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~第三十二章~


「お前達!ニンゲンか!?」


少年が息を整えると先ほどよりも数段小さな声で声を上げた。


かなり大きな声だが・・・


「あ、あぁ・・・」


そんな簡単な返事しか出来ない俺。


「今度は何しに来た!?さっきのお返しか!?」


牙を剥き、犬のような唸り声を上げる。


狼達もそれにつられ、両側で少年を中心に円運動をしながらうなり声を上げる。


「ま、待て・・・話が読めない、さっきのお返しって何のことだ?」


すこし心当たりはあったがここは、そう言ってみる。


「嘘をつくな!!さっきいきなり現れて姉上を襲おうとしたじゃないか!!そいつらを追い返して怪我させたお返しに来たんだろ!?」


姉上?そうかそこの女性はこいつの姉か・・・


そんなことより、この少年が主張することには心当たりがなかった。


「なんのことだ?俺達は本当に知らない!!」


頭に血が上っているのか今にも吠え出して襲ってきそうな狼。


「嘘をつくなっ!!・・・ぐっ!」


声を荒げたと思うと少年は肩を抑えていきなりその場に片膝を着いた。


狼達がそれに気づき少年に近寄って顔を舐める。


「お、おい!大丈夫か!?」


倒れた少年を見て立ち上がる。


「く、来るなぁ・・・」


良く見ると少年も肩に大きな傷を負っていた。


「お前・・・怪我してるじゃねえか」


「うるさ、い・・・誰にやられたと思ってる!?お前達ニンゲンだぞ!?・・・この・・・呼禍者こかしゃが・・・」


呼禍者こかしゃ


何のことだか知らなかったがそんなことよりも少年の傷を手当てしなくては!


俺は両手の武器を外し、地面に置いた。


「その人間達がお前達に何をしたかは本当に知らないが、少なくとも俺は何もしない」


威圧を完璧に消したやわらかい声で話しかける。


ゆっくりと少年のもとへ足を進める。


「く、るな・・・」


「大丈夫だ・・・」


片目を閉じて、地面に倒れこむ少年。


「ウゥゥ・・・ガウ!!」


不意に一匹の狼が飛び掛ってきた。


ここで抵抗しちゃだめだ・・・


グシャァ!


「上総!!」


「上総くん!!」


杉弓と篠崎の声が重なって聞こえてきた。


狼の牙が俺の右肩を捕らえ食いちぎらんばかりで食いついてきた。


右肩を伝って手首の服の下から血液が地面へと垂れる。


「信じろ・・・」


それでも歩は止めず少年の下へ向かいたどり着く。


「グ、グウ・・・」


本当に何もしないとやっと伝わったのか狼が突き刺さった牙を抜き、出血した部分を舐めてくれた。


「・・・お前達」


そんな狼を見て少年は驚いたように両目を開く。


「お前・・・不思議な奴だな、他のニンゲンとは違う臭いがする」


少年も信用したのか小さな声でつぶやいた。


「俺はなんてったって俺だからな・・・」


近づいてきた狼の頭を優しく撫で、応急処置を始めた。



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