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~第二十九章~


二度も飛ばされた意識をなんとかたたき起こし、ここに居ると危険だとのことで体に鞭を打って再び歩き出す。


こちらの世界に来てからかれこれ六時間は経過しようとしていた。


どれだけ歩いてもこの鬱蒼と生い茂るジャングルから抜け出せる気配は微塵もない。


「・・・おい、二人とも大丈夫か?」


先頭を歩いていた杉弓が心配そうに後ろの俺達に声を掛ける。


「あぁ・・・さすがに疲れたけどな」


「どれだけ歩けばこのジャングルを抜けられるんですか?」


さすがの俺達にも疲れの表情が顔に浮かび上がってきている。


ったく・・・杉弓の奴、どんだけ体力あるんだよ・・・


疲労困憊の俺達とは違って、疲れの表情は浮かび上がっているものの足取りはまだしっかりしていた。


「この先、ジャングルを抜けられるかどうかは分からないが、どこか安全な場所に移動しなくては休息も取れない。お前達だって寝てる間にいつの間にか天国に居るってのも嫌だろう?」


その言葉に若干恐怖を覚え、疲れきった体を前に歩かせた。


確かに杉弓の言うとおりだった。


この四方八方を木々に囲まれたジャングルで眠ってしまったらいつ死んでもおかしくはない。


見張りをつけることも出来るが先ほどのような化け物が来たらどうしようもない。


俺達はどこに存在するかも知らない安全な場所を求めてジャングルを突き進んだ。




「・・・しっ!」


荒い呼吸と地面を草木を踏みしめて歩く音を杉弓の声が止めさせる。


後方に居る俺達に水平に手を翳して足取りを止めさせた。


「・・・どうした?敵か?」


かすれ声のような小さな音量で杉弓に問いかける。


「いや・・・違う」


「ならなんだ?」


再び化け物が現れたのかと思い緊張が走るがどうやら違うようだ。


「聞こえないか?」


「・・・なにがです?」


緊張が解けた篠崎も武器から手を放していた。


「・・・水だ、水が流れる音がする。近くに川があるぞ」


その言葉を聞いて耳を澄ましてみると、さらさらと水流の音がかすかに聞こえてきた。


「確かに聞こえる」


こちらの世界に来てから食べ物はおろか水分すら取っていない俺達の心にかすかな希望が満ちた。


杉弓が耳の裏に手を当ててその水流の音を探る。


「あっちだ!行ってみよう」


方角が分かったのか杉弓の足取りに続き俺達も歩を進めた。




「・・・川だ」


「まじかよ」


「・・・」


俺達、三人は言葉を失った。


水流の音を探りその方角に進むと透明に澄み切った清らかな清流の音が目の前で流れ奏でていた。


警戒を怠らず、俺達はその川に近づき杉弓が水を一口すくって啜る。


「うん!飲めるぞ!」


喜びに満ちたその表情は疲れが一瞬にして吹き飛んでしまったかのようだ。


「やった!ついてるぜ俺達!」


「本当によかったぁ!」


それにつられ俺と篠崎も清流の水をすくって一気に啜った。


胃に入り込んでくる水は、体の疲れも心の疲れも一瞬で吹き飛ばしてしまうくらいおいしかった。


俺達は無我夢中でその水を飲む。


もはや敵の目など一切気にしていないかのように。


この川にたどり着いた頃には空も薄明るくなり、微かの陽光が差し込んで川に反射していた。





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