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魔法世界の妖憑き  作者: Lilac
第二章『焔と恩讐編』

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モニカ・エストレイラ ―3―

 試験が始まった。鏡に映された部屋の映像を、2人の女は静かに見ている。毎年、バウディアムスの筆記試験では、不正行為を行う受験者が後を絶たない。



「つまり、カンニングをする馬鹿共のせいで私の仕事が増えたわけだ」



 女はタバコを片手に息を吐く。気だるげに背もたれに身体を預けながら、まるで真剣さの感じられない目付きで映像をボーッと見ている。同じく監視役に選ばれた女はやる気0で、どこかからハンモックを持ってきて、ごろごろと寝転んでいるばかり。映像を見てすらいない。



「こんな魔法使いが実技の担当か……」


「文句があるなら魔法で語ろうじゃないか」


「黙れ野蛮人」



 喧嘩が始まろうとした瞬間、管理室の扉が開かれた。今にも魔法が放たれようとしている中、臆することなく、生徒が2人、管理室に入ってくる。



「やぁ、生徒会長。今見ての通り喧嘩中で……」


「……私は筆記試験の監視を頼んだはずですが、何をやっておられるんですか?」


「いや、これはだね? この朴念仁が……」


「言い訳は聞いていません。それに、あなたに頼んだのは別の仕事です。こんな所で道草を食っていないで働いてください」


「くっ……正論パンチか……分かったよ、準備してくるから!」



 逃げるように女は喋を連れて管理室を出ていく。残された3人は鏡に映された映像を見ている。どこかよそよそしい態度をして目線を合わせようとしない女に向かって、生徒会長は一言。



「タバコの匂いがします」


「………………気のせいだ」



 いつの間にか、女の吸っていたタバコはどこかに消えていたが、匂いまではどうしようもできなかったらしい。監視をしているこの部屋では換気もままならず、部屋の中には独特の匂いで充満している。呆れた表情で生徒会長は頭を抱えた。



「まったく……あなたといいあの人といい、()()としての自覚が足りていないように感じます!」


「まあまあ、実力は確かだから……落ち着こ、エトゥラ」



 隣で補佐をしている生徒が、荒ぶる生徒会長、エトゥラを宥める。爆発してしまいそうなほど怒りを顕にしているエトゥラをわざと突くように、女は口を開いた。



「私は真面目にやっているつもりなんだがな」


「そうは見えないと言っているんです……!」



 しかし、女はまるで話を聞いていない。それどころか、映像から目を離し、おもむろに席を立って部屋を出ていこうとしてしまった。



「どこへ行くのですか!」


「飽きたから現場を見に行こうとな、そっちは頼んだぞエトゥラ、ビアス」



 扉が閉められる。確かに、大魔法使いである女の実力は確かだ。それは間違いない。大魔法使いと、一般の魔法使いでは天と地ほどの実力の差がある。それは間違いないのだが……



「なぜ大魔法使いはこんなにも癖が強い……!」


「あはは……苦労してるね、()()()()()()()


「……ここでそれはやめろ」


「はーい。じゃ、仕事しよっか」


「はぁ……あの人たちが教師ではなかったら今すぐ切り捨てているんだがな……」


「物騒なこと言わないの」



 エトゥラが椅子に座り、鏡に映った映像を拡大する。ある部屋が映されている。何かが起きているようだった。



「また、()()か」


「…………いや、そうでもないみたいだよ」



 ビアスが意味ありげに笑う。一体、ビアスには何が何が見えているのだろうかと、思いにふける。ビアスは、気味が悪いほど察しがいい。彼女の魔法の影響か、それとも置かれた境遇の仕業か。詳しいところはエトゥラには分からない。思考を止め、再び映像を注視する。すると、後ろに立ったビアスが嬉しそうに言った。



「そういえば、さっき受験者の子に挨拶されちゃった」


「それがどうかしたか」


「その子、『仕掛け』を無視して教室に入っていったよ」


「………………そんなわけがないだろう」



 仕掛けとは、毎年、試験とは別に受験者を困らせるために学園側が用意したお邪魔ギミックの事だ。今年は、わざわざ筆記試験を受ける部屋を指定し、そこへ辿り着くための廊下を魔法で迷路のように細工したらしい。この仕掛けを解くには、まず()()()()()()()()()()()()()()()()()()。その上で、目印などをつけていき、すべてを調べ尽くすことで、最後に残った部屋が指定された部屋になるらしい。ゴールはすぐそこにあるのに、受験者は惑わされる。まるで、夢を見ているかのように。

 この仕掛けを作った人は明らかにされていないが、試験中ずっと魔法を展開し、受験者それぞれを誘導するなどという芸当ができるのは、手練の大魔法使い以外にはいない。



「あんな複雑な仕掛けを無視できるなど……」



 顔を上げて映像を見ると、そこに移されていたのは、迷路の仕掛けを堂々無視して、各部屋を確認して回る女の姿だった。長い黒髪を揺らしながら、女は、廊下を歩き回る。



「……まぁ、あの人は例外だ」


「すごいね、アステシア先生」



 そして、アステシアがある部屋にたどり着く。まだ1人の生徒が試験官と何かを話している。不正が発見されただけだろうと、エトゥラは肩の力を抜く。だが、ビアスはそうでもないようで、まだ真剣に映像を見ている。アステシアが部屋の扉を開いた。

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