~第八章~
シャッシャッシャッ・・・
聞きなれない音と座席の下から体に伝わる振動が、本当にいつも乗っている電車ではないと改めて実感させられる。
進行方向に正対している座席に腰掛け、窓のスペースに肩肘を立てながらため息を吐いた。
「はぁ・・・」
何で俺はこんな電車に乗ったんだ・・・
姉ちゃんの名前を聞いて・・・心配になって・・・動揺して・・・
あの時ははっきりいって何も考えることは出来なかった。
姉の名前が出てきて、列車が出発した。
それを無我夢中で追い、死にそうな思いまでしてなんとか乗った。
乗ったはいいが・・・
「どこに向かってんだよ・・・」
考えれば考えた分だけ口からため息が零れてきた。
「おい」
ふと掛けられた声に気づき振り向くと、そこには先ほどの車掌がそこに立っていた。
表情はどこか気だるそうで、いかにも早くしろ見たいな顔をしている。
「乗車券を出せ、確認する」
左手が顔の前にずいと差し出された。
右手にはなにやら変てこな機械が握られていた。
「乗車券?」
「きっぷだよ、きっぷ」
「あぁ」
そういって気だるそうな説明を聞いて俺はこの車掌に買ったきっぷを渡した。
すると車掌は俺から受け取った切符を先ほどの機械に通す。
「な、にして・・・るんですか?」
何故か改まって敬語になってしまった。
「んだよその言葉遣い・・・気持ちわりいな・・・確認だッつったろ?能力確認!」
「能力確認?なんだそれ?」
すこし頭にくる単語があったが冷静に聞き流したことにして、疑問に思ったことをたずねる。
「あ~・・・説明だるい」
「は?」
機械から渡したきっぷが出てきた。
「まぁ目的地に着けば、嫌でもわかるさ・・・お!」
この列車に乗ってから分からないことだらけだ・・・
「へぇ、四肢強化か!」
「ししきょうか??」
また分からないことが増えた。
車掌は俺から受け取ったきっぷを胸ポケットにしまう。
「気にするな、それとこれがお前の得物だ」
そういうとどこから出したのか分からない物体を、座っている座席の横に乱暴に置いた。
「なんだよ・・・これ・・・」
ぱっと見、俺にはこれがなんだか分からなかった。
ボクシンググローブのように腕にはめるような形の物。
しかしそれは手の先から、ひじ辺りまでの長さで手の甲側を覆うように金属の板が付けられている。
さらに・・・
「これ・・・本物?」
「勿論」
俺の目に留まって釘付けにしたもの。
それはこの物体のボクシンググローブでいうインパクトポイントと、手の甲、そして肘の先端辺りに白銀の刃が取り付けられていた。
そしてそれは対になって俺の目の前に置かれていた。
「・・・」
言葉が出なかった。
刃物なんて包丁かカッターのような細くて小さな刃が取り付けられたものしか見たことが無いのに、俺の目の前にある物体は、初めて見る大きさ、長さ、鋭さだった。
すこし触れてみるとそれは氷のように冷たく、持ち上げてみるとそれなりの重量がある。
だけど辛いような重さではなかった。
「これはブレード・フィンだ。それ使って何とか生き残れよ、空手部には丁度いいだろ、じゃあな!俺は仕事に戻るわ」
な、なんで・・・こいつは俺が空手道部だってことも!?
この物体を置いて俺に背を向けながら、先頭車両に向かっていった。
「おっと忘れてた」
くるっと振り返り、
「俺の名前はトレイン・マーク。能力は・・・スルー・アイ。眼部強化だ」
そういい残してそいつ・・・トレイン・マークは先頭車両に消えていった。




