~第四十五章~
早まるなよ!篠崎達も襲ってきた奴らも!
暗い洞窟の中を俺は一人で駆けていく。
今は人間同士で争ってる場合じゃないんだ。
この世界にやってくるはずの危機を救い、この世界から無事生きて帰ること。
これが俺達人間のやることだ。
決して・・・決して争うんじゃないぞ!
そんな思いを胸に洞窟の外の明かりを目指してただひたすらには走り続ける。
フリントはどこに行ったんだ?
シーナのところか?
もしあいつが人間たちと対峙していたら大変なことになる。
取り返しのつかないことに。
まずは目の前の危機を、シーナを助けなきゃ。
息が切れるのが感じられない。
きっとそれほど必死なんだ。
不意に目の前に一筋の明かりが見え出す。
出口だ!
俺はそれ目掛け脚を早めた。
日の光の下に躍り出る。
こんなジャングルでも激しく照らし出すほどの光。
目を慣らすのに時間が掛かったが次第に景色がはっきりとしていく。
俺の目の前に移った景色は洞窟の入り口の前に立ちふさがる篠崎と杉弓、ダッシュとロード。
そしてそれと対峙するように佇む二人の人間だった。
「杉弓!篠崎!」
「上総か、遅かったな」
空気は完全に緊迫状態。
少しでも突付けば一気に争ってしまいそうなほどに張り詰めている。
「おいおい、なんだよお前ら。まだ化け物に加担する人間がいたのかよ」
不意に帽子を深々と被り、髪を金髪に染めた二十代くらいの男が声をあげた。
二サイズも大きい服とズボンを着ていて誰がどう見ても柄が悪そうなのは一目瞭然だ。
「こいつら本当に人間なんですかねぇ?」
もう一人の男、柄の悪そうな男とは正反対で、髪は黒、知的な眼鏡を掛けていて服装もかなりぴちっとしている。
「何しに来たんですか?あなた達」
篠崎が声を上げる。
「「何しに来たんですか?」だってよ!聞いたか?」
「えぇ、しっかりこの耳に響いてきましたよ。まったく馬鹿な女です」
嘲笑うように篠崎の言葉を復唱する男とそれを貶す男。
「質問に答えてください!」
その言葉に苛立ちを覚えたのか、少々怒声を交えた声で男達に投げかけた。
「篠崎、落ち着け」
その様子を見て明らかにまずいと思い、篠崎に注意を促す。
「・・・なんだこのアマ。生意気だな」
「あの弱らせた狼の化け物どもを殺しに来たのですが・・・ムカつきますねぇ」
ぴんと張り詰めていた空気の糸が途切れた瞬間だった。
眼鏡の男は両腰に納めていた二つのナイフを手に取る。
柄の悪そうな男はそれらしい武器は持っていなかった。
駄目だ、もう止められない。
がらっと変わった空気の印象と男達の行動が俺にそう思わせる。
「グルルル」
「ウゥゥ」
ダッシュとロードもそれを察知して男達を威嚇し始めた。
「杉弓!篠崎!それにダッシュとロード!」
俺が声を荒げる。
それに反応して二人と二匹が振り返った。
「今は争ってる場合じゃない。四人でユニコーンの泉に向かってくれ!ここは俺が引き受ける。ダッシュとロードは二人の道案内も兼ねて護衛してくれ」
「けど!!」
俺の提案を一発で了解してくれるとは思っていない。
「いいから行け!シーナを見殺しにするつもりか!?」
だから、怒りをこめて声を荒げる。
「・・・はい。分かりました」
分かってくれたのか篠崎達は頷いて武器に手を掛けるのを止めてくれた。
「なにをごちゃごちゃと話してるんだよ?」
「作戦会議ですか?」
今にも襲い掛かってきそうな男達。
その言葉を発した瞬間、篠崎達がダッシュ達に続いて泉のある方角へ走り出した。
「無事に帰って来いよ!!」
「上総君も!!」
走り行く篠崎達に声を掛けると俺のはなった言葉をそっくりそのまま返されてしまった。
「へっ、信用されてねえな俺」
そう言って背中に携えていた武器を両手にはめ込む。
「・・・てめぇ、かっこつけやがって・・・」
「女を逃がすとは・・・男の鏡ですねぇ」
明らかに怒り心頭している男達。
「俺は争いたくはないが、無抵抗に殺されるつもりもない。かかってこいよ」
右手の中指で相手を威嚇する。
「「・・・殺す!!」」
その挑発に完璧に嵌った男達が俺目掛け飛び出してきた。




