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6/9

決意

今回、やや短めです。

 エイヌはコーニイの気迫に押されたのか、すぐに部屋から出て行った。

 階下でエイヌの「お母様――」という声がする。


 ああ、また母に言いつけに行ったのか。


 母を連れてきて、母と一緒にコーニイを貶すのだろう。

 それとも母は、怒鳴るのだろうか。



「いいじゃない、出て行きたいというなら、出ていかせれば」


 コーニイにとっては、思いがけない母の言葉だった。


 そうか。

 そうなんだ。


 やっぱり、この家で私は、いらない子どもなんだな。


 なら、もう良いや。


 コーニイの中に僅かに残っていた、母への慕情はこの瞬間に消えた。




「そうか、そんなことがあったんだ……」


 翌日、コーニイは学校で、アズボスに家での出来事を話した。


「あのさ。コーニイは本当に、家を出るつもり?」


「うん。……行く宛てとか、何もないんだけど。でもあの家に、私の居場所はないから」


 アズボスはコーニイの手をぎゅっと握る。

 コーニイの胸が驚く。


「じゃあ。じゃあ、一緒に行かないか? お父さん、帝国の研究機関から招聘されたんだ。間もなく僕もお父さんと一緒に、この土地を離れる」


「え、アズ、帝国に行っちゃうの?」


 アズボスが遠くへ行ってしまう……。

 せっかく、仲良くなれたのに。


 アズボスだけじゃない。

 彼のお父上。優しくお料理上手なお父様とも……。

 それに、遠い島から来たという、兎獣人のネオスとも……。


 もう、会えなくなるのか……。


 寂しいな。

 もっと話をしたい。

 もっと……。



 コーニイはアズボスの手を握り返す。

 アズボスが目を丸くする。


「一緒に行きたい。アズと一緒に行きたいよ! いえ、絶対行くわ。私」


 コーニイの決意に、アズボスは力強く、何度も頷いた。



 それからのことは、アズボスの父、ガルフ・ヒダルが請け負った。


「そうか。『行動』する気になったんだね、コーニイ」


 ガルフはコーニイの頭をなでる。

 心地良い。


「ではコーニイとアズが婚約するってことにして、一緒に帝国に行こう」

「「ええ!!」」


 当然二人ともびっくりする。


「騎士爵を持つお宅のお嬢さんを、勝手に領地の外へ、連れ出すわけにはいかないだろう?」


 コーニイはイチゴよりも赤い顔になる。

 そんな、いきなり、婚約なんて……。


「そ、そうなんだ。……ぼ、僕は構わないけど、コーニイは嫌?」

「い、嫌じゃ……ないです」


 七日後に、ガルフはアズボスを伴い、コーニイの邸を訪れた。

 コーニイの両親に、「婚約」の話を出すと、二人は戸惑いながらも反対することはなかった。


 ほっとしたコーニイはアズボスの顔を見る。

 アズボスの瞳に、半分垂れ耳の少女が映っていた。


 書類に両親からのサインをもらい、ガルフ親子がソファから立ち上がった、その時だった。


「その話、コーニイの婚約話。ちょっと待て!」


 客間のドアを乱暴に開けたのは、エイヌの婚約者である、ローレンだ。

 その後ろには、きつい目をしたエイヌがいた。

次回、コーニイは無事に、アズボスと旅立てるのだろうか。

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― 新着の感想 ―
[一言] おいおいおい、ここにきて邪魔とか(;゜Д゜)
[一言] ちょっと待ったコールキターーー!!!!(ねるとん紅鯨団)
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