ヒュマナの加護対策
ルキトの街の依頼と防衛を終えたルリとスフェール。
労働後の食事をしているとギルドマスターに呼ばれて──
「嬢ちゃん、すまねぇな。で、そいつらがヒュマナの加護を受けた奴と信者か」
「はい、おそらく……」
「しかし、どうしたもんか。普通に牢屋に入れても出ちまうし……」
──その縄はヒュマナの加護を消すもの、だから大丈夫です──
フェンリナ様の声がした。
「えっとその縄は──」
「その縄はフェンリナ様より賜りし物。ヒュマナの加護は消される」
スフェールさんが変わって説明してくれる。
「おお、じゃあ大丈夫そうだな」
「よし、牢屋で大人しくしていろ!」
男達は牢屋へと連れて行かれた。
「わりぃな、ここに来て休む暇もあんまり無かっただろう」
「はは……」
から笑いするとぐぅううとお腹がなった。
思わず顔を赤くする。
「ははは、なら食堂ミンスに行ってみるといい。あそこの料理は美味いぞ?」
「はい」
言われるままに指示された場所へ向かう、お店に入る前に、スフェールが獣人状態に姿を変えた。
「いらっしゃいませ! あ、噂のお客様ですね!」
女性店員さんがニコニコしていった。
「噂?」
「はい、鉱山のモンスターをたったお二人で倒したという、その上先ほどのヒュマナ信者と加護持ちから街を守ったと言う噂のお二人!」
「ちょっとメイジー! お客様になれなれしいのはやめな!」
「は、はいぃ!」
女性店員さんは慌てて店の中を走って行った。
「すまないね、お客さん、あの子ったら噂好きで」
「いいえぇ」
私はそう言って料理を注文した。
堅いパンに野菜と肉たっぷりのスープ、果物に、果実水。
慣れない食事だったけど、慣れないといけないなぁと思いながら食べていた。
「パンはスープに浸して食うものだぞ」
「あ、うん」
スープに浸して食べると、食べやすく美味しかった。
「おーい、ルリってお嬢ちゃんいるかー!」
「はーい」
食堂に人が入ってきて私を呼ぶ。
「ギルドマスターが話しがあるから食事が終わったら来てくれだと」
「はいー」
そう言って急いで食べる。
素朴な味の料理を堪能する暇もないのかなぁと思いつつ、私はギルドへ向かった。
「おう、ルリ。お前さんに渡したいものがあるからギルドカードを寄越してくれ」
「はい」
私はDランクのギルドカードを渡した。
すると、Bランクのギルドカードが返ってきた。
名前の箇所にはルリと、書かれている。
「ええ⁈」
「メタルドラゴンを倒すようなフェンリルと契約してるんだ、これ位はないとな」
「……有り難うございます」
私は頭を下げた。
「いや、良いって事よ」
そんなやりとりをしていると、スフェールが頭をポンと叩いた。
「ん?」
「神託が降った、エルヴンの街へ向かえとの事だ」
「え⁈」
「なるべく急ぎでな」
「エルヴンの街と言えばエルフが多い事で有名だ、後森の中にあるってことでな」
「火なんか使われたら大惨事!」
私は声を上げる。
「行きましょう、スフェールさん!」
「ああ」
私はルキトの街を後にしてエルヴンの街へと向かった。
鬱蒼と生い茂る森を駆けて行くと、驚くほどの巨大な大樹が見えた。
そして壁も。
「止まれ!」
スフェールさんが止まる。
「名を名乗れ、フェンルリとその契約者よ」
「我が名はスフェール、そしてこの者はルリ。女神フェンリナと、女神エルフィーナの神託を受けてここに来た」
弓を構えるエルフさん達は安堵の息を吐いて弓を下ろした。
すると誰かがやってきた。
「ようこそいらっしゃいました、エルヴンの街へ。私のは冒険者ギルドのマスターエルスです」
「……」
