~第三十一章~
不意に少年が現れたところの草陰が揺らめく。
「今度は何だ?」
一瞬、後方に視線を移した少年だったが特に警戒することもなく再び看病を始めた。
後方の草陰から何者かの姿が現れる。
「なっ!?」
すこし声を荒げてしまって大きく開いた口を杉弓がふさいでくれた。
危うく気づかれるところだった。
後方から現れたのはなんと先ほどの羽を生やした狼の化け物だ。
数は二体。
「話せ杉弓!あの子が襲われる!」
狼はゆっくりと少年と女性の下へ足を進めていた。
俺は杉弓の抑えていた腕を振り解く。
そして、弾丸のように飛び出し一気に対岸へと向かった。
「待て上総!!・・・んの馬鹿野朗が」
それに続いて杉弓と篠崎も飛び出していった。
「危ねえぞ!!少年!!」
「え!?」
飛び掛って大声を上げながら近づいていく俺に気づいたのか、こちらに顔を移す。
狼も俺達に気づいたのかその足取りの方向を少年から俺に向けなおし駆け出す。
「ガウッ!」
「はぁぁぁっ!」
拳を振りかざし狼に向かっていく。
その時、間合いを見切られたかのように狼が背中を向ける。
次に瞬間、後ろ足で思いっきり川辺の砂利を蹴り上げ俺に飛ばしてきた。
「うお!?」
それに反応して両腕を体の前で交差させて防御する。
間合いを完全に詰めきれづ少し離れた場所に着地した。
くそ・・・犬の癖になかなかやるな。
片手を地面につき、砂利を握り締めた再び駆け出そうとした次の瞬間!!
「やめろぉぉぉぉっ!!」
少年がマイクでも使ったかのような大声を発した。
「いぃ!?」
その想像を絶する大声にたちまち耳をふさぐ。
杉弓と篠崎も俺のはるか後方に居るのにも関わらず耳をふさいだ。
狼達も一瞬体を強張らせて怯むと、そそくさと足を少年の方へ向けていった。
「はぁ!・・・はぁ!・・・はぁ!・・・」
肩で息をする少年。
驚いたことにその足元で狼達が垂れ下がった手を舌で舐めていた。
まるで懐いてるかのように。
完全に呆気をとられた俺はしばらくその場から動けなかった。




