~第四十二章~
「な、なんだこれは・・・?」
俺の目に飛び込んできたのは両目を塞ぎたくなるような光景だった。
手首から二の腕に掛けて斑に広がる紫色をした毒々しい痣。
そしてそれは、脈を打つかのように膨れ上がりながら鼓動をしていた。
「うっ・・・」
その光景を目にした篠崎は口を両手で覆い、目を反らした。
「上総・・・こんな痣見たことあるか?」
横で一緒にシーナの容態を伺っていた杉弓の声が聞こえてくる。
「いや・・・」
もちろん見たことがあるはずもない。
何しろこの痣一つ一つがまるで生きているように鼓動しているからだ。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
その鼓動が打ち付ける度にシーナは荒いと息を零して苦しそうに眠っていた。
額には多量の汗が流れ出し、纏っている毛皮の衣服はすでにびしょ濡れだ。
「なぁイオリ!これはなんなんだよ!?」
「分からん。俺達の世界でこんなものは見たことがない・・・」
「じゃどうなるんだ・・・まさか、姉上・・・」
「それ以上言うな」
言ってはならないようなことをフリントが口走ると思ったので俺はその口を左手で塞いだ。
「とにかく、なんでもいい。布でも毛皮でもいいから濡らして体中の汗をふき取ってやれ!それと誰か氷を作れるものはいないか!?そいつに氷を持ってこさせ、額を冷やしてやれ!俺は長老に会ってくる!」
「わ、わかった!」
そういうとフリントは一目散に部屋を駆け出していった。
とりあえず長老に話を伺ってみよう!なにか・・・何か知っているかも!!
俺は部屋を駆け出した。
「上総君!私も行く!」
「俺もだ!」
後ろから篠崎と杉弓の声が聞こえてきて俺達三人はこの部屋を出て長老のいる奥の部屋へと掛けていった。
「長老!」
長老の部屋に駆け込んでいき声を荒げる。
「長老!いらっしゃいますか!?」
「イオリか・・・おるぞ」
草のカーテンの奥から声が聞こえてきてそれがゆっくりと開く。
「あの・・・ハァ・・・シーナが・・・」
やば・・・全力で走ってきたせいか、息が・・・
肩を大きく揺らして両膝に手を突きながら何とか声を振り絞って出そうとする。
「分かっておる。熱と痣のことであろう」
しわがれた声が俺の気持ちを察して先につぶやいた。
「熱はおそらく細菌からの感染による発熱じゃ。あの痣も感染によるもじゃろう」
「やっぱり・・・」
俺達は立ち尽くしたまま長老の言葉に耳を傾けた。
「じゃが・・・」
「?」
と、長老が躊躇いを表す。
「あのような感染症は長年生きてきた中でも見たことはない。おそらくこの世界の細菌ではないであろう」
「・・・まさか」
嫌な予感はしてた。
でもその予感が的中するとは思ってなかったししてもらいたくもなかった。
「・・・おぬしらニンゲンの仕業じゃ」




