドワノフ様、それから──
「えーっと……」
「初めまして、私は人間とエルフを守護する女神エルフィーナと申します」
エルフな女神様はそう告げた。
そしてもう一人、ライオンの雄の獣人ほんと獣みたいな方が私を見て笑った。
「俺は獣人と人間を守護する男神、ビストレスだ!」
「此度のヒュマナの信徒と加護を持つ者の暴走、止めてくださり感謝いたします」
「あのーヒュマナの処遇はどうなったんですか?」
「創造神様がもう怒り狂って、ヒュマナの権限を全て剥奪。今後この世界に干渉することはできなくなり、下級神よりも下の扱いになり何もできなくなりました」
私はそれに安堵する。
「ですが、既にヒュマナが加護などを与えた者達は各地の平和を乱しています、ヒュマナの後始末お願いします」
「──分かりました」
私が頷くと、ビストレス様がわしゃわしゃと私の髪を撫でる。
「俺が言ったじゃねぇか、投げ出すような奴にはみえねぇって!」
「そうですわね、では私の加護を与えましょう」
そう言ってエルフィーナ様に額を触られ、紋様が浮かび消えた。
「俺の加護もくれてやる!」
ビストレス様も額を触る、紋様が浮かび消えた。
「あの、加護がどういう効果があるか分からないんですが……」
「まぁ、色々と効果が複合になってるから説明するのが面倒くさいが、俺のは戦と闘争も含んでいる、つまり戦いにめちゃくちゃ強くなるってわけだ」
「儂のは鍛冶を含んでいる、つまり鍛冶魔法や鍛冶能力がとんでもなく高くなるわけじゃ」
「はぁ……」
「私達は魔法や治癒能力治癒魔法の能力が高くなります、また薬を作る能力が付与され調合魔法というものを使えるようになります」
「調合魔法?」
「今はエルフでも使える者が限られている数少ない魔法です、薬を調合する事に特化し、エリクサーなどの万能薬を作るのにはうってつけの魔法です」
「え、エリクサー⁈ あ、でも材料ないから関係ない──」
「材料はドラゴン種の血や肝などを使います」
「持ってるよ私……」
「エリクサーは寿命を延ばすし、病を治し、そして欠損さえも治せます」
「やばい……」
「まぁ、気が向いたら作ってみたら良いでしょう」
「は、はぁ」
気が向いて作るようなもんでもないじゃろこれは。
「他の神々も、貴方に加護を与えたいと申し出ていますが、創造神様が順番を守る用にと」
「ふへぇ」
まだ、加護あるの⁈
「魔族の神の加護もあります」
「魔族の神⁈」
「あ、魔族も創造神に作られたので神は居ますよ」
「ふへー」
結構色々居そうだなと思った。
「他にも私達の下の神に水の神、火の神、等など色々居ます。その者達も貴方に加護を与えたいと」
「まじすか」
「本当です」
「……とりあえず、皆さんのご神託のまま、進んでいこうと思います」
「有り難うございます、また神託がなくても街の依頼を受けていいんですよ」
「わかりました」
「では……」
「んあ?」
目を覚ます。
欠伸をして、着替えて食堂へ行くと、スフェールが料理を作っていた。
お肉を少々に野菜のスープ、昨日渡した塩こしょうを使って味付けされている。
それに、果物とパン。
「朝食だ、食べられるか?」
「うん、有り難う」
椅子に座る。
「いただきます」
そう言って、スフェールの料理を食べる。
スープはお肉の旨みと野菜の甘さと旨みで美味しい、今度コンソメの素というかスープの素を渡してみるのもいいかも知れない。
あと、塩、胡椒単体のも。
パンも身が詰まってて美味しい、スープに合う。
「美味しい」
「それは良かった」
ぶっきらぼうに言ったけど笑ったような気がした。
最期にカットされた果物を食べて果実水を貰ってお腹いっぱい。
「今日は神託とかは?」
「ない」
