~第五十二章~
[杉弓視点]
「はぁ!・・・はぁ!・・・」
息が苦しい。足が進まない。
何故だ。
こんなに早く急いで駆けているというのに自分の体が全く前に進んでいないかのように錯覚する。
ウィンガルム族の洞窟の前で二人組みの人間たちと対峙していて今にも争いだしてしまいそうな雰囲気だったが、後ろから上総が現れてその空気が一変した。
『今は争ってる場合じゃない。四人でユニコーンの泉に向かってくれ!ここは俺が引き受ける。ダッシュとロードは二人の道案内も兼ねて護衛してくれ』
はっきり言ってこの上総の言葉には驚愕した。
確かにシーナさんの状態はかなり危険なところまで陥ってしまっていたがかと言って俺達自身まで危険に晒すことはないと思った。
グリムハウンドに呼び止められて何を言われたのかは知らないがあまりにも危険すぎる判断だった。
無論、俺達は反論したが上総がそれを押し通して今は篠崎、それにダッシュとロードの道案内でユニコーンの泉に向かっているところだ。
「くそ・・・体が重たい・・・」
いくら足を前に前に踏み出してもダッシュたちに近づくところか篠崎にも徐々に離されてしまっている様な感じがする。
「杉弓さん!大丈夫ですか!?」
不意に前を走る篠崎が俺の方を振り返り声を掛けてくれた。
「大丈夫だ・・・」
畜生。情けない話だぜ。
体力で女の負けるなんてよ。
それが俺のプライドに火をつけて重たい足取りを加速させた。
「ワウ!!」
数分走ると急にダッシュが止まり吼えた。
近くに駆けて行くとそこには一面に広がるとても綺麗な泉がせせらいでいた。
「これが・・・」
「ユニコーンの泉・・・」
俺と篠崎はその壮麗な泉の姿に目を奪われしばし時の流れを忘れてしまうほどだった。
「ワウゥ」
突然、ロードに服の裾を引っ張られる。
「な、なんだ?」
「ウゥゥ、ワウ!」
いや、分からないし。
言葉が通じるはずも泣くロード言いたいことが全く分からなかった。
こんなことならフリントを連れてくるべきだった。
しかし、フリントは何をしているんだ?この一大事に・・・
色々考えていたときにふとあることに気がついた。
純潔の人間の処女・・・
そうか!篠崎の前にしかユニコーンは現れないからロードはここから俺を離そうとしているんだな。
そう感じ取って篠崎には気づかれないように後方の草むらに身を隠す。
そこにはすでにダッシュも隠れていた。
早いな・・・




