~第二十八章~
「・・・さく・・・!!かず・・・くん!!」
聞き覚えがある声が耳に入ってくる。
なんて言っているのかまでは分からなかったが、最近聞いたことのある声だった。
「・・・い、しっ・・・しろ!!・・・ずさ!」
もうひとつ聞き覚えのある声が頭に響き渡る。
最初のは女で次は男の声だ。
なんだ・・・なんて言ってるんだ?
俺を呼んでいるのか?
次第にその声がはっきりと聞こえだす。
「上総くん!!上総くん!!」
「おい、しっかりしろ!!上総!」
この声、篠崎と杉弓。
俺は、生きてるのか?
次第に細く開いていく視界にぼやけるようにして写りだす、二つの顔。
一人は瞳に涙を溢れるほど浮かべて俺の名前を呼んでいる。
篠崎・・・泣いているのか?
そっか、さっきの雨は篠崎の涙か。
瞳が完全に開き、ぼやけていた視界が鮮明になる。
「上総くん!!よかっ・・・」
「泣くなよ篠崎、俺はまだ・・・生きてる」
真っ赤に腫らした瞳に手をそっと添え零れ落ちる涙を優しく拭う。
「よかった・・・本当によかったよぅ・・・」
その手を両手で取って再び泣き出す篠崎。
あぁ・・・泣き止ませようとしたのに・・・
全くの逆効果じゃねえか。
「心配させるなよ。このやろう」
その脇には安堵の表情を浮かべ少し声を震わしていた杉弓がいた。
「らしくねえな、杉弓」
逞しい体と、髭の生えた表情を崩しながら微笑んでいる。
杉弓がうるさいと言い、やっと目覚めた意識を再び飛ばそうとしたのはそのすぐ後だった。
今思うと、親父の行方不明は俺と・・・俺達と同じじゃないのか?
あの時、親父が変なことを言っていた。
『今日は寂しいな』と。
もちろんガキの俺に理解できるはずもなく、おもちゃが欲しいの一心で全く気にも留めずに駅に向かった。
俺は風船を配っていたキャラクターに気を取られホームには入らなかったが、もし親父がそのままホームに言ってあの蒸気機関車に乗っていたとしたら?
考えすぎかもしれない。
でも、いきなり行方をくらますような人間じゃないし母さんとだって仲が良かった。
俺達の前で普通にキスだってする始末。
なのに居なくなったとしたら、事件に巻き込まれたとしか言いようがない。
警察に言って捜索もしてくれたが、なんの成果もなし。
俺がこんな目にあっていると考えると親父もあの蒸気機関車に乗ったと考えてしまう。
そしたら、親父はこの世界に居るのか?
姉も巻き込まれたようだし、親父まで居るとしたら二人とも俺が助け出してやる。
待ってろ!!姉ちゃん!親父!




