~第四十四章~
「グリムハウンド様!!大変です!!」
不意に駆け込んでくる足音と聞き覚えのある声が響き渡った。
「何事じゃフリント?」
駆け込んできたのは息を切らしたフリントだった。
「ニ、ニンゲンが!昨日襲われたニンゲンが、洞窟の前に!!」
「な、んじゃと?」
「なんだって!?」
フリントの口から予想だにしない言葉が発せられた。
「間違いないです!昨日の二人組みです!」
「こんなときに!!」
そういうと杉弓が全速力で駆け出していってしまった。
それに続いて篠崎とフリントも駆け出していく。
くそっ・・・最悪だ。
どこまで醜いんだ俺達は・・・
露になる怒りが堪えきれず、握り締める拳からは一筋の血が流れ出した。
「・・・くそ!!」
堪えられなくなり俺も駆け出そうとする。
「待つのじゃイオリ!!」
その刹那、長老に呼び止められてしまった。
「何をするつもりじゃ・・・まさか同胞と争うわけではあるまいな?」
「・・・でも。ここのみんなを見殺しにするつもりもない!」
力の篭った声が上がってしまう。
頭にも完璧に血が上ってしまっていた。
「人間は・・・俺達人間は必ずやられたらやり返さなきゃ済まない生き物なんだ・・・ここのみんが危ない!!」
「・・・ひとつ聞いてくれるか?」
決心したかのように長老が口を開く。
「な、なんだよ・・・」
「フリントとシーナは・・・」
のどを唾が通り過ぎる。
「ニンゲンの血を引いている」
え?
なんだって?
ニンゲン?
人間の血?
「どういう・・・意味だよ・・・」
言葉に頭がついていっていなかった。
意味が分からない。理解できない。
「二人は・・・この世界にやってきたニンゲンの女とウィンガルム族の間から生まれたのじゃ」
「・・・嘘だろ」
言葉の意味が理解できない。頭の中が機能しない。
「嘘などではない。数年前、おぬしらと同じように現実世界からやってきたニンゲンがおる。そのなかの一人であった女がウィンガルム族に捕らえられ陵辱されたのじゃ」
頭の整理が追いつかない。言ってることが信じられない。
「一人だった女は、森で出くわしたウィンガルム族に襲われ集団で嬲り者にされたのじゃ。そのときに身ごもったのがあの二人じゃ」
言葉を信じたくない。信じてたまるか。
「女が妊娠したことを確認したウィンガルム族は一旦陵辱をやめたが、二人を出産すると再び女を嬲り者にし始めた。女はそれが耐え切れず、二人を残して自害。森に置き去りにされた二人をダッシュとロードの父親が拾ったじゃ。それでワシらが育てた」
唾を飲み込むことさえ忘れていた。どんどんと頭に入ってくる真実に時間さえ止まっているのかと思わされた。
「二人はこのことを知っておる。フリントは自分達を置き去りにして死んだ母親のことを恨み、それがニンゲン嫌いのもとにはなったのじゃが、シーナはニンゲンである母親を恨まず、かといって母親を死に追いやったウィンガルム族を恨んではいない」
そうか・・・だからシーナは頑なに自分達の出生を明かさなかったのか。
「そう、だったのか・・・」
言葉なんて出てくるはずもなかった。
悪いのはウィンガルム族。でもウィンガルム族がいなかったら自分達は生まれていない。
「・・・二人を救ってやってくれ」
「あぁ」
頭を下げる長老を尻目に俺は洞窟の外へと向かっていった。