「じゃあ、ここのギルドの依頼何か受けよう?」
「そうだな」
四足歩行のフェンリルの姿になったスフェールの上に乗っかりギルドへ向かう。
「何かありませんか?」
「そうですね……実は薬草の生育地に、ブラッディオークが群れを作ったと」
「分かりました、引き受けます」
「有り難うございます」
依頼を受けてスフェールに乗っかりその場所に行く。
「うむ、居るな」
「結構いるね……」
三十匹ほどいるその群れを見て、私達は隠れる。
「よし、出るぞ。ルリ、お前はお前の身を守ることに重点を置け」
「うん、分かった」
頷くとスフェールが飛び出し、ブラッディオーク達を蹂躙する。
私も飛び出し、ステップを刻みながらオークの動きを避け、弾丸をぶち込む。
黒焦げになるオーク達を見、スフェールが寄ってくるのを見て安堵の息を漏らす。
「キングオークも倒したし、この群れはおしまいだ、最後に住居を壊してオーク共の死体をアイテムボックスに入れて戻るぞ」
「うん」
私は住居らしい物を全て破壊し、一カ所、土だけの場所に集めるとスフェールが一瞬で灰にした。
「さて、行くぞ」
「うん」
スフェールに乗り、エルヴンの街へと戻る。
「お帰りなさいませ」
「駆除は成功した、証拠のオーク達の死体を持ってきた、肉だけ寄越せ」
「分かりました」
受付嬢さんが、解体屋さんを呼ぶと、解体屋さんはオークを引き取って解体小屋に引きこもった。
なんか「かなり上質だな」とか声が聞こえた。
「さて、宿で休むとするか」
「うん」
宿屋の温泉で体を洗い、湯船に浸かり、のんびりしてから上がり、借りてる部屋で珈琲牛乳を飲む。
実に至福の時間だ。
「ルリ、飯はどうする?」
「材料があるなら、作ろうよ。一緒に」
「できるのか?」
「うん、家事手伝いで料理はそこそこやってたから」
「そうか、なら手伝って貰おう」
女将さんにお願いをし、台所を借りる。
材料は全部持ち込み。
「手軽にカレーライスにしようかな」
とカレーのルーを出す。
「玉葱平気?」
「我に食えぬ野菜はないぞ」
「そっか、なら大丈夫。お肉はオーク肉でいいよね」
野菜類も袋から出して、刻んでいく。
そして鍋に油を引いて炒めて、火が通ったら水を入れる。
念の為、ペットボトルを取り出し、ミネラルウォーターで煮込む。
その間に、お米を炊いておく。
フライパンでお米を炊く方法覚えておいて良かった。
そしてご飯が炊け、カレーもできたら、ご飯を皿に盛り、カレーをかける。
これでカレーライスのできあがり。
「うむ、これは美味いな」
「んー、フェンリナ様、様々だよぉ。やっぱカレーは偉大」
と言いながら追加でご飯を炊いていると、女将さん達がこちらを覗き込んでいた。
「あ、あの、お肉大丈夫なら、良かったら食べません?」
「いいの⁈」
「ブラッディオークの肉なんだろ⁈ いいのか⁈」
「……」
私はチラリと二足歩行形態のスフェールを見る。
「ルリがいいなら我は構わん」
「では、皆さんどうぞ……少し時間がかかりますが」
と言って、私達は同じ宿屋の人達にごちそうすることに。
「なんなの、これ! 食べたことがないけど美味しいわ‼」
「ブラッディオークの肉も美味いがこのかかってる奴と、下のコメ? も美味い!」
と、高評価。
皆さん食べ終わった後、私は後始末をして、歯磨きをして、泥のように眠りに落ちた。
眠った向こうでいつもの神様達が待っているのを予感しつつ──
加護をまた貰ったルリ。
どこまで貰うんでしょうな。
そして薬草採取場所の開放も難なくこなしカレーライスを作るルリ。
肉は魔物肉ですが。
さて、夢の向こうでは誰が待っているのでしょうか?
ゆっくり書いているので宜しければ見て言ってください。