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魔法世界の妖憑き  作者: Lilac
第二章『焔と恩讐編』

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女子会 ―3―

 パーシーの熱い吐息が当たるほど近い距離まで、モニカが顔を近付ける。モニカはパーシーを襲っているようにも見えるような体位で、パーシーをベッドに押し倒している。その様子を見ていたソフィアたちは固唾を呑んで見守る。が、ソフィアたちの期待とは裏腹に、2人が触れ合ったのは広げられたおでこだった。



「び……っくりしたぁ……」


「何をしでかすかと思いましたよ……」



 胸を撫で下ろしてソフィアたちが視線を落とした瞬間だった。モニカは熱がないことを確認してパーシーから離れようとした。身体を起こしてベッドに立とうとしたモニカをパーシーが引っ張って抱きしめる。



「ん!」



 何かを訴えるパーシーがモニカの瞳に映る。つい数分前の胸の高鳴りとは違う何かが、モニカの理性を揺れ動かす。毛布で周りからの視界を塞ぎ、2人だけの世界を作り出してパーシーは言った。



「……ねぇ、今なら誰も見てないよ」



 モニカの耳元で小悪魔が囁く。その誘惑の言葉を聞いて、モニカの視界が目まぐるしく回るように混乱する。パーシーの欲情を煽るような勿体ぶる表情がまたモニカの理性を溶かしていく。

 そこからはもう数秒も耐えることはできなかった。心臓が今にも爆発してしまいそうなほど拍動しているのを感じられる。それは自分だけでなく、目の前でいたずらっぽく笑う小悪魔の拍動もだ。まるで体が一つになったような感覚に包まれる。



「いいの? シちゃっても……」



 それは、2人の親密さを確かめる行為ではなかった。唇を求めて身体を寄せ合う。2人だけの世界がそこにはあった。誰も2人を見ていない。モニカの視界にはパーシーしかいない。もちろん、目の前の相手も、モニカしか見えていない。甘い匂いが鼻腔を刺激する。香水の匂いと脳を揺らすチョコレートの香りが理性の正常さを崩す。



「パーシーが誘ったんだからね」



 冗談のような軽いキスではなかった。吸い寄せられるように触れ合った唇で唇を開け、舌と舌が絡み合う深いキス。舌が、心が、脳まで蕩けるような感覚に襲われる。頭がおかしくなってしまったみたいだった。これまでの関係が崩れていくような音がしたような気がした。

 永遠にも感じられる時間が進み始める。次第に冷静になってきた脳が危険信号を出している。これ以上はいけないと、囁くのではなく、確かに伝わるように。

 一度は離れた唇が、磁石のようにまた近づいていく。モニカの意志とは相反するように、本能が身体を動かしている。



「おーい、布団の中で何やってんだい」


「……っ!」



 パーシーと同じように顔を赤くしたソフィアが2人の世界を作っていた壁をこじ開けるように布団を捲る。



「……なんだ、クラウディアちゃん寝ちゃったのか〜」


「えっ……? う、うん。そうみたい」



 驚くほど上手い寝たフリでパーシーがその場をやり過ごそうとしているのを見て、モニカも咄嗟に嘘をつく。

 蒸し暑かった布団の中とは正反対の、外の涼しさで脳が理性を取り戻す。まだ、モニカの唇に付着したパーシーの口紅の匂いが残る。ずっと、ずっと消えない。



「ん……?」



 ふと、モニカの目を止まったのは、机の上に置かれた高級そうなお菓子だった。自分が用意したものではないそれに興味を引かれたモニカが箱を手に取ってパッケージをよく見ると、ソフィアやパーシーが好んで口にしていたチョコレートのようだった。



「う、ウイスキーボンボン……!?」


「えへへ〜、それもらったの〜」


「アマルさん、これ食べちゃダメなやつだよ!」


「いいんらよばれなきゃ〜」



 呂律の回っていないソフィアの様子が全てを物語っていた。20個ほど入っていたらしき容器の上にはもう3つしか残ってない。肩に手を回してモニカに身体を預けるソフィアの身体は心做しか熱を持っているように思えた。



「み、みんなこれを食べたから……」



 含まれている量は少ないとはいえ、酒は酒。耐性のないソフィアたちは確実に酔っている様子で、平衡感覚もなく、呂律も思い通りに回っていないようだった。



(なら、さっきのことも……忘れてくれるかな)



 そんな淡い期待を抱きモニカは、ベッドに寝そべったまま動かないパーシーを見る。微かに腹部を上下させて安らかに眠っているようだった。周りを見ると、ヨナもヴェローニカも酔ってしまっているようで、既に重く視界を閉ざそうとする瞼に抗っているようだ。

 今にも眠ってしまいそうな2人にモニカはブランケットをかけて、まだまだはしゃぎ足りなさそうなソフィアに言う。



「今日はみんなこんなになっちゃったし、お開きにしない?」


「……うーん、まぁいいんじゃない?……」


「はい、これ水。明日までに酔い覚ましておいてね」


「分かってるってぇ」



 モニカは何となく不安になる物言いをするソフィアを部屋から追い出そうとすると、ソフィアが扉に手をかけてピタリと動きを止めた。



「忘れてた……ヴァンちゃん、部屋戻ろぉ」


「ひ、ひゃい……!」



 はち切れそうなほど膨らんだ服の胸ポケットからメルティが部屋の鍵を取り出す。それを見てモニカは自分の双璧に目を向けて、ガックリと肩を落とす。そうとは知らず、ソフィアとメルティはそそくさとモニカの部屋を去っていく。



「……うらやましいなぁ」


「え……?」



 扉が閉まる刹那、モニカの耳にそんな言葉が聞こえてきたような気がした。モニカは首を傾げて気のせいとベッドに飛び込む。その隣には、穏やかな息遣いですやすやと眠るパーシーの寝顔があった。

 机の上に散乱したお菓子の袋や飲みかけのコップ。片付けられていない生活感の溢れるモニカの部屋が消灯される。

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