「街の長と私共も神託を貰いました、危機が迫っている、それ故フェンルリとその契約者を遣わしたと」
「では……」
「どうか、お願いします」
そう言って頭を下げて、ギルドへ案内される。
「何があったのでしょうか?」
「実はドラゴンの影を見たという者と、ヒュマナ信者と加護持ちがこちらに進行してきていると」
「うへぇ」
「ヒュマナ信者とドラゴンか……嫌な予感がするな」
「やめてください」
私がそう言うとカンカンと鐘が鳴った。
「ドラゴンとヒュマナ信者がやって来たぞー! みんな避難しろー!」
「‼」
「よし、行くぞ」
「うん‼」
私はスフェールに乗り急いでその方向へと向かった。
「ドラゴンライダー⁈」
「ヒュマナ様からの加護だ! エルフは皆奴隷にしろ! 獣人もだ!」
非人道的な言葉を言うこいつらに嫌気がさした。
エルフの皆さんも獣人の皆さんも誰かの暮らしを害してない、互いが互いに必死に生きているのに──
「あのドラゴンライダー殺すが構わんな」
「え」
私が肯定も否定もできない状態のまま、凄まじい雷撃が落ちた。
ドラゴンは所々焦げて倒れ、上に乗っていた人は炭化していた。
「う……」
私は少し気分が悪くなる。
「よ、よくも、カケルを!」
「やっちまえ!」
襲ってくるヒュマナの加護持ちの連中。
私は吐き気を堪え、銃を向けて放つ。
「ぐへぇ!」
「がはぁ!」
倒れるヒュマナの加護持ち。
スフェールを見れば、他の信者連中を魔法の糸で簀巻きにしていた。
それに安堵し、フェンリナから貰った縄でヒュマナの加護持ちを縛りずるずると引きずって行く。
「加護は無くなったので、普通の牢屋で大丈夫かと」
「ほ、本当かい?」
「不安なら頑丈な牢屋に……」
「そうだね、そうさせて貰おう」
連れて行かれる侵略者を見てから、スフェールを睨む。
「どうした?」
「いきなり殺すとか言わないで頂戴、心臓に悪かったわ、吐き気もするし」
「……殺さないほうがよかったか?」
「そちらのほうが反省させれるでしょう」
「なるほど」
「……疲れたからお家借りて、お風呂でゆったりしよう」
「何なら我が料理するが」
「え、できるの」
「簡単なものだが」
どんな料理なんだろうか、と気になった。
広いお家を借りる事が出来、私はお風呂に入った。
温かいお湯と入浴剤の良い香りで疲れがとれた。
風呂から出ると、黒パンと肉と野菜のスープが用意されていた。
「さっき借りた塩こしょうで味をつけたらかなり美味くなってな」
料理をする前に塩かこしょうがないかときかれたので塩こしょうを出して渡していた。
「では食べよう」
「うん、戴きます」
黒パンは味がしっかりしてて美味しかった、そしてスープは肉の旨みが汁になってでてきて、野菜と絡まって美味しかった。
「これ、何のお肉?」
「グリーンドラゴン」
「……はい?」
「だから、以前我が取ったドラゴンだ。我もアイテムボックス持ち故にな」
「へ、へぇ」
マジですか、ドラゴン食べちゃったよ。
いや、美味しかったけど。
「ちなみに、ドラゴンって」
「高級中の高級食材だ」
「……牛とか鶏は食べないのかな……」
「牛は聞いた事がないが、鶏はあるぞ、庶民は鶏だな」
「へ、へぇ」
「卵を産まなくなった鶏だから肉が硬いらしい」
「……」
昔の世界に迷い込んだ気分になった。
スフェールが神託を持ってきましたね。
ちなみに、神々はルリが起きている間は敢えてスフェールに神託を下してます。
神託でやってきたエルヴンの街で早速防衛戦を行うルリとスフェール。
後、ドラゴン肉を食べてカルチャーショックを受けているルリだったりします。
更新はゆっくりですが、お付き合いいただければ幸いです。