~第二十四章~
杉弓の目は完璧に飛んでしまっていてこちらを向いてすら居ない。
「とりあえず今はこの場から逃げよう、まだあの化け物は俺達に気づいてねえ!!」
そういって化け物に視界を奪われていた杉弓の眼前に割って入りなんとか正気を取り戻させる。
「あ、あぁ」
無事震えが止まった杉弓はしっかりと俺の目を見ていた。
「よし・・・今のうちに・・・」
「た、たすけてくれぇぇぇ!!」
走り出そうとした瞬間、俺の後方から人間の男の声が響き渡ってきた。
「!?」
その声に反応して振り向くと、化け物の足元で片足を引きちぎられて地面に伏している男が目に入った。
「ゴオォォアァァ!!」
その声に気づいた化け物が岩石のように巨大な腕を天に振りかぶる。
足元で動けず俺らに助けを求める男。
俺はあいつはもう助からないと、思ってしまった。
「頼むっ!お前達!!助けてくれ!!助け・・・」
「グガァァァァ!!」
俺は目を反らした。
反らす瞬間、男と目が合ってその目には大量の涙が浮かべられていたのが分かった。
その声は化け物の叫び声とともに聞こえなくなった。
助けを懇願する男に化け物の拳が降りかかる。
男の周りの土砂とその血液があたりに円形に霧散する。
強烈な圧力によって押しつぶされた男の内臓は跡形もなく消え去ってしまった。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
次の刹那、辺りに篠崎の声が響き渡った。
それと同時に無数の弾丸を撃ち込む銃声が俺の耳に飛び込んでくる。
「バカッ!!やめろ!!」
「グルゥウ??」
篠崎が化け物に向かって発砲してしまった。
俺の制止の声すらも耳に入っていなく、狂気に駆られたように狂ったように双銃を乱射していく。
しかし、放たれた弾丸は化け物の肉を捕らえるもすべて貫くことは叶わず、弾かれている。
「篠崎!!聞こえないのか!?やめろぉ!!」
「あああぁぁぁぁっ!!」
そばに駆け寄ってしゃがみながら打ち込んでいる篠崎に話しかけても全く反応すら示さない。
杉弓も駆け寄ってきて静止を試みるが聞こえてすら居ない。
「スーーーー!!」
化け物が完璧にこちらに気づき、背中を反らし胸を張りながら大量の空気を吸い込む。
「ボオァァァ!!」
そのまま肺に送り込んだ空気を俺達に向かって一気に吐き出した。
「うわ!?」
「ぐっ!!」
「きゃあ!?」
俺と杉弓はものすごい風圧でその場から吹き飛ばされ、数メートル後方の木に激突し、止まった。
篠崎はすぐ真後ろにあった木に激突し、その衝撃で銃を手放してしまった。
「がはっ、ごほっ!」
感じたこともない衝撃が背中に走って、嗚咽と一緒に血液を吐き出す。
隣に目をやると、気に激突した衝撃で後頭部を殴打し血を流しながら気絶している杉弓が目に入った。
「うっ・・・く、そぉ・・・すぎ、ゆみ・・・」
痛みに堪えながら何とか移動し、杉弓に声を掛けるが返事はない。
杉弓のそばで倒れながら手首の脈を確かめると鼓動しているのが確認できた。
「死んでは、ない・・・」
何とか体を起こして木に寄りかかって篠崎のほうに目をやる。
木の陰に隠れ、左半分の体しか見えなかったが横に手を突いた左手が震えていたため意識があることは確認できた。




