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閑話 とある少年
何故、生まれてきたのだろう
そんな疑問は既に消えていた。
深い絶望をしていいのは、凄惨な過去を持つものだけだと言い聞かせる。紺青の宙に降る星を眺めながら、少年は歩いていた。その足取りは決して軽やかなものではなく、鈍重で、1歩1歩を踏みしめるようだった。
生みの親を殺されたわけでも
一生消えない傷を負ったわけでも
命の危機に晒されたわけでもない
何も無い。
(だから俺は、深い絶望をしてはならない)
御伽噺や喜劇は、絶望でさえ美しく、華々しい。それらとは違う。ただ、生温い湯に浸かりながら、ゆっくりと沈んで、溺れていくような、そんな感覚。
(絶望は要らない。俺に必要なのは、力だけだ)
少年は歩む。心に消えぬ焔を宿し、ただ、絶望にも似た、吸い込まれるような暗闇を。進む。自分が信じた道を。
その果てにあるものは――




