~第三十七章~
あたりをほんの僅かな陽光が木々を照らし出し始めた。
空を見上げても鬱蒼と生い茂るジャングルで直接、太陽を視覚に捉えることは叶わなかった。
そこに広がるのはただ寡黙に立ち尽くす異形な木々だけだ。
こっちの世界に来てからまともに太陽の光を見ていない。
今、俺達はシーナとフリントに連れられてウィンガルム族の集落を目指しているところだ。
周囲の警戒なのかダッシュとロードが先頭を切って進んでいる。
その後をフリントが続き篠崎、杉弓、俺、シーナの順番でジャングルをひた歩いていた。
「こっちの世界に来てから太陽を全然見てないよ」
ピクニック気分でこのジャングルを散策など出切る筈もない俺達は、歩き出してからほとんど一言も喋ってはいなかった。
俺はどうもそれが耐えられず思わず口を開いた。
「・・・そういえばイオリ達はこの世界をどこまで知っているのだ?」
俺の言葉に答えるような言葉ではなかったが、後ろから声が聞こえてきた。
「う~ん、そう言われると全くって言っていいほど分からないな」
声の招待はシーナ、俺はその言葉に答えることにした。
「そうか・・・シャットダウン・トレインは知っているか?」
「シャットダウン・・・あぁ、俺達が乗ってきたあの化け物みたいな電車のことか」
一瞬何のことか分からなかったがどこか聞き覚えのある単語とトレインという言葉からすぐにあの電車だということが分かった。
「あの電車が現実世界に現れて、その世界の住人をまとめて何人か連れてくる・・・これはこの世界の危機を示しているんだ・・・」
「危機?」
足取りをとめずにシーナの言葉に耳を傾ける。
「あぁ、今から・・・ちょうど十年くらい前か・・・シャットダウン・トレインが現実世界に現れた、その時は幻獣王ヨルムンガンドの反乱が起きたんだ」
「幻獣王・・・」
それに・・・十年前、ちょうど俺の親父が行方不明になった年じゃねえか・・・
信じたくはない憶測が胸いっぱいに広がる。
「それでシャットダウン・トレインで連れてきた一人の人間の男が幻獣王を倒してこの世界を救ったんだ」
「・・・」
嫌な憶測がどんどんと胸に押し寄せてくるのが分かる。
やめろ、信じたくはない。
「だが、この世界を救っているニンゲンたちは決まってこの世界が危機に瀕したときに現れる・・・いつしかニンゲンは災いを呼び寄せる者と、呼禍者と呼ばれるようになってしまったんだ」
「災いを呼び寄せる者か・・・」
強ち間違いでもないだろう。
俺達人間は事あるごとにやれ戦争だなどと躍起になって他国を潰そうとしていた時代があった。
こっちの世界の者からしたら、人間がやってきたところでそいつが世界を救っても人間がこの危機を呼んだとしか考えないだろう。
「でもきっと今回も、お前達の誰かがこの世界を救ってくれるんだ」
シーナの表情が柔らかくなる。
俯くようなしぐさで微笑んだ。
や、やべ・・・この人可愛すぎだろ!!
あぁ、俺の理性があぁぁ・・・
崩れてくうぅぅ・・・
なんとか突貫工事だが理性の崩壊を防ぐ。
「どうしてシーナはそこまで俺達人間をよく言ってくれるんだ?」
フリントにはあそこまでぼろ糞に言われたのに・・・
「う、すまない・・・それも言えないんだ」
俺の声に反応して首を上げるも、言えないことだったのか再び顔を俯かせてしまった。
「ワウ!」
不意に前方にいたダッシュが吠えた。
「姉上!集落が見えたよ!!」
それに続いてフリントの声が上がると篠崎と杉弓が喜びを露にして駆けていくダッシュ達に続いて行く。
「少なくとも私の目にはイオリ達が災いを呼ぶような者達には見えぬよ」
そういって微笑みながら短い髪をなびかせながら集落へと走っていった。
さきほど工事した理性のビル群が爆破されたように豪快に崩れ去っていった。
[近況報告]
この度インフルエンザに感染していた私ですが病状の回復が見えてきたので執筆を再開したいと思います。
数少ない購読者の方々お待たせしたことを大変心からお詫びいたします。
それでは「シャットダウン」をお楽しみください^^w




