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魔法世界の妖憑き  作者: Lilac
第二章『焔と恩讐編』

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ズルいけど最強! ―3―

 ガラリと、扉を開けて出てきたのは派手なメイクをした金髪の美少女だった。少し焼けた肌に紅い口紅がアクセントになっている。ゆるく巻かれた長い金髪がふわりと揺れる。驚いてぽかんとした顔は、モニカたちを見た瞬間ににっぱりと太陽のような笑顔を見せた。



「フィスっちじゃん! こんな所に女の子連れ込んで何してんの!?」


「……コモル」


「あ、ごめん! なんか大事なところだった?!」


「いや違う。そんな心配はしなくていい」



 ウェーイでパリピでノリノリみたいなテンションでフィスティシアに絡みつく。



「えっと……その方は……」


「あぁ、こいつは――」


「この子新入生!? カワイーじゃん! 名前は!?」


「も、モニカ・エストレイラです……」



 子犬のようにモニカに飛びつく。ふんわりと、柑橘系の甘い香水の匂いがする。肌と肌が密着し、モニカの顔が、火照って赤くなる。



「エモール・コモル、生徒会の会計だ」


「よろ〜!」



 エモールはモニカの眼前で満面の笑みでピースしている。



「探していた人っていうのは……」


「あぁ、この女(バカ)だ」


「あぁん、フィスっちひどぉい!」


「ほら、仕事にいくぞ」



 ずるずるとエモールを引きずってフィスティシアは教室を後にする。連れ去られていくエモールと目が合うと、ヒラヒラと笑顔で手を振る。モニカは呆然としながらも反射的に手を振り返す。そのままモニカが30秒ほど呆けていると、先程出ていったはずのフィスティシアが再び教室に戻ってきた。



「忘れ物ですか……?」


「エストレイラ」


「ひゃい!」



 低い威圧するような声に思わずモニカは驚いてしまう。だが、その声とは裏腹に、フィスティシアの表情は穏やかだった。



「お前を誤解していた。今までの非礼を詫びさせてほしい」



 そう言うとフィスティシアは深く頭を下げた。



「いえ! そんな……私なんて、”奇跡”がなかったら何にもできないので」


「そんなことはない。お前の魔法は本物だった。素晴らしい魔法だ」



 思いがけずフィスティシアに褒められて、モニカはつい照れてしまう。今まで、モニカは母とパーシー以外にはあまり褒められたことがなかった。元々は自分のことをよく思っていなかった人物が、良い評価をしてくれたことがたまらなく嬉しくて、モニカは心の中でガッツポーズする。



「だが、()()()


「はえ?」



 モニカは、フィスティシア・エリザベート・エトゥラという人物を知らない。分かっているのは、このバウディアムスの生徒会長であることくらいだ。フィスティシアは頭を上げ、真っ直ぐにモニカを見つめる。



「お前の魔法は素晴らしいものだった。だが、もう1つあるだろう」


「もう1つ……あっ」



 フィスティシアは、生徒()()としてバウディアムスに合格した。その時まで、『天才』という自負を持っていたフィスティシアが、自分よりも上の人物がいるということを知った瞬間、すべてが変わった。



「筆記試験?」


「そうだ」



 フィスティシアは、その時初めて敗北を味わった。次席(2位)首席(1位)の圧倒的なまでの実力差に、フィスティシアは打ちのめされた。



「6月に期末試験がある。お前の実力が確かなら、高順位を取れるはずだ」



 その敗北が、フィスティシアを強くする。地面に這いつくばり、地の苦い味を舐めたあの屈辱を、二度とは味あわないと誓った。

 ()()()()()()()()。誰だってそうだ。だからこそ競争が生まれる。だから人は序列を作り、わかりやすい指標を作るのだ。



「1位を取れ。そうしたら私は改めてお前を認めてやる」



 フィスティシアが初めて敗北した日から、2年後の今。フィスティシアは生徒会長となり、すべての生徒の頂点に君臨している。敗北から、勝利へと這い上がる信念と執念。誰にも劣らない頂点への固執。それが、フィスティシアを生徒会長たらしめる。

 これが、バウディアムスの生徒会長にして、学園序列1()()、フィスティシア・エリザベート・エトゥラだ。



「望むところです!」



 意気揚々とモニカはフィスティシアの挑戦状を受け取る。学園最強からの挑戦状にわくわくしていたモニカだったが、何か大事な事を忘れているようだ。モニカの顔が青く染まる。サーッと、血の引ける音が聞こえてくるような気さえしてくる。



「どうかしたか」


「私、1年生の寮希望の生徒を集めてこいって、アステシア先生に言われてたんでした……」



 慌ててフィスティシアが腕時計に目をやると、針は17時半を示している。寮の説明があるのは18時から。もうどう急いでも間に合わない。



「どっ、どどどど、どうしましょう!?」


「まぁそう焦るな。まだなんとかなる」



 そう言ってフィスティシアは教室の扉を開ける。



「ついてこい」



 モニカは小さな歩幅でフィスティシアの後をついて行く。教室の外では、エモールが爪を眺めて待っていた。



「もう終わったカンジ?」


「あぁ。次は放送室へ行くぞ」


「りょ! モニカちゃんは?」


「エストレイラの用だ」


「はは〜ん、ナルホドね?」



 エモールはくねくねと体を動かしてモニカに詰め寄る。頭の先から足の先までじっくりと見ていく。



「……モニカちゃんって、もしかしてマジメ?」


「え? えーっと……そう、でしょうか?」


「髪はちょっと内巻きだよね? 香水何使ってる? ネイルは? 制服キチッとしすぎじゃない?」



 怒涛の質問攻めと共にエモールはモニカの体を触り始める。フィスティシアは注意するのを諦めたようで、何事も起きていないかのようなすました顔で放送室へと向かって歩いていく。



「ほーら! 胸元はもっと開けて、スカートももうちょい短くていいよね」



 徐々にギャルコーデに近づいていくモニカ。唯一の希望のフィスティシアは止めようとしない。エモールは服装を改造すると、モニカの顔を見て今までで1番の大声を出した。



「モニカちゃんもしかしてだけどすっぴん!? 何このほっぺ! なんでこんなにすべすべでもちもちなワケ?!」


「わ、わかんにゃいでしゅ」


「うらやまし〜!」



 ものの数分でエモールはモニカとの距離を縮めていく。流れるような動きで連絡先も交換して、2人で写真を撮る。



「はいピース!」


「こ、こうですか?!」


「ついたぞ」



 シャッター音が切られると同時に3人は目的地にたどり着いた。

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