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~第九章~

俺だけを残したこの車両に再び闇と静寂が訪れる。


「・・・」


手に取ったこの物体・・・ブレード・フィンを眺める。


トレイン・マークが渡したこれは・・・武器だ。


しかも簡単に人を殺せる。


ということはこの先の目的地はかなり危ないところってことだ。


なんだよこの展開、信じられない。


当たり前か・・・


いろいろなことが徐々に解決していく。


憶測でしかないが、すこしは気が楽になった。


ただ、いきなり人を殺すことなんて出来っこない。出来るはずが無い。


不安と安心が相互して俺の頭の中を駆け巡った。


それに・・・


あいつが言ってた最後の言葉・・・


眼部強化。


それってさっき俺にも言った能力強化見たいのもだろう。


だからあいつはその力・・・確かスルー・アイだっけか。


きっと眼の力が強化されて、いろいろな事まで見えるのだろう。


それで俺の名前も、やっていることも分かったんだ。


てことは、俺の四肢強化ってやつもその名前の通り、体が強化されたってことか?


それとも身体能力か?


徐々に疑問が解決していった。


最後の残った疑問は、この四肢強化の力だ。


はっきり言って何が起こるのかはわからない。


想像は出来るがそれはやはり、想像でしかない。


試してみるか・・・


ゆっくりと立ち上がり、今まで座っていた座席に武器を置く。


そしてひとつ深呼吸をして、後ろの座席に正対した。


正拳は怖いな・・・


腕を前に突き出し、そのまま座席の背もたれに近づける。


ピンッ


グシャ!!


「!?」


ま、マジかよ!?


俺はそのまま近づけた拳で背もたれにデコピンをした。


すると、背もたれは音を立てて当てた場所が粉々に砕け散った。


これ・・・全力でやったら大変なことになってたぞ!?


その座席を見て身震いした後、おとなしくしてようと座っていた座席に戻った。


よ、よし。能力は分かった。とにかく危ねえ。


これでまたひとつ疑問が解消した。


残る疑問はあとひとつ・・・


「・・・目的地はどこなんだ」


ガララッ!


「!?」


突然、車両間の連絡通路の扉が開く音が響いた。


どうやら正対する方向から響いてきたようだ。


俺は反射的に音がしたほうの扉に背を向けている座席の背もたれに身を隠す。


誰だ!?トレイン・マークか!?


しかし奴ならすぐさま声を掛けてくるがこいつは掛けてこない。


どうやらべつの奴らしい。


この列車に他の奴が乗ってたのか!?


ホームでは俺一人だったし、途中で止まった感じも無かったぞ!?


息を殺して静かにその反応を待つ。


数秒待った後、足音がこちらに近づいてくる。


一歩一歩近づくたびに心臓の鼓動が激しさを増していく。


くそっ!なんなんだよ!?この列車は!?


堪えていた息ですら、徐々に口から零れるように溢れ出してしまっている。


「誰かいるのか?」


「!?(ばれた!!)」


零れた空気に気づいたのか、その人物が声を上げた。


どうやら人間の男のようだ。


ちっ・・・もう隠れても無駄か。


「・・・あぁ」


俺は勝手に観念して隠れていた座席からゆっくりと立ち上がった。


視界に入ったそいつの外見は俺よりかはすこし年を取っているように見えて、深くニット帽を被り黒のスタジャンに灰色に色落ちしたジーパンを履いていた。


年齢的には20代の半ばから後半といった所だろう。


そして腰には、一本の刀が携えられている。


「今の音は?」


先ほどの背もたれを破壊したときの音を聞いたのか、かすれた声で聞いてきた。


「あぁ・・・ちょっとした試しみたいなやつ・・・」


そして俺は後ろの席を親指で指す。


「試し・・・能力か・・・」


「あんたもトレイン・マークに会ったのか!?」


能力という単語に反応し俺は荒々しく声を上げた。


「・・・まあ落ち着けよ。俺は『あんた』なんて名前じゃない」


興奮した俺とは正反対に、冷静でいたそいつはゆっくりと近づいてきて、俺の目の前の座席に腰を落とした。


座りながら、こしの刀を座席の脇に立てかける。


「俺の名前は『杉弓吾朗座(すぎゆみごろうざ)』だ。年は26、整体師と副業で剣道の道場の師範をやってる」


あぁ、だからトレイン・マークから刀を貰ったのか。


「お前の言うトレインなんたらとか言う奴にはあってはいないが車掌の格好をした男には会った。これはそいつから貰ったものだ」


そういって脇に置いてあった刀を持つと俺の目の前に水平にしてかざした。


「これはクルーエル・ソード。その男から名前を聞いた」


「・・・」


車掌の格好をした男・・・トレイン・マークのことだな。名前は聞いていないのか。


杉弓は刀を見せ終えると、再びゆっくりと脇に戻した。


「何を黙ってる。俺が自己紹介したんだ。お前が自己紹介しないなんて失礼だぞ?」


いろいろと考えていた思考を杉弓は大人っぽい格言でそれを停止させた。


「あ、悪い・・・です」


一般常識くらいは分かっている。


年を知った俺は話し言葉を敬語に直した。


「俺は上総伊織です。年は17、高校生です」


「別に敬語じゃなくてもいい。俺は敬語が嫌いなんだ」


すこし機嫌の悪そうにそういってきた。


「そ、うか」


別に杉弓にすかれたいわけではないが敬語でなくてもいいならわざわざ使う必要も無いだろう。


「ちなみに空手道部に所属してる。これでも全国で結構は有名なんだ」


そして俺はブレード・フィンを杉弓に見せた。


「これはブレード・フィン。俺もあの男から貰ったんだ」


そうして武器を座席に置く。


一通り、自己紹介を終えた後に杉弓が不意に右手を出してきた。


「まぁこれも何かの縁だ、よろしくな」


「・・・あぁよろしく」


俺はその差し出された手を握り返した。


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