~第四十三章~
耳を覆いたくなるような事実だった。
長老の口から発せられたのは俺達人間がシーナをあそこまで追いやっているということだ。
「そんな・・・でも、私達は何も・・・」
篠崎が今にも泣き出しそうな声でつぶやく。
「分かっておる。おぬし達ではない」
そんな篠崎を優しい声で慰める。
「じゃあ一体誰なんです?」
杉弓が迫るようにして長老に問いただす。
「・・・先日、フリントとシーナはニンゲンに襲われ傷を追った。おそらくは・・・」
長老はそのしわがれた声を弱くしてつぶやいた。
「・・・なんてことをしやがる。惨すぎるぜ」
「そんなに同胞を攻めるな。そやつらも生き残りたくて必死だったのじゃろう」
俺達人間がやったことに底知れぬ恐怖を抱いていると、長老の口から予想だにしない言葉が零れてきた。
こいつは・・・なんて狼なんだ。
驚きは隠しきれなかった。
まるで神のような寛大な心を持っている。
もしかしたら神の生まれ変わりなのかもしれない。そう思わせるような一言だった。
「なにか助ける方法はないのか!?」
「・・・我らはおぬしらにとっては化け物なのだぞ?それを助けるというのか?」
「昨日も言ったろ?怪我してる奴は助けるってのが俺の心情だ」
本音だった。
シーナを助けたい。あの苦しみからシーナを救ってやりたい。
そう思わせる心からでた嘘偽りにない言葉だった。
それは篠崎や杉弓も同じだった。
「・・・おぬしら・・・」
まっすぐと長老の目を見つめる。
「全く・・・おぬしらは分からぬ」
小さくつぶやくと長老はその大きな体を引き起こす。
「ここから遥か南に『ユニコーン』」が住まう泉が存在する」
「ユニコーン?」
「そうじゃ、彼らの角はどんな病も瞬時に直す霊薬になるのじゃ」
「じゃあ、それを使えば!!」
希望が心いっぱいに満ち溢れた。
「あぁ、直るじゃろう。だが・・・」
言いよどんだその言葉に俺の希望は少し霞む。
「彼らは純真な心を持った純潔の乙女の前にしか姿を現さぬ」
「純潔の・・・乙女」
何故か無意識に篠崎のほうを向いてしまった。
本当に無意識だ。
長老も杉弓も篠崎のほうを向いていた。
「え、えぇ!?わ、私!?」
篠崎が頬を真っ赤に染めながら声を荒げる。
無理もないだろう。
もし俺が女で同じ立場だったら恥ずかしくて死にそうだ。
「そなたの匂いからは汚れた匂いはせぬ。きっと彼らも現れるだろう」
「そりゃあ・・・まぁ、まだですけど・・・」
長老・・・匂いって・・・
いや!そんなことより頼みの綱は篠崎だけだった。
「頼む篠崎。その泉まで行こう」
「・・・」
俺の言葉に恥ずかしそうに顔を俯かせる。
無理は承知だ。
「頼む」
「わ、わかりましたよぉ・・・もう」
そういって篠崎は何とか了解してくれた。




