~第四十章~
薄暗い洞窟をシーナの後ろに続いて歩く。
正直なところ、早く横になりたかった。
こっちの世界に来てから始終歩き詰め。
それをこの暗く長い洞窟を歩くのは体にかなり堪えた。
それは篠崎や杉弓もおなじだった。
前に進める一歩がどんどん弱弱しくなっていくのが後ろから見ても明らかでその背中からは言い表せられないような疲労の表情が見て取れる。
「すまぬな・・・この洞窟は長くて」
そんな気持ちも見透かされていたのかシーナが心配そうに声をかけてきた。
「はい、でも大丈夫です」
その言葉に篠崎が答える。
俺と杉弓は黙ってなんとか足取りを進めていた。
「着いたぞ。今日はココで休養してくれ」
そういってシーナの指差した部屋は、覚悟はしていたがやはり俺達人間がいつも眠っているような環境とは程遠かった。
草が敷き詰められた地面の上に他の生き物の毛皮であろう巨大な寝床。
枕などあるはずもなく三人して雑魚寝の状態だった。
「・・・助かるよ」
篠崎と杉弓はもう立っていることすら叶わない様子で躊躇はしたもののその毛皮に一気に倒れこんだ。
それを見て俺とシーナが笑いを零す。
「ははは、よほど疲れていたのだろうな」
「無理もないよ、こっちに来て歩き詰めだ」
たちまち意識を飛ばしてしまった二人。
篠崎も女だというのに全く戸惑わないのは疲れせいか。
「シーナ、助かったよ。これでなんとか休むことが出来る」
「そ・・・うか、それは・・・よかっ・・・」
俺がシーナにお礼を言いながら振り返ろうとしたときだった。
俺の目に映ったのはこちらに向かって力なく倒れこんでくるシーナの姿だった。
「シーナ!?」
もたれかかった体を支える。
力が入らないのか全体重をシーナは俺にゆだねていた。
肩の後ろに回った口から荒いと息が聞こえてくる。
「あ、あれ?どうしたんだ・・・力が・・・」
微かに感じる体温には熱気を帯びていた。
シーナの胸から伝わる柔らかさと心臓の鼓動が俺の体の中に入ってくる。
「とりあえず、シーナの部屋まで行こう」
そういって俺はシーナを背中側に回してひょいっと背負った。
なんだ軽いんだな。
「イ、イオリ!?何をする!?」
先ほどの弱弱しい声とは裏腹に甲高い声が響いた。
「何って・・・連れてくだけだよ。歩けないだろう?」
「そんな・・・イオリだって疲れいるのに・・・」
「気にすんな、これくらいは平気だ」
と、多少見栄を張ってみる。
シーナは顔を夕焼けよりも真っ赤に染め上げていた。
きっとこのウィンガルム族の集落にいるから異性への免疫がないんだろう。
なんたっているのはフリントか狼たちだけだからな・・・
そしてシーナの案内のもとシーナの部屋に向うと、そこにはフリントがいてシーナのことを任せるといい、俺は先ほどの俺達の寝床へ向かう。
もうすでに限界を突破していたのかどの道を通ってきたのか分からず、俺が歩いているのかさえ分からなかった。
そんな中、なんとか部屋について篠崎と杉弓の寝ている間の寝床に力なく体を落とした。